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2014年03月02日 (日) | Edit |
 STAP細胞に関する小保方晴子さんたちの論文に対し,論文を掲載した科学誌ネイチャーが,2月18日に「論文の画像に不自然な点がある」として調査をはじめました。

 ネイチャーによれば,異なる実験でSTAP細胞などからつくったはずのマウスの胎盤の写真2枚が酷似していた,とのこと。
 論文の共同執筆者である山梨大学の若山照彦教授も,2枚の写真が似ていることを認め,「ミスによって画像を取り違えたのでは」「しかし,研究成果そのものは揺るがない」と述べている……

※(3月3日追記)2月末から3月はじめの報道によると,小保方さんらの論文の補足的な記述で,ほかの研究者による論文と酷似している箇所もみつかっているそうです。論文の主要な部分ではないものの,それが「引用」であることを示す記述はなく,無断引用(読者に対し引用だと断っていない,不適切な引用)の疑いがあるとして,小保方さんの所属する理化学研究所は調査をすすめているとのこと。「画像」の問題といい,この「無断引用」の問題といい,こういうことが重なると,それらが仮に「ミス」であり,論文の根幹にかかわらないとしても,「もっと重要なところで不適切なことをしていないか」といった疑いは生じてしまうことでしょう。

 こういうことがあって,この研究がそもそも「ねつ造」ではないかという話までいろいろ出ているようです。
 ネットで「小保方 ねつ造」などのキーワードで検索してみると,出るわ出るわ……

 私には,この「画像の不自然な点」の詳細も,それが研究全体にどう影響するかも,はっきりとはわかりません。そこを判断する能力がありません。

 でもひとついえるのは,「科学って,そういうものだ」ということ。

 では,(科学って)どういうものなのか?

 科学研究の具体的な中身はわからないけど,「科学研究がどのような社会的活動か」ということについての一般論は,少しだけわかるつもりです。

 ***

 研究がネイチャーのような権威のある雑誌に載った,ということは,その研究がかなり信頼できるということではあります。なぜなら,権威ある雑誌に論文が載るには,「査読」という一流の科学者による審査を通らないといけないから。

 でも,その「査読」によるチェックは,絶対ではありません。ネイチャーでも,「ねつ造」だと後に判明した論文を載せてしまったことはあります。

 では,私たちは何を信頼したらいいのか?
 ある論文なり研究なりの「正しさ」は,どうやってわかるのか?

 それは,最終的には「追試」ということによって明らかになるのです。
 「追試」とは,科学論文に載っている実験を,疑い深いほかの科学者が同じようにやってみて,論文にあるような結果が得られるか確認することです。

 「同じ結果が得られた」ときは,「追試に成功した」などといいます。

 STAP細胞の場合,まだ「追試」に成功した科学者は,いないのだそうです。
 つまり,小保方論文を読んで,それを真似てSTAP細胞をつくりだした人はいない。

 そこで,「論文発表から1か月経つのに,おかしいじゃないか」という専門家もいます。
 でも,「まだ1か月じゃないか」という専門家もいます。「追試に成功するまで,もっと時間のかかった実験はある」というのです。
 
 もしも,今後も追試がうまくいかないとしたら,「実験の前提条件に何かの見落としがあった」「細かな技術的なことで,論文には書かれていない・書ききれていないことがある」といったことが考えられます。そうでなかったら,「基本的にまちがい」か「ねつ造」であったということです。

 いずれにしても,時間が経つと決着がつきます。

 どこかの時点で「追試に成功した」という科学者が何人かあらわれて,その後それに続く人たちがおおぜい出てくれば,「小保方論文は正しかった」ということになります。その過程で,修正・補足すべき点などが明らかになるかもしれませんが。

