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2013年02月27日 (水) | Edit |
これからときどき,「経済入門」の話をしていきます。
 
それも,「GDP」という視点を通しての経済入門。
読み続けてもらえれば,まったくの初心者でも,経済についての系統だったイメージを得ることができます。「最新ニュースの解説」はしていませんが,10年経っても古くならない「基礎」を知ることができます。
 
それには「GDP」という切り口が有効なのです。
 
勉強家のなかには「GDPなんて古いよ」という人もいるかもしれません。「くたばれGDP」なんていうスローガンもあるくらいです。

でも私は「がんばれGDP」といいたいです。
GDPと,それにかかわるもろもろの考え方をしっかりおさえること。
それなくして経済はわかりません。

 
GDPとは「国全体の総買い物額」

国内総生産・GDP
あなたは,「GDPとは何か」と聞かれて,自信を持って「わかっている」と言えますか?
別の言いかたをすれば,「〈GDPとは何か〉を中学生に説明できるか?」ということです。私の友人たちに聞いてみると,「だいたいのことはわかっている」という人でも,「子どもに説明するとなると,ちょっと自信がない」と言います。

GDPというのは,英語の頭文字をとった言葉です。日本語では「国内総生産」。
しかし,「コクナイソウセイサン」というのは長くて言いにくい。そこで英語の

gross(グロス=英語で「全体の」「総」と言う意味)
domestic(ドメスティック=国内の)
product(プロダクト=生産)

 
の頭文字をとったGDPという方を,よく使います。

「総買い物額」のイメージ
GDPとは,一言でいうと「国全体の,みんなの1年間の買い物の総額」のことです。
つまり,みなさんがスーパーで食料品を買ったり,デパートで服や靴を買ったり,ローンを組んで自動車やマンションを買ったり,美容院に行ったり,旅行で電車に乗ったりホテルに泊まったり……そんなふうにして,日本じゅうで1年間に使った金額です。
この「買い物額」の合計(総買い物額)がGDP。

「四半期(3ヶ月)」のGDPというのもありますが,より一般的なのは「1年間」でみた数字です(ここでは「GDP」というときは,とくに断らないかぎり1年間のGDPです)。

「何を買うか」は,モノを買う場合とサービスを買う場合があります。食料品や洋服や自動車やマンションを買うのは,モノを買うこと。髪を切ってもらう,電車に乗る,ホテルに泊まる,というのはサービスを買っています。理容のサービス,輸送のサービス,宿泊場所の提供というサービスです。)

「GDPは総買い物額である」というのは,うんと単純化した説明です。補足すべき点もあります。しかし,最初に入るときのイメージとしては,とりあえずこれでいいのです。

日本のGDPの額
ここで,問題です。これから,ときどきこういう「問題」を出していきます。

【問題】
現在(2012年度)の日本のGDPは,どれくらいだと思いますか?

予想
ア.5兆円 イ.20兆円 ウ.100兆円 エ.500兆円

                       *

2012年(2012年1月~2012年12月)の日本のGDPは,476兆円です。
だいたいの数字で「日本のGDPは480兆円」と憶えておけばいいでしょう。「480兆円」というのは,「500兆円まではいかないけど,450兆円よりは多い」というニュアンスです。あるいは,もっとざっくりと「400何十兆円(なんじゅっちょうえん)」でもいいです。

知っておいて欲しい数字
「日本のGDPは480兆円」というのは,「日本の人口は1億2800万人→1億3千万人」という数字とともに,ぜひ知っておいてほしい数字です。

日本経済を知る最重要の数字
・日本の人口 1億3千万人
・日本のGDP 480兆円


「正確な数字」にこだわらず,このドンブリの数字でおぼえるのがコツです。細かい数字は,使いこなせません。
しかし,この「GDP480兆円」は,必ずしも「常識」にはなっていないようです。
私は「経済の素人を自認する大人たち」が集まる勉強会で,講師役をつとめたことがあります。そういう場でこの問題を出してみると,集団によっては2~3割の人がまちがえます。

