FC2ブログ
2013年06月16日 (日) | Edit |
 今回は,かけ足で,ざっくりと経済の全体的な話をします。

 そのへんのメージがぜんぜんないと,今の経済の話はさっぱりわかりません。
 すでに知っている人も再確認ということで。
 基本的なことを,手軽に・人知れず,少しまとめておさえておくにはいい記事だと(著者としては)思ってます。

 いろいろとはしょっている,説明がとんでいる部分が多くあります。でも,「全体をみわたす」ことを優先しました。


 経済はまず,つぎの2つから成り立っています。

 1.実体経済(モノやサービスの生産・販売) 
 2.金融経済(銀行が企業にお金を貸す,株などの証券を売り買いする等々)


 この2つは,次元が異なります。お互いつながっているけど,別々のもの。

 経済は,けっきょくは「お金の動き・流れ」だともいえます。
 それには,「実体経済のお金の流れ」と「金融経済のお金の流れ」があります。

 私たちが,自動車を1台買うのは「実体経済のお金の流れ」。
 自動車メーカーが,工場を建てる(設備投資する)のも,そう。

 これにたいし,私たちがトヨタのような会社の株を買うのは「金融経済のお金の流れ」。
 銀行が,設備投資をする自動車メーカーにお金を貸すのも,そう。

 実体経済のお金の流れと,金融経済のお金の流れは,どこがちがうのか。

 実体経済のお金の流れは,そこで「付加価値」が生まれています。
 自動車という現実の生活や生産に役立つモノが生み出され,それが誰かに「買われる」というかたちで,その「価値」が実現している。
 実体経済は,「付加価値を生む」世界。

 GDP(国内総生産)というのは,国内で生産された付加価値の合計です。「買い物額の合計」といってもいい。
 実体経済の世界=GDPの世界,といっていいです。

 関連記事:GDPとは国全体の買い物額
 
 金融経済は,直接はそのような「付加価値」を生みません。
 銀行が企業にお金を貸す,誰かがどこかの会社の株を買う,ということじたいはGDPにはカウントされません。直接は付加価値を生んでないからです。

 しかし,金融経済は,付加価値を生む活動を下支えしています。
 銀行が設備投資しようとする企業にお金を貸すことで,企業は思うような生産活動ができるのです。
 
 金融がしっかり機能しないと,実体経済は不活発になってしまいます。
 
                       *

 アベノミクスが行ってきた「金融緩和」は,経済にマネーを送り込むこと。

 でも政府・日銀が直接に「実体経済」にマネーを送り込むことはできません(ヘリコプターでお金をばらまいたり,魔法の力でみんなのサイフの中身を増やすわけにはいかない)。
 金融緩和で,マネーが直接に送りこまれるのは,「金融経済」です。つまり,銀行などの金融機関にたいしてです。
 
 だから,金融緩和によって動きだすのは,まず金融経済です。
 そして,金融経済で取引する人たちは,経済のいろんな「動き」に敏感で,反応しやすいです。そこで安倍政権の金融緩和などの動きにたいして,為替や株式などの金融の「市場」は,はっきりした反応を示しました。「円安」や「株価の上昇」ということがおこったのです。

 このあたりから,金融経済の動きが実体経済にも関係してきます。
 
 円安は,有力なメーカーのような,日本を代表する企業(輸出産業)に有利にはたらきます。
 これには,円安で有利になる企業の株価を上昇させる,という作用もあります。

 株価の上昇は,株を保有している個人や企業に利益をもたらします。株で儲けた個人は,ちょっとぜいたくをしたりするでしょう。つまり,「買い物」が増える=GDPの増加です。社会のほんの一部の動きですが。
 企業も,財務内容がよくなるので,活動しやすくなります。

 株のような「資産」の価格が上がると,その資産を持つ人の財布のヒモがゆるむということがある。
 このように,金融経済の動き(為替とか株価とか)は,実体経済に影響をあたえます。
 このイメージはとてもだいじです。
 
 なお,このイメージは,今でこそ経済を語る人は誰でももっていますが,20~30年前のバブルのころの日本ではそうでもありませんでした。「株価(や地価)がどうなろうと,実体経済は大丈夫」という意見もかなり有力でした。
 だから,今でも「経済のことはよくわからない」という人にとっては,なじめないところがあるのでは?

                       *

 さて,ここで「実体経済」の構造に分け入りましょう。

 実体経済=GDPというのは,どういう内訳になっているか,ということです。これはとてもだいじ。

 GDPはおもに,つぎの3つでなりたっています。

 ①個人による買い物(≒個人消費)
 ②企業による買い物(≒設備投資)
 ③政府による買い物(政府支出。公共事業や公的サービスを行うために支払うお金)


 つまり,おおまかにいえばこうです。

 実体経済(GDP)= 個人消費 +(企業の)設備投資 + 政府支出

 近年の日本のGDPは500兆円弱。
 そのうち6割が個人消費。あとは設備投資が2割,政府支出が2割弱。

 関連記事:総買い物額の内訳

 個人消費と設備投資と政府支出。このうち最も変動が激しいのはどれだと思いますか?