 もしも,何年経っても「追試に成功した人が出てこない」なら,「あれはまちがいか,ねつ造だった」ということになる。科学の歴史にはそういうこともあります。

 科学の真理というのは,議論とか世論の雰囲気とかでは決まりません。

 権威や権力のある人が「あれはねつ造だろう」あるいは「あれは本当なんだ」と言ったところで,「追試」がどうなるか次第で,全部吹き飛んでしまいます。もちろん,私たちのような素人や自称専門家がネットで「ああだ,こうだ」といっていることも,同様です。

 仮にこれから小保方さんが記者会見などを行い,好感度の高いプレゼンで世論を味方につけたとしても,あるいは逆に外部への説明・対応をとくに行わず(今のところそうですが),世論の非難を受けたとしても,結局は「追試がどうなるか」ということがだいじです。

 科学の真理は,実験的にしか決まらない。
 その「実験(追試)」は,疑い深い多くの専門家によって行われる。
 「重大な発見」を主張する研究ほど,あらゆる批判や吟味にさらされる。

 それが,人間のつくった「科学研究」という営みのすぐれたところだと思います。

 ***

 では,科学研究はひたすらクリーンで透明なものかというと,人間の営みですから,いろいろあります。

 功名心からトンデモなウソやねつ造を行う科学者も後を絶ちません。
 利害関係や嫉妬心,派閥意識などから,後世からみれば「ほんとうは正しかった」研究を無視したり,非難したりすることもくりかえされてきました。

 今回のSTAP細胞だって,さまざまな人たちの「利害」に影響を与える研究です。
 「この研究がまちがいだったらいいのに」と思う人はいるはずです。あるいは「せめて,今攻撃をしておけば,当面の研究予算を得るのを邪魔することができるだろう」という人がいても,私は不思議ではないと思います。

 とにかく,私たち素人は,以上のような「科学というものの基本の基本」みたいなことは知っておいたほうがいいと思っています。

 つまり,「科学ってそういうもんだ」という眼で,今回のSTAP細胞の件もみていくといいはずです。

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   多くの確認作業の上に成立するのが科学

(以上)  
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2014年03月02日 (日) | Edit |
 3月2日は,ソビエト連邦最後の指導者ゴルバチョフの誕生日です。
 そこで,彼の「四百文字の偉人伝」を。古今東西の偉人を400文字程度で紹介するシリーズ。

ゴルバチョフ

それでもやはり世界平和の功労者

 ミハイル・ゴルバチョフ(1931~ ロシア)は,1991年に崩壊した社会主義国・ソビエト連邦(ソ連)最後の指導者です。
 彼がリーダーになった当時(80年代後半)のソ連は,アメリカと軍事力で競い合う「超大国」でしたが,人びとの自由は抑圧され,経済はボロボロ。ソ連とアメリカはいつ核戦争になってもおかしくない状況でした。
 彼は,政治の大改革に取り組み,アメリカとの関係も改善しました。
 しかし,改革がきっかけで動揺したソ連の体制は崩壊し,彼も失脚してしまいます。ソ連に従属していた東欧諸国の社会主義体制も,同じ道をたどりました。
 でもその結果,ソ連や東欧の国民は以前より自由になり,米ソの戦争も避けられたのです。
 彼はその後,「名士」として講演やイベント出演などで稼いでいます。
 偉人らしくない? そうかもしれませんが,それでも彼が世界平和に大きく貢献したことはまちがいないのです。

シュナイダー著・瀬野文教訳『偉大なる敗北者たち』(草思社,2005)に教わった。

【ミハイル・ゴルバチョフ】
ソビエト連邦の幕を引いた政治家。1985年,ソ連の最高権力者に。86年以降「ペレストロイカ(再建)」「グラスノスチ(情報公開)」と称する改革を行う。91年にはソ連共産党を解散し,連邦解体の激動の中で辞任。
1931年3月2日生まれ(2014年3月現存)

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 「四百文字の偉人伝」は,古今東西のさまざまな偉人を,400文字ほどで紹介するシリーズ。このブログでときどき載せています。(カテゴリー:四百文字の偉人伝
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