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2014年07月20日 (日) | Edit |
 今週末は,妻と休みを合わせてささやかな夏休み。
 遠出する予算もないし・・・ということで「身近な東京見物」をすることにしました。

 まず,木曜日の夜に,新宿のホテルで1泊。
 会社帰りの途中でホテルにチェックイン。シャワーを浴びて一休み。
 ふだんは1時間かけて通勤しています。これはラクだ。

 そのあと妻と新宿の街へ出て,食事をしてホテルへ戻る。
 「ここで泊まっている」となると,見慣れた街も少しちがってみえます。

 泊まったホテルは,超高層ビル街の中にあります。
 そんなロケーションですが,どういうわけか,下のほうの階に小さなプールがある。

ビルの谷間のプール

 このホテルは1970年代初頭に建てられました。
 「大きなシティホテルなんだからプールも必要だ」ということで,かなり無理やりにつくったのかもしれません(今の時代ならたぶんつくらない)。
 そのころは,周囲には超高層の建物はほとんどなかった。
 でも今は,ビルに囲まれて,どうも落ち着かない。

 そんなプールで,ひとり平泳ぎをする中年男性がいるのが,窓からみえました。
 平日の朝9時すぎ。いいなー。
 このプール,今も続いているということは,それなりの需要があるのでしょうか?

 ***

 泊まった翌朝。
 朝食は数分歩いて別のホテルへ行きました。
 眺めがいいのです。都心を一望できます。

 ブッフェ形式で1人2000何百円(料理は一般的だと思います)。
 ウチとしてはたいへん贅沢なんですが,たまには。
  
眺めのいい朝食
いろいろ並べた

 朝寝坊したうえにダラダラしてたので,店に入ったのは9時半すぎ。1時間くらいいましたが,最後はお客は私たちだけになっていました。

 ***

 朝食のあとは代々木駅からJRに乗って原宿へ。
 原宿にある,2つの大きな「近代」の文化遺産をみるためです。
 ひとつは,国立代々木競技場(第一室内競技場)。通称で「代々木第一体育館」ともいいますね。

国立代々木競技場その2
国立代々木競技場・第一室内競技場

 この建物は,何度もみたことがありますし,中に入ったこともあります。でも,あらためてじっくりみたいと思いました。

 東京オリンピックのため1964年に建てられた。丹下健三設計の「名作」といわれる建物。
 「日本の近代建築を代表するもののひとつ」といってもいいかもしれない。

 この建物は,日本の伝統建築を思わせる「屋根」を持っています。
 その屋根は「吊り構造」といって,巨大なケーブルによって吊り下げられている。
 吊り橋と同じ原理です。

屋根を吊るケーブル
屋根を吊るケーブル
 
 屋根が吊り構造で支えられれているので,大きな建物なのに室内には柱がありません。だから競技がよくみえるのです。

 この建物は,「伝統」を元にした造形を,当時としては最先端の技術でカタチにしたものなのです。

 これをみて 「カッコいい!」と思う人もいれば,「これみよがしでエラそう」と感じる人もいると思います。その両面が,この建築にはあります。
 
 でもこの建築は,ただの「これみよがし」とは一線を画しています。
 骨太で明確なコンセプトがあり,構造と一体の,練りに練った造形の美しさが,たしかにあるのです。
 近くでみると,その造形とボリュームの迫力に圧倒されます。
 上質の「これみよがし」です。

 この建物は巨額の費用を投じてつくられましたが,それだけの価値はあったと思います。「巨大な公共建築が輝いていた時代」の傑作といっていいでしょう。

 しかし,今はそのような時代ではない。
 1960年代の丹下健三のような精神で「どうだ,すごいだろう」という建物をつくってもしょうがないと思います。

 たとえば,1000何百億円もかけて新しい国立競技場をつくって何になるのか。
 そんなことを思いつつ,「代々木の体育館」をあとにしました。

  関連記事: 「リフォームの思想」とオリンピック

代々木競技場の街灯など
「モダン」な代々木体育館の街灯

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 つぎに向かったのは,代々木の体育館のすぐとなりの,明治神宮です。
 ここは初詣のごった返しているときしか知らないので,平日の朝の静かなときに行ってみたかったのです。
 でも寝坊して,昼になってしまいました。

明治神宮

 昼になったとはいえ,平日のせいか,混み合っていることはありません。ほどよく人が集まっている感じ。

 外国の人が目立ちます。3人にひとりはそうなのでは,と思うほど。
 アジアの人,欧米の人,たぶんアフリカの人,そのほか私にはどこから来たか見当がつかない人・・・とにかく世界中から来ている感じ。

 たしかに,ここはいいです。
 すがすがしい感じに包まれます。「日本っていいなあ」という気持ちになります。

 だから,東京に来た外国の人には「明治神宮はぜひ」と思います。じっさい「定番」のスポットになっているのでしょう。

 あとは,デザインや建築に興味がある人なら,おとなりの代々木の体育館も立ち寄るといいでしょう。
 こちらは「観光スポット」にはなっていません。この日も見物している物好きは私たちだけでした。
 
 外国の人にかぎらず,日本人だって明治神宮や代々木の体育館は,訪れてみるといいと思います。とくに平日の静かなときがおすすめ。

 ***

 ところで,さきほど「原宿で2つの近代の文化遺産をみる」といいました。
 代々木の体育館が「近代」の遺産というのは,わかります。

 でも,明治神宮が「近代」というのは,どういうことでしょうか? 神社なんだから,「近代」ではなく「伝統」なのでは?

 明治神宮は,1920年(大正9)に創立されました。明治天皇(と皇后)が祀られています。
 大正時代につくられたというのは,神社としては新しい部類です。有名な神社であっても,出雲大社や伊勢神宮などとは,歴史や由来が根本的に異なるのです。

 この神社は「記念公園」としてつくられた,という面をもっています。明治天皇あるいは「明治」という時代を記念する公園です。

 明治神宮の森は,大名屋敷だった土地に,造園家たちが計画的に木を植えてつくりあげたものです。その意味で,近代的な「公園」のようにしてつくられた,といえます。

 しかし,「宗教施設」という側面が,もちろんあるわけです。
 純粋な「市民のための公園」,たとえばニューヨークのセントラルパークなどとは,その意味でちがう。いわゆる「憩いの場」ではない。だから,弁当をひろげてピクニック,というわけにはいかない。
 
 しかも「国家神道」という,政治的な意味あいのある宗教や「天皇制」ともかかわっている。
 そういう,重たい面も明治神宮にはあります。

 参道を少し外れると,こんな「深い森」の風景が。
 東京のど真ん中に,こんな世界がある。

明治神宮の森
明治神宮の森

高いところから見た明治神宮の森
朝食をとったホテルