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2013年09月14日 (土) | Edit |
 東京・多摩からターミナル駅まで,片道約50分の電車通勤。
 あえて,やや空いている各駅停車に乗ります。
 そこでの読書は,毎日のたのしみです。
 この3~4週間で読んだ本で,印象深かったものをご紹介します。

 関連記事:通勤電車の立ち読み書斎

●馬場マコト『花森安治の青春』白水社,2011

花森安治の青春花森安治の青春
(2011/09/16)
馬場 マコト

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 雑誌『暮らしの手帖』を創った編集者・花森安治の伝記。

 花森の少年時代から,戦後間もなく(1948年)『暮らしの手帖』を創刊し,軌道に乗せるまでを描いています。花森については,酒井寛『花森安治の仕事』などもありますが,青年期に焦点をあてているのがこの本です。

 花森は太平洋戦争のころ,「大政翼賛会」という,戦争のための国家的組織の宣伝部で,メインのプロデューサーとして働きました。

 それを「戦争協力」として非難する向きもあります。
 ことさら弁護するつもりはありませんが,この本を読んでいて,「とにかくこの人は,置かれた状況で精いっぱい生きようとしたんだ」と感じました。

 花森や彼がスカウトした人材が入ってくるまで,大政翼賛会の宣伝は低レベルなものでした。また,組織全体としても,偉そうにするばかりで,ロクに仕事をしないのがあたりまえの状態。

 そのなかで,花森たちだけが,せっせと「創造的な,いい仕事」をしていた。
 そうせずにはいらなれなかった,という感じがします。
 ただ,それは「戦争」という忌まわしい目的に奉仕するものだった。

 終戦直後の1945年の暮れに,34歳の花森は,大橋鎮子(当時25歳)と,出版社を立ち上げます。大橋は,当時花森が仕事をしていた小さな新聞社の社員でした。大橋が社長で,花森が編集長。そして,3年ほど後に『暮らしの手帖』が生まれます。

 若い2人は,焼け跡のなかで,まさに精いっぱい生きようとしたのです。そして今度は,権力におしつけられた課題でなく,自分でえらんだ「目的」や「価値」にむかっていったわけです…


●小林登志子『シュメル――人類最古の文明』中公新書,2005

シュメル―人類最古の文明 (中公新書)シュメル―人類最古の文明 (中公新書)
(2005/10)
小林 登志子

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 8月に「1万文字の世界史」というシリーズをこのブログでアップしました。その関連で手にして,再読。
 「シュメル人」は,今から5500年ほど前に「最古の文明」を築いた人びと。

 この本の冒頭に,シュメルの「大洪水伝説」がでてきます。

 大洪水で世界が壊滅したあと,「巨大な船」に乗って生き残った人たちが,ふたたび文明を再建しはじめる…

 旧約聖書の「ノアの方舟」も,このあたりがルーツなのでしょう。

 私たちの国は,つい2年前に「大洪水」を経験しました。今も再建の途中です。
 5000年前も今も,同じようなことを,「文明社会」は背負っているのだな…


●青木正夫・岡俊江・鈴木義弘『中廊下の住宅』住まいの図書館出版局,2009

中廊下の住宅―明治大正昭和の暮らしを間取りに読む (住まい学大系)中廊下の住宅―明治大正昭和の暮らしを間取りに読む (住まい学大系)
(2009/03/01)
青木 正夫、鈴木 義弘 他

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 「中廊下住宅」というのは,明治のおわりから昭和にかけて,中流家庭の住宅の間取りとして一般的だったもの。 玄関から廊下がのびていて,そこに沿ってふすまなどで仕切られたいくつかの部屋が配置されている…
 
 「ウチの実家は,そうだった」という人は,大勢いるはずです。
 その間取りの形成史を,綿密な調査に基づいて,明らかにした本。
 
 この本によれば,「中廊下住宅」は,大衆(生活者)が生み出した間取りであって,建築家が主導したものではない。

 「接客」をなにより大事にする,江戸時代以来の間取りをもとにして,ふつうの人たちが試行錯誤しながら発展させたもの。「接客中心」を残しながら,近代の新しい暮らしと折り合いをつけるなかで,生まれた。

 ここでいう「接客」は,上下関係をともなうような,あらたまった接客です。封建的な社会では,それがすごく大事だった。

 今どきの住宅では,「接客空間」は省略され,「居間(リビングルーム)」が中心の間取りとなっています。
 団地の間取りも,リビングルーム中心かどうかは別にして,接客専用の部屋というのは,ありません(狭くて無理)。

 でも,この本によれば「接客中心」から「居間中心」へという変化は,じつはそれほど進んでいないのだそうです。日本の住宅は,今現在大きな変革期にある。

 「団地リノベ」をテーマ(のひとつ)とする,このブログとも大きくかかわる内容です。この本のことは,またとりあげます。


●トム・ピーターズ『エクセレントな仕事人になれ!』阪急コミュニケーションズ,2011
●大前研一『稼ぐ力 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方』小学館,2013


エクセレントな仕事人になれ! 「抜群力」を発揮する自分づくりのためのヒント163エクセレントな仕事人になれ! 「抜群力」を発揮する自分づくりのためのヒント163
(2011/09/29)
トム・ピーターズ

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稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方稼ぐ力: 「仕事がなくなる」時代の新しい働き方
(2013/09/05)
大前 研一

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 ビジネス書の巨匠2人の本を,おとといから昨日にかけて読みました。
 トム・ピーターズは,若い人はご存じないのでは? 80~90年代に一世を風靡した経営論の人。
 この10年くらい本は出していなかったそうです。しかし,ここ数年で書いていたブログの記事をもとに,本書をまとめました。

 どちらの本も,「きびしい時代だから,がんばって勉強して,頭を使いながら,がんばって働こう」と言っています。
 ひどい要約で,すいません…

 個別的な内容は置いときます。
 とにかく,2人の熟年の元気さが印象的です。
 
 トム・ピーターズ(1942~)も大前研一(1943~)も,年齢はほぼ70才。
 そんな人たちが,今どきの産業・ビジネスについて,さまざまな事例や情報をもとに生き生きと論じているのです。本当の「最先端」の人からみれば「ジジイ」なのかもしれません。でも,70になっても貪欲に新しい知識を求め,考え,発信していこうとしているのは,たしかです。
 やっぱりすごいです。

 ただ,大前さんの本を読むと「英語は必須だ」とくりかえし強調されているので,耳が痛い。
 私は40代のおわりですが,とうとう英語がモノにならないで終わりそう…

 その点,トム・ピーターズの本は「英語を勉強しろ」とはとくに書いてないので,気持ちよく励まされます……でも,アメリカ人だからあたりまえか(苦笑)……昨日の朝は,そんなことを考えながら,駅から職場まで歩きました。

(以上)
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