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2013年05月06日 (月) | Edit |
昨日5月5日はこどもの日でした。この日の新聞には,たいてい「少子(高齢)化」の話がでています。昨日も《子供の数32年連続減 4月1日時点 1649万人 総人口比12.9%に低下》(日経)といった記事がありました。

さて,この「少子高齢化」が日本経済の長期停滞の根本原因だ,とする説があります。

たしかにその説には一定の根拠があります。

少子高齢化というのは,生産年齢人口の減少でもあります。「生産年齢」というのは,子供と高齢者をのぞいた,社会の働き手である「現役世代」のこと。

現役世代が減れば,社会全体の付加価値(富,GDP)を生み出す力が落ちる。活発に消費をするのもこの現役世代なので,その減少は,消費の低迷ももたらす。それで経済全体が低調になる。

このような考えは,いかにも「根本的」でしっかりしているように思えます。

でも,私は信用しません。
 
現役世代の減少は,たしかに経済の成長(GDPの増加)にマイナスに作用します。でも,その影響を,過大評価してはいけないと思います。

このような数字があります。

1955年(昭和30)の日本のGDPは,約50兆円(48兆円)でした。
 
それが,2010年(平成22年)には,約500兆円(511兆円)。

この数字は,物価の上昇も計算に入れた「実質値」というものです。

1955年というのは,高度経済成長期のはじまりのころ。つまり,高度成長期以降の50年ほどで,日本のGDPは10倍になったのです。

では人口はどうか。1955年の日本の総人口は8900万人。それが2010年には1億2800万人。

人口は1.4倍ほどにしか増えていません。でもGDPは10倍になった。1人あたりGDPが大きくのびているのです。

もう少しくわしくいうと,高度成長期(1955ころ~1970ころ)の年平均の経済成長率(GDPの増加率)は10%ほどですが,生産年齢人口の年平均の増加率は1%ほどです。

ということは,この50年の日本のGDPの増加のおもな原因は,人口増ではないわけです。

ではなにが最も大きな原因がというと,広い意味での技術の進歩でしょう。1人あたりでより多くの付加価値(富)を生産できるようになった。つまり,「生産性」が上がった。そのためのハードやノウハウの進歩が積み重なった。ほかに,考えられます?

長期でみた経済成長の最も大きな要素は,技術の進歩(技術革新)である。(もっと短期のことになると話はちがってきますが,ここでは立ち入りません)
 
いってしまえば,あたりまえの話です。でも,「少子高齢化が長期停滞の原因」という説は,かなり人気があるようです。ということは,「あたりまえ」ではないのかもしれません。

でも,GDPにかんする基本的な数字をもとにちょっと考えてみれば,「その説(人口による説明)はあやしいのでは?」とわかるはずです。少なくとも,立ち止まって検討する余地があるということ。

もちろん,少子高齢化や人口減少は,重大な社会問題です。それはそうなのですが,ただ,この20年ほどの景気低迷の根本原因などではない,ということです。

ただし,ある条件のもとでは,少子高齢化が経済の停滞に大きなインパクトをあたえることになります。

その「条件」とは,「技術革新(生産性)が停滞している」ということ。1人あたりの生産性が上がらない状態だと,生産年齢人口の減少は,そのまま社会全体の生産力の低下につながります。
 
この20年の日本は,技術革新が以前よりもスローダウンした。そこに生産年齢人口のピークアウト(停滞から減少へ)という動きも加わった。それが作用して停滞している。ただし,影響としては技術革新のスローダウンのほうがはるかに大きい。そして,技術革新がスローダウンしているなかでの生産年齢人口の減少は,以前よりも経済に大きな影響をあたえつつある。
 
「長期的」なことをまとめれば,そんなところでしょうか。「ろくに説明や論証がないじゃないか!」と怒られそうですが,まずは仮説的な枠組みをざっくり述べさせてもらいました。

この20年の「停滞」には,ほかにも中期的な(数年~10年単位の)原因もあるでしょう。不良債権による金融システムの機能不全,景気低迷とグローバルな競争の激化による賃金相場の低下(それによる消費の低迷)等々。いろんなことが重なっている,とは思います。
 
(以上)
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