「日本の人口は?」という問題なら,こんなことはないでしょう。ほとんどの人が,少なくとも「1億人くらい」というところまでは知っています。でも,GDPとなると,「〇百兆円」というケタさえも自信がないという人は少なくないのです。
 
政府が算出する数字
そもそも,GDPは,どうやってわかるのでしょうか?
GDPは,政府が算出する統計数値です。しかし,政府が「すべての人の買い物を調べて合計している」わけではありません。
そのかわり,政府はモノやサービスの売り手である企業に対して,売上などの状況を調査しています。各社の会計帳簿にもとづいたデータです。企業の売上は,結局はお客さんであるみなさんの買い物です。だから,そこからGDPがわかるのです。
 
このほかにも,政府は国の経済や社会の様子をつかむため,つねにいろいろな統計調査を行っています。
GDPは,企業の売上をはじめとするさまざまな調査のデータをもとに,政府の専門家がいろいろな計算をして出した数字です。
これには,たいへんな手間がかかります。だから,信頼できる数字を出すには,しっかりした政府や企業の組織が,社会に存在していることが必要です。

普及して数十年ほど
GDPやそれと同類の統計数値(「GNP」「国民所得」など)が広く使われるようになったのは,この数十年ほどのことです。ほぼ第二次世界大戦後(1945年以降)といっていいでしょう。
現代では,経済の問題について考える人は,誰もがGDPという数字をみるようになりました。
GDPは,経済が発達し,政府の組織が整備され,経済や統計についての学問が進歩した結果,生まれた考え方なのです。

「景気がいい・悪い」ということが,つねづね論じられます。「景気がいい」とは,みんなの買い物が活発になって,GDPが増える傾向にあることです。「景気が悪い(不況である)」とは,みんなの買い物が停滞して,GDPが減る傾向にあることです。

「中国のGDPが,日本のGDPを追い抜いた」ことが近年話題になりました。それは,「GDPの大きさ」が,「国力」を測る最も重要なモノサシになっているからです。

GDPは,少々とっつきにくくても,理解のしがいのある概念です。そこには,さまざまな知識の遺産や膨大な労力が詰まっています。GDPという数字を通して,経済や社会のいろんなものがみえてくるのです。

GDPとGNP
ある程度以上の年齢の方なら,「以前はGDPではなく,GNP(国民総生産)という数字が使われていた」ことをご存じかもしれません。GNPは,gross national(ナショナル) productの略です。「ナショナル」は,「国民の」という意味です。これに対しGDPつまり gross domestic productの「ドメスティック」は,「国内の」という意味です。

「国民の」と「国内の」は,どうちがうのか?
日本のGNPは,日本国民の経済活動を対象にした数字です。日本国民の経済活動なら国内での分だけでなく,海外での分もGNPの対象になります。具体的には,日本人や日本企業が海外で受け取った給料や預金の利子などの所得がGDPにはふくまれます。
一方GDPは,日本の国内(地域内)での経済活動を対象にした数字です。国民の海外での活動分はふくみません。

GDP+海外で国民が得た所得=GNP 

ということなのです。

なお,GNPのことを,GNI(国民総所得)と呼ぶこともあります。同じ中身なのですが,名称を変えたものです。
昔は日本政府もマスコミもGNPを使っていましたが,90年代にGDPに切り替えました。欧米を中心に「GDPを使う」という流れになったので,それに乗ったのです。

GDPとGNPは,だいたいは同じようなものです。数字的にそれほど大きなちがいはありません。しかし「〈国内の景気〉をみるうえでは,対象を国内の経済活動に絞ったほうがすっきりする」という考えから,GNPに換えてGDPを使うことにしました。

この背景には,国際化の進展で「海外での国民の活動」が増えたことがあります。このためGNPとGDPのギャップが大きくなり,「それならGDPのほうを使おう」ということになったのです。
 
でも,だからといってGNPという数字をまったく使わなくなったのではありません。GNPのほうも,経済の専門家などは今も必要に応じて使います。しかし,「国の経済規模や景気の状態をみるうえでの代表的な統計数値としては,GDPをおもに使う」ということです。そこで,テレビのニュースや新聞ではGDPのほうを使っています。

(以上)