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2014年05月14日 (水) | Edit |
 今日5月14日は,社会運動家ロバート・オウエンの生まれた日。共産主義的な思想にもとづく「理想の村」をつくった人物です。そこで彼の「四百文字の偉人伝」を。古今東西の偉人を400文字程度で紹介するシリーズ。

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オウエン

「理想の村」のむずかしさを実証

 ロバート・オウエン(1771~1858 イギリス)は,裸一貫から身をおこして,紡績工場の経営者になりました。すぐれた手腕で事業を成功させただけなく,労働者の待遇改善や教育・啓蒙にも熱心に取り組みました。
 彼にはさらなる理想がありました。やがて彼は私財を投じ,「私有財産を否定した,すべてが共有の〈理想の村〉」をアメリカの田舎に建設しました。
 しかし,この村は労働が非効率で,経済的に行き詰まり失敗。
 再びイギリスでも「理想の村」づくりに取り組みましたが,また失敗。
 結局,財産をあらかた失いました。
 それでも,自分の主義主張を捨てずに言論活動を続け,貧しいまま亡くなりました。
 オウエンは,理想主義だけではない,経営の経験や才能のあるすぐれたリーダーでした。
 その彼でさえ,すべてを共有財産で運営する「理想の村」は経営しきれないのです。彼の生涯は,「その理想がいかに無理なものであるか」を示す実験だったともいえるでしょう。

参考:土方直史著『ロバート・オウエン』(研究社,2003),オウエン著・五島茂訳『オウエン自叙伝』(岩波文庫,1961)

【ロバート・オウエン】
「理想の村」の実験を行った社会運動家。アメリカで共産社会「ニューハーモニー」の実験を行う(1825~28年)。のちのマルクス主義による評価では,サン=シモン,フーリエと並ぶ「空想的社会主義者」の1人。「空想的」というのは,マルクス主義の立場からみて「社会・経済についての体系だった学問的理論を持っていない」という意味。
1771年5月14日生まれ 1858年11月17日没

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 私有財産に背を向ける,あるいはその限界を超えようという考え方は,昔からあります。
 そのかつての代表は,社会主義の理想。
 今なら「共有」「シェア」の思想というものがあります。「共有」の思想に基づくコミュニティの実験は,今もどこかで行われています。

 「共有」「シェア」の部分を取り入れることによって,私たちの暮らしがより豊かになる,ということはあると思います。
 たとえば自家用車の「シェア」ということは,短期間のうちにある程度普及して,一定のニーズに応えています。社会全体にとっても,ムダが減るなど,ある種の「最適化」をもたらす面があります。
 
 私の好きな世界だと,図書館は「共有」の古典的なものです。公共図書館は,みんなで共有する蔵書であり,書斎です。充実した図書館が近所にあるなら,それをうまく利用すれば,私たちの暮らしはより豊かになるでしょう。
 私も,図書館をときどき利用しています。

 でも,あくまで自分の蔵書や書斎を補うものとしてです。
 私の読んだり書いたりする活動のベースは,やはり自分の蔵書です。

 もしも,自分の蔵書がなくなってしまって,そのかわりに図書館を使え,といわれたら困ります。
 その図書館がどんなに充実していても,まっぴらという気がします。
 充実した公共サービスであっても,そこにはいろんな制約があります。他人の考えに合わせないといけない部分が出てきます。大事な自由が奪われている感じがするでしょう。

 「自分の蔵書のない,図書館だけの世界」を考えると,私は息が苦しくなる。
 
 みなさんも,自分の好きなものについて「自分の所有の〇〇がない,共有の〇〇だけがある世界」を想像してみてください。息が苦しくなりませんか?

 「共有」「シェア」とは,あくまで「自由に使用・処分ができる個々人の所有物」を補完するものではないでしょうか。「補完」という枠を超えて,社会の全体や大部分を「共有」にしてしまうのは,やはり無理がある。

 そんな社会主義的な世界をつくったとして,その巨大な「共有」財産の運用については,どうやって決定するのか? 
 民主的に決める? 
 民主的って,多数決のこと? 
 そうだとして,多数でない少数派の人の意思はどうなるの? 
 社会のおもな部分がすべて「共有」だったら,少数派の人には逃げ場はないのでは?

 「すべてが共有の理想の村」の実験を行い,挫折したオウエン。その生涯をみていると,以上のような「共有」の限界や「息苦しさ」について考えてしまうのです。

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