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2014年06月04日 (水) | Edit |
 明日6月5日は『国富論』の著者アダム・スミスの誕生日。
 そこで彼の四百文字の偉人伝を。古今東西の偉人を400文字程度で紹介するシリーズ。

アダム・スミス

パトロンの援助が名著を生んだ

 アダム・スミス(1723~1790 イギリス)の『国富論』は,経済学史上の偉大な古典です。
 では,岩波文庫版で全4巻になるこの大著を書いたときのスミスの職業は何だったのでしょうか? 大学教授? 公務員? 貴族や資産家?
 どれもちがいます。彼は,大学教授だったこともありますが,『国富論』を書いているときには辞めていました。貴族やお金持ちでもありません。
 では,どうやって食べていたのでしょうか?
 じつは,ある公爵が「お金の面倒はみるから」ということで,十分な年金を出してくれていたのです。これは,その公爵の「家庭教師」としての報酬なのですが,実際にはその仕事に時間を取られることはありませんでした。
 彼は,9年間著作に専念して『国富論』を完成させました。「研究のことだけ考えていられる環境」を用意してくれたパトロンのおかげで,不朽の名著が生まれたのです。

参考:バカン著・山岡洋一訳『真説アダム・スミス』(日経PB社,2009),浜林正夫,鈴木亮著『(人と思想)アダム=スミス』(清水書院,1989)

【アダム・スミス】
『国富論』(1776年刊)を著した政治経済学者。当時のイギリスで新しく生まれた「近代的な市場経済の社会」について論じ,後世に影響を与えた。同書にある「みえざる手」という言葉はさんざん引用された。
1723年6月5日生まれ 1790年7月17日没

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 スミスは晩年にこんな言葉を残しています。

 「もっと大きな仕事をするつもりだったのだが」

 『国富論』も,彼にとってはもっと大きな構想の一部にすぎませんでした。
 
 たとえば彼は,社会全体を「万有引力」のような根本原理で説明する理論を築きたいと考えていました。その糸口として,『道徳感情論』という大著で「共感」という概念について論じました。「人が人に共感する」という普遍的な作用。その概念を政治や法の理論に適用しようとしましたが,うまくいきませんでした。

 また,科学や芸術について包括的に論じる哲学体系も構想しました。しかし,いくつかの論文を残しただけで終わっています。

 学問的巨匠とは,こういうものなのでしょう。

 つまり,途方もなく大きな問題について考えようとする。
 そして,その大きな問題について「自分なら解ける」という強い自負がある。
 だからこそ,本気で生涯を賭けて,その問題に取り組むのです。
 
 その結果,構想のすべては実現できなくても,部分的には成功する。
 その「部分」というのは,ふつうの感覚でみれば「大きな・体系的な仕事」です。

 おそらく人は,自分が考えた以上のことなど実現できない。
 頑張っても,「考えたこと」の一部がどうにかカタチになるだけ。
 それだけに「どんなスケールでものごとを考えるか」というのは,根本的で重要なことのようです。

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  「四百文字の偉人伝」は,古今東西のさまざまな偉人を,400文字ほどで紹介するシリーズ。このブログでときどき載せています。(カテゴリー:四百文字の偉人伝
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