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2013年10月20日 (日) | Edit |
 最近,靖国神社への閣僚の参拝のことがニュースになっています。
 「秋の例大祭」という靖国神社にとって重要な祭事(宗教上のイベント)があり,それに合わせて複数の閣僚が参拝したのです。安倍首相も「年内に参拝する」と言い出した。これに対し中国や韓国で抗議や非難の声があがっているとのこと。

 念のために「こっそり知っておきたい常識」を書いておきます。

 靖国神社には,明治維新のころ以降の日本の戦争で没した,多くの兵士や軍人が祀(まつ)られているだけでなく,「A級戦犯」という,第二次世界大戦のときの日本政府の指導者たち(の一部)も祀られています。中国や韓国の人びとは,そのような「軍国主義の指導者」を祀る神社に,日本政府のリーダーが参拝することに抗議しているわけです。

 多くの兵士や軍人や政治家が「祀られている」というのは,一種の「神さま=拝む対象」として扱われているということ。
 なんだか不思議な感じもしますが,神道(神社の宗教)では,そのような「記憶にとどめるべき何かをした人を,神さまとして祀る」ということを行うのです。

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 そんな話からはじめましたが,今回は「靖国」そのものがテーマではありません。
 もっと広く,「日中韓の関係」のことを述べます。

 日本と中国・韓国との関係は,この数年なんだか険悪になりました。
 緊張感が高まった,といってもいい。
 
 「靖国問題」も,その要素のひとつ。
 
 それだって,じつは最近になってとくに問題になったのだ,という人もいます。
 「靖国参拝に対し,中国や韓国で強く反応するようになったのは,2000年代はじめの小泉首相の参拝からで,そんなに昔からのことではない」という見解もあるのです。

 これには異論もあるでしょうが,「中国・韓国との関係がここ数年悪くなった」というのは,ほぼ誰もが感じていることでしょう。

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 それにしても,これはなぜなんでしょう?
 いろんな解説がなされています。

 たとえば,「中国共産党は,大衆に対し日本を〈悪〉とみなす教育・啓蒙をして,社会への不満や怒りが共産党にではなく,日本に向くようにしてきたのだ」といった説明がされることもあります。

 たしかに,そういうこともあるのかもしれません。

 でも,そういう説明よりも,もっと基本的で当たり前のことを,まずは押さえたらいいと思います。
 そのうえで,より具体的な事情についても目を向けるといいのでは……

 では,何を押さえるのか。
 それは「経済発展による,日中韓の国力の相対的な関係の変化」です。
 つまり,「中国や韓国が急速に経済発展した結果,日本の国力(≒経済力)が,以前ほど中国や韓国に対し圧倒的ではなくなった」ということ。

 国力・経済力をはかる代表的なモノサシであるGDPで,それをみてみます。
  
 GDP(国内総生産)は,その国で生産された富の総額をあらわす数字。それを人口で割った「1人あたりGDP」は,その国の経済的な豊かさや発展度を示します。
 
 つぎの数字をみてください。
 ざっくりした数字ですが,こういうのはざっくりみることが大事です。

【日本・中国・韓国の1人あたりGDP,人口,GDP】
 2000年
    1人あたりGDP  人口    GDP
 日本   3.7万ドル   1.3億   4.7兆ドル
 中国   0.1万ドル   12.7億   1.2兆ドル
 韓国   1.1万ドル   4600万   0.5兆ドル

 2010年
    1人あたりGDP  人口    GDP
 日本   4.3万ドル   1.3億   5.5兆ドル
 中国   0.4万ドル   13.4億   5.7兆ドル
 韓国   2.1万ドル   4800万   1.0兆ドル


※中国の1人あたりGDPは,2000年:950ドル,2010年:4350ドル。2012年には0.6万ドル(6100ドル)になっている。人口やほかの国のGDPは,2010年以降現在まで「そう変わっていない」とみていい。

※円に換算するなら,いずれの年も,どんぶり計算で「1ドル100円くらい」(2000年:1ドル115円,2010年:88円)。「1万ドルは100万円くらい」「1兆ドルは100兆円くらい」ということ。

 今から10年余り前の2000年には,中国のGDPは,日本の4分の1でした。韓国は10分の1。
 それが2010年には,中国のGDPは日本を少し追い抜き,韓国は日本の5分の1になった。
 
 
 そうなったのは,おもに「1人あたりDGP」の向上で測れるような経済発展の結果です。

 日本の人口が増えていないのに,中国や韓国の人口がやや増えている,ということもあります。しかし,それよりも経済発展≒1人あたりGDPの向上が重要です。 

 2000年には,中国の1人あたりGDPは,日本の40分の1でしたが,2010年には10分の1になりました。
 韓国の1人あたりGDPは,2000年には日本の4分の1(か3分の1)でしたが,2010年には2分の1に迫っています。


 このように,GDPや1人あたりGDPでみた日本との「国力」の差は,以前よりも縮まってきたのです。

 2000年ころ,日本という経済大国は,中国や韓国からみて圧倒的な存在でした。
 日本は,中国からみて経済規模「4倍」の国であり,韓国からみれば「10倍」の国だったのです。

 それが,今や中国はGDPでは日本を追い抜き,韓国は1人あたりGDPでみれば「半分」のところまできた。

 このように発展して,日本との差が縮まれば,「日本に対する自己主張」が強くなってくるのも,十分考えられることではないでしょうか?

 「日本との戦争」「日本の支配」の過去があり,これまで「となりの経済大国・日本」を仰ぎみる立場だった国。それが「日本の背中がみえてきた」となれば,どういう雰囲気になるか……「愛国的な自己主張」のエネルギーが,とくに日本に向けられるということはあると思います。
 
 やや具体的にいえば,10年20年前には日本との貿易や,日本による投資や技術の提供といったことが中国や韓国の経済にとって,きわめて大事だったわけです。
 しかし,ここ数年は以前ほどではなくなってきた。
 すると,「日本には,いろいろ言いたいことがある」となってくるわけです。

 このように「経済発展による,日本と中国・韓国との格差縮小」が,問題の根底にあるのではないか。

 だとしたら,「中国や韓国との緊張関係は一時的なものではなく,中長期の問題としてじっくりと向き合う必要がある」ということです。小手先の何かで解決しようとしたり,一時の感情に走る,というのはダメということ。
 
 「問題」をあおっているつもりはありません。
 そうではなく,問題を冷静にみる材料になる話をしているつもりです。
 
 最近の中国,韓国との関係悪化の基礎にあるのは,共産党の陰謀や,中国や韓国の人の「民族性」などよりも,GDPで測れるような経済的な現象ではないか,と言っているのですから……
 もちろん「それがすべて」などとは言ってません。「それが基礎として関わっているのでは」ということです。

 以上,当たり前と言えば当たり前の話。
 ほかで似たような主張を見聞きした人もいるでしょう。
 でも,GDPの具体的な数字をみながらという機会は,あまりないのでは?

(以上)
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テーマ:歴史
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