 じつは設備投資なのです。
 設備投資は,景気の動きに敏感に反応して上下します。

 たとえば,リーマンショックの直後は,企業の設備投資は対前年で20~30%減少しました。
 個人消費は,そんなに激しくうごきません。「20~30%」とくらべれば「ほぼ一定」といえる増減しかおこりません。毎日の暮らしをそんなに急には変えられないです。

 なお,政府の支出は,政策によってかなり人為的に動かせるのが特徴です。しかし,政府支出全体を1年で20~30%上下させるというのは,むずかしいです。
 安倍政権は,景気浮揚のために,公共投資に一層力を入れるといっています。公共投資を増やしたら,その分は確実にGDPが増えます。
 「ケインズ政策」といわれるこの方法は,戦後の日本でずっと行われてきました。

                        *

 さて,今の経済の動きの最大の焦点は,「設備投資がどこまで増えるか(増やせるか)」ということです。
 
 今,「景気が上向くかもしれない」という判断で,設備投資を増やそうという動きはたしかにあります。「景気が上向けば,売上・注文が増えるだろうから,それに対応する準備をしよう」ということです。

 株価が上がっている,一部でぜいたくする人が出ている,輸出企業が元気になってきた,といった(ほかにもありますが)さまざまな社会の変化を企業が察知しているのです。

 日経新聞の調査によれば,2013年度の全産業の設備投資の計画は,前年度実績より12%増ということです(6月3日朝刊)。これは,近年の「好景気」といえる2004~2005年ころの水準に近づいているといえます。

 ただし,これは4月末時点の計画を集計したもの。その後,株式相場の急激な上昇が「調整」の局面になったので,企業が計画を見直したりするかもしれません。

 政府は,企業の設備投資をうながすために,つい最近「設備投資に対する減税」の政策を打ち出しました。

                        *

 では,企業が設備投資を増やすと,どうなるのか。
 
 ここでだいじなのが,「波及効果」という概念です。「あることが,さらにあることをつぎつぎと呼んでいく」ということ。「〇〇が〇〇を呼ぶ」世界。

 ある企業が工場を建てるとか,生産ラインを増やす,ということは,建設会社とか機械メーカーに発注するということです。その発注額とは,つまり企業による「買い物」です。その分,GDPは増えます。

 でも,それだけではありません。
 たとえば新しい工場ができれば,そこで新しく人が雇われるはず。受注した建設会社や機械メーカーの売り上げも増える。仕事も忙しくなる。
 雇用が増えたり,働く人たちへの給与が増えたり,ということが起こり得る。

 そういうことが社会のあちこちで起こったらどうなるか。
 
 そうなると,個人消費も増加傾向がはっきりしてきます(設備投資ほどはげしい動きではないにせよ)。雇用や給与が増えるというのは,個人の所得が全体として増えるということです。それに応じて,消費も増えていく。
 それに反応して,企業の側もさらに設備投資に積極的になる……

 これが「波及効果」です。

 今は「工場」を例にあげましたが,別に製造業でなくてもいいです。飲食店のようなサービス業的な分野でも同じことです。むしろ,今の経済は製造業よりもサービス業で働く人のほうが多いので,サービス業での業務拡大・設備投資は重要です。

 以上のような「波及効果」が起こっていくなら,理想的です。

 でも,そこまではまだまだいっていないわけです。
 金融緩和で,最初に「火」がついたのは金融経済。
 そこからの「熱」が実体経済の一部に伝わってきた…今はそんなところです。

 しかも,最初に「熱く」なったはずの金融経済(株式市場など)も,5月末からの状況だとかなり熱気が下がっています。一時1万5000円台までになった日経平均株価は,先週末で1万2000円台と,4月はじめの水準に戻りました。
 とはいえ,前の政権のころの8000円台より大きく上がった,という状態はまだキープされています。

 経済全体に「熱」が伝わっていくのには,かなりの時間がかかります。
 1年弱くらいの時間は最低かかる,という専門家は多いです。

 たしかに,設備投資の計画が実現して,それが雇用によい影響をおよぼして…というのは,かなりの時間がかかるでしょう。

 そして,今のべた「波及効果」のイメージは,あくまで「理想」です。
 「理想」どおりいくためには,いろんな「壁」があります。
 設備投資が増えても,雇用や働く人の給与が増えない,ということもあり得ます。2000年代前半(小泉政権時代)の「好景気」は,その傾向がありました。

 その「壁」を超えられるか,つまり,実体経済のなかで,最も「熱」が伝わりにくい「個人消費」にどうやって「熱」を伝えていくのか――これが「設備投資がどれだけ増えるか」のつぎの焦点です。
 でも,今の動きはまだそこまでいっていません。その前の段階(設備投資が増えるかどうか)なのです。
 
 その「壁」の問題などについては,ここでは立ち入りません。このへんでやめておきます。

                       *
 
 以上,特別なこともない,ありふれた解説です。
 でも意外と,このくらいの広い範囲をサーッと述べている解説をみないので,自分で書いてみました。だから,じつはありふれてないかもしれません。

 テレビなどをみていると,こういう初歩的なイメージもないままに,今の経済についてコメントする人(経済の専門家ではない,キャスターやコメンテーター)もいるようです。
 「株が上がったって,我々庶民には関係ない」みたいな話でおわらないでほしいものです……
 ふつうの世間話ならいいのです。でもテレビで賢そうな人がいうのはちょっと,と思います。

(以上)
関連記事