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2013年10月27日 (日) | Edit |
 先日,このブログを最近はじめて訪れたという,若い社会人の方からコメントいただきました。
 8月3日の「ナチス憲法」が制定されなかった意味という記事に寄せられたものです。
 
 「鍵コメ」というのでしょうか,管理人にのみ公開のコメントです。とはいえ,個人的なことには触れないように主旨だけご紹介するのであれば,差し支えないと思います。
 それは,このような内容でした。

 (社会のことに関し)自分が信じることが正しいかどうか,どうしたらわかるか?
 たとえば,資本主義には問題があると思うし,でも社会主義がうまくいくとも思えない。
 一体何が正しいのか? 本当のことは,どうしたらわかるのか?


 以下,これに対する私の返信です。若干加筆修正しています。

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 コメントありがとうございます。
 「自分の信じることが正しいかどうか,どうしたらわかるか」ということですが,それは「実験的にものごとを確かめる」以外にはないのではないでしょうか?
 私は,この考え方を,このブログでもよくご紹介する板倉聖宣さんという学者の本から学びました。

 「社会や歴史における真理をどうやって知るか」ということの入門書として,板倉聖宣『歴史の見方考え方』(仮説社)はおすすめです。

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(1986/04/07)
板倉 聖宣

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 たとえば「江戸時代の農民は,おもに何を食べていたのか?」といった問題について,予想をたてながら,事実を資料やデータに基づいて確かめていく……そんな内容になっています。
 この予想と確認・検証の作業が,一種の「実験」なのです。

 「知る人ぞ知る」という本なのですが,二十数年前に出て,今も読み継がれる名著です。
 この本を,私は大学生のときに読みました。

 「昔の人が何を食べていたのか」といったありふれたことでさえ,事実を明らかにするには,さまざまな調査や検証を丁寧に行うことが必要である……そのことを,この本ではじめて知りました。
 世の中には,十分な検証を経ていない「あいまいな思い込み」が,「真実」であるかのように主張されていることが多いのではないか……そんなことを考えさせてくれる本です。

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 「社会主義・資本主義」といったことについては,こう思います……だいじなのは,今の社会を成り立たせている最も重要で基本的なルールや原則は何だろうか,ということ。
 
 私たちは,何の上に立っているのか……それをまずおさえることではないかと思います。

 その「重要で基本的なルール」とは,民主主義の政治体制や,法に基づいて人権が守られること(法の支配),資本による経済活動を含め,人びとの自由な社会的活動を認めること(自由主義)などではないかと思います。個人の価値観を尊重すること(個人主義)も,そこに含めていいかもしれません。

 私はそれらを「近代社会の原理」と呼びます。

 ヒトラーの体制もソ連の社会主義も,このような「近代社会の原理」からの逸脱の上に成り立っている,と私は思います。
 民主主義も法の支配も自由主義も,いろいろな副作用や面倒くさいところがあるので,それらの問題を一挙に解決する手段として「ビジョンのある,すばらしいリーダー」にすべてを委ねることにしたわけです。その結果は悲惨なものでした。
 
 このへんのことを考えるのに,たとえばトクヴィル(19世紀のフランス人)の『アメリカの民主政治』(上・中・下で講談社学術文庫など)という本があります。タイトル通り,19世紀アメリカのデモクラシーの実態を取材して考察したもの。
 でも,昔の本ですので,読みにくいかもしれません(それでも,トクヴィルの語り口は生き生きして読みやすいですし,翻訳も決して悪くないと思います)。

 もしよかったら,このブログのつぎのカテゴリー・記事のなかで興味の持てそうなものがあれば,何かお読みいただければ……

近代社会のしくみのカテゴリー(三権分立,憲法関連のほか,近代社会を精いっぱい生きる
5分間の世界史のカテゴリーにあるアメリカ合衆国の基本設計1 アメリカ合衆国の基本設計2 や「近代化とは模倣である」「トンデモなガンジー」など

 「近代社会の原理」なんて大げさな,「エライ人」じゃないんだから,もっと等身大のことを考えたらどうか,と言う人もいるかもしれません。

 でも,今は「ふつうの人」だって,きちんとしたことをそれなりにおさえて考えたほうがいいのではないでしょうか。世の中の多数派に,深い学問や知識が普及していくということが,今の文化の最もだいじな動きではないかと思います。

 自分にとってのまとめも兼ねて,長々書きました……これからもよろしくお願いします。

(以上)
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