FC2ブログ
2014年05月28日 (水) | Edit |
 今日5月28日は,トヨタ自動車の現在につながる基礎を築いた技術者・大野耐一が亡くなった日。
 そこで彼の「四百文字の偉人伝」を。古今東西の偉人を400文字程度で紹介するシリーズ。

 ***

大野耐一(おおの・たいいち)

うわべの数字にだまされない

 トヨタ自動車の大野耐一(1912~1990)は,「トヨタ生産方式」という高度な生産管理のシステムを築いた技術者です。
 彼が自社の工場で,いくつもの工程が並ぶ,組み立てラインをみていたときのこと。
 大野は不機嫌そうでした――「ラインの稼働率(機械が動いた時間の割合)が98%とは高すぎる。作業の人数が多すぎるからだ」
 稼働率が高いのは「作業が順調に流れている」ということで,一見それでよさそうです。たしかに,工程のどこかに非効率や無理があると,ラインの流れが滞ります。
 その問題点を,きちんと改善するのならいいのです。しかし,やり方を改善せず,単に人手を増やして問題をカバーすることもあります。それでは,本当の生産性の向上にはなりません。
 「人手が多くかかる」というのは,そのぶん非効率なわけです。めざすべきは「より少ない人手で,作業が順調に流れること」です。
 「もっとラインが止まるような人数にして,問題点がわかるようにしなければ」と,大野はいいました。
 彼は,うわべだけの「いい数字」にはダマされない本物のエンジニアでした。

下川浩一・藤本隆宏編著『トヨタシステムの原点』(文眞堂,2001)による。ほかに参考として,三戸節雄著『日本復活の救世主 大野耐一と「トヨタ生産方式」』(清流出版,2003),大野耐一著『トヨタ生産方式』(ダイヤモンド社,1978)。

【大野耐一】
トヨタ自動車の技術者・役員。従来の大量生産工程で一般的だったさまざまなムダを改善する生産管理の方法を体系化した。これが「トヨタ生産方式」と呼ばれ,世界の製造業に大きな影響を与えた。
1912年(明治45)2月29日生まれ 1990年(平成2)5月28日没

 ***

 大野から私たちが学ぶべきなのは,「科学や技術の持つ合理的な精神」です。

 大野は,「日本のモノつくり」を代表する1人です。だから,彼を賞賛すると「モノつくり・製造業こそが大事なのだ」という方向にいくことがあります。しかし,大事なのは「モノつくり」だけではないはずです。
 サービス業などのほかの産業や,社会のさまざまな分野で「科学・技術の精神」は生かせるでしょう。

 たとえば,大野よりやや後の時代に,セブン‐イレブンの鈴木敏文は,「売上のデータをしっかりと分析して戦略を立てる」という方法を確立しました。鈴木は,流通業において「大野耐一」的な仕事をした,ともいえるのです。

 今回の「偉人伝」のエピソードには,「問題をつねに冷静に・客観的にとらえる」という大野の姿勢があらわれています。現実に即さない「願望」や「場の雰囲気」に流されず,「現実」をしっかりとらえようとする精神です。

 かなりの組織やリーダーは,大野のようにはいかないのです。統計やアンケート調査などのデータひとつとっても,「組織の論理」にとって都合のよいように数字を編集したり,解釈したりして「それでよし」とする傾向があります。
 そういう,「データに基づく合理性」を装った「非合理」が,世の中にはまだまだ多い。

 うわべの「いい数字」にだまされる組織やリーダーがあとを絶たないわけです。 
 そして,その「いい数字」は自分たちでつくったもの。
 自分で自分にだまされている。

 私たちの社会は,そのレベルを早く卒業しないといけないのです。

 ***

  「四百文字の偉人伝」は,古今東西のさまざまな偉人を,400文字ほどで紹介するシリーズ。このブログでときどき載せています。(カテゴリー:四百文字の偉人伝
 その101話をまとめた電子書籍『四百文字の偉人伝』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も発売中です(アマゾンKindleストア楽天Kobo,ディスカヴァー社のホームページなどにて販売,400円)
                     
四百文字の偉人伝四百文字の偉人伝
(2013/02/04)
秋田総一郎

商品詳細を見る

(以上)
関連記事