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2014年07月12日 (土) | Edit |
 身のまわりにある,「好きなもの」をこれまで何度か紹介してきました。
 たとえばリンナイ製のガスストーブとか。

 あるいは,ジョエ・コロンボというデザイナーによるフロアライトとか。
 あるいは,つよいこグラスとか。

 しばらくそういう「紹介」をしていませんでしたが,今日は久々に。
 今回は,イスをひとつ。
 私はイスが好きです。あまり高くなくて,でも美しく機能的なもの。

 インテリア好きの人なら,たいてい知っている「名作イス」的なものを何個かもっています。でも,1脚せいぜい4~5万円くらいまで。
 「高くてすばらしい」ものよりも「ローコストですばらしい」ものに胸がおどります。
 自分の財力が限られるせいもありますが。

 それでも興味のない人からみれば「高い」のかもしれません。でも,「4~5万円以内」というのは,本格的なデザインと技術でつくられたイスとしては「ローコスト」の部類に入ります。

 今回ご紹介するイスは,そんな「ローコスト」の傑作です。
 松村勝男(1923~1991)デザインの,天童木工の製品。
 最も安いモデルは2万円台。

 1982年に発売された製品で,今も買えます(「天童木工 PESCA」などで検索)。
 写真は,黒のビニールクロス貼りの「最も安い」タイプ。

天童木工PESCA

天童木工PESCA2

 このイスの魅力は,写真だとなかなか伝わりません。
 撮影者(私)の腕前のせいもあります。ただ,プロが撮った写真でも,やはりほかの「名作イス」のような「華」が感じられないのです。

 写真では伝わりにくくても,現物に触れるとその良さはわかります。
 小ぶりでかわいらしい感じ。
 そして,座り心地。

 このイスは背もたれの下のほうがくびれてカーブになっています。そこで弾力がうまれ,もたれかかると程よいやわらかさで受けとめてくれます。

 また,サイズがやや小さいのは,小柄な女性などにはぴったり。でも私のような標準より大きい日本人(体重80何キロ)が座ってもきゅうくつではない。たぶん,背もたれの弾力のせいで,姿勢の自由があるからだと思います。

 というわけで,素晴らしいイスです。

 そして,このような「高性能」をローコストで実現するために,さまざまな工夫がなされています。
 たとえば,きわめて少ないパーツで出来ている,ということがあります。

 裏返してみると,わかります。
 「背もたれ」「座面」「脚(4本ではなく2つのパーツにまとめている)」「座面の上に貼ったシート」・・・パーツはほとんどそれだけ。
 しかも,それらをおもにネジで止めている(これは作業としては比較的簡単)。

天童木工PESCA3

 松村は「ローコストで高品質」ということを,生涯にわたり追求したデザイナーでした。
 このイスには「ローコストチェア」という別名もあります。松村にとって,ひとつの集大成といえる作品です。

 「名作イス」というと,ミッドセンチュリー(1950~60年代)のものが特に有名で,1980年代につくられたこのイスは,取りあげられることが比較的少ないようです。雑誌などではあまりみかけない。

 でも,ミッドセンチュリーの「古典」をふまえつつ,さらに進化・洗練させたところが,このイスにはあると思います。そして,日本人デザイナーによる現代日本人のためのデザインです。

 そこで,多くのふつうの人(特別なインテリア好きではない人たち)の暮らしにも合うのです。カフェとか,飲食店のイスにもいいと思います(座面の色や材質のバリエーションも豊富なので,さまざまな色のこのイスが並んでいる空間なんて,ステキかも)。

 それでも「2~3万円もするのかー」と思う人もいるでしょう。
 でも,このイスは大事に使えば,20年は軽くもちます。
 デザインが古びてしまうこともないでしょう。

 私は8年ほど使っています。妻が食事のときに毎日座っていますが,まだぜんぜん傷んでいません。

 ていねいにデザインされ,きちんとつくられたイスほど,お買い得なものはありません。
 数万円で20年は使えて,私たちの毎日を確実に気持ちよくしてくれるのです。

(以上)
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