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2013年04月01日 (月) | Edit |
「キャリア・カウンセラー」「キャリア・コンサルタント」という仕事があります。人の職業・キャリアにかんする相談にのる仕事です。おもにアメリカで発達し,日本にも入ってきました。日本で多少認知されるようなったのは,せいぜいこの十数年でしょうか。
 
私は,ある組織で若い人の就職相談をしているので,その系統の仕事をしているといえるでしょう。
 
キャリア・カウンセラーの資格というのもあります。国家資格ではなく,民間資格です。また「医師免許のように,その資格がないと仕事ができない」というのでもありません。厚労省が指定する「キャリアコンサルタント」の資格が,いくつかあります。

私もそのような資格のひとつを持っています。資格取得に必要な講座に通い,筆記と実技の試験に合格したのです。

「実技試験」というのは,相談者(クライエントという)に扮したスタッフと,カウンセラー役の受験者が10分くらい面談をするのです。その様子を試験管が採点する。

クライエント役の人には,「役柄の設定」があります。たとえば「30代の女性。独身。〇年契約社員として勤めた商社の事務職の仕事が,最近契約打ち切りとなり……」とか。

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先日,今度キャリアカウンセラーの実技試験を受ける知人の男性から,「面談の練習の相手になって,アドバイスしてほしい」といわれ,引き受けました。このあいだの日曜日,新宿の喫茶店で,2時間ほどその「練習」を行いました。私がクライエント役で,知人がカウンセラー役。

「こんにちは,キャリアカウンセラーの〇〇です。今日は,どうされました?」
「じつは,会社の早期退職の制度を利用しようか迷っていまして…」

みたいな「お芝居」を,オジさん2人でくりかえしました。きわめて真剣に(^^;)

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キャリアカウンセリングにかぎらず,専門的に人の相談にのるという行為で,最も重要な核は,「傾聴」という技(わざ)です。

相談してきた人の話にしっかりと耳を傾ける。肯定・否定の判断をせずに,聞く。話の腰を折ったりしない。結論を急がない。自分の考えを押しつけない。相手の話を,そのまま受けとめる。

これって,なかなかできないです。ふつうの会話は,こんなふうになりがちです。

「あたし,もう部活辞めたいな…」「最後までがんばったほうがいいよ,がんばれば光がみえてくるから」

こんなふうに自分の価値観のほうへ,話をもっていこうとしてしまいます。よかれと思ってそれを行うことも多いです。
 
私たちは,つい「ためになる話」をしようとしてしまう。それでは,相談の対話は,だいなしです。相談した側は「話すんじゃなかった」となります。

「傾聴」をテーマにした一般向けの入門書に,

鈴木秀子著 心の対話者 (文春新書)

という良書があります。上記の「傾聴」の説明も,この本がベースです。
 
鈴木さんは,相談の対話がうまくいかない心理について,こう述べています。

《(傾聴せずに)相手を受け入れまいとする姿勢を生む第一の要因は,「自分が正しいと思っている方向に行きたい」という願望にある。その背後には「自分には正しいことがわかっている」という思い込みがある。》

《対話が破綻する前提には,「会話とは自分の意見や話を披露する場」という思い込みがある。》


私も,この手の「思い込み」にどっぷりつかっている人間のひとりでした(今も抜けきってないかもしれませんが)。
 
「たがいの意見や話題を出しあって交流する」という対話が求められる場面も,もちろんあります。というか,そういう対話のほうが,社会生活のなかでは主流でしょう。でもそうではない,「傾聴」を軸とした対話もある。それが必要なときがある。
 
こんなことを私が言うと,私をよく知る人は笑うでしょう(^^;)。親しい人と話すと,自分の見解や知識の「披露」ばかり。放っておくとそれを何時間も続けている人間ですので。(このブログも,その精神でみちあふれています。まあ,ブログですから)
 
私も,いろいろ勉強して,成長しようとしているのです……。

(以上)

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2013年04月01日 (月) | Edit |
今日4月1日は,血液循環の発見者ハーヴィーの誕生日。そこで彼の「四百文字の偉人伝」を。「四百文字程度で,古今東西のさまざまな偉人を紹介する」シリーズ。


ハーヴィー

「謎解き」の魅力にハマったエリート医師

医師ウィリアム・ハーヴィー(1578~1657 イギリス)は,「血液循環」の発見者です。彼の研究は,長い間絶対的な権威だった古代の学者たち(ガレノスなど)の説をくつがえすものでした。そこで当時は激しい非難も多く,自説を発表してからは患者も減ってしまいました。

では,彼は「世間での立場や損得を考えず,ひたすら真理を追究した人」だったのでしょうか?

いいえ,彼の出世欲は人並み以上で,「国王付きの医師」や医師会の幹部にもなっています。また,患者の遺族と報酬をめぐって争うなど,お金にもこだわりました。

その一方,手術室にこもって解剖や実験をくりかえし,権威をくつがえす真理の探究を続けたのです。「自説を発表することによる損得やリスク」を,世慣れた彼は承知していたでしょう。それでも,研究せずにはいられなかった――科学という「謎解き」の深い魅力にハマってしまったのです。

中村禎里著『血液循環の発見』(岩波新書,1977)による。

【ウィリアム・ハーヴィー】
「血液循環」の発見者。「心臓は筋肉でできている」「その働きで血液は体内を循環している」という私たちの「常識」を,主著『心臓と血液の運動』(1628年刊)ではじめて明らかにした。
1578年4月1日生まれ 1657年6月3日没

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以上のような101話をまとめた電子書籍『四百文字の偉人伝』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も発売中です(アマゾンKindleストア楽天Kobo,ディスカヴァー社のホームページにて販売,400円)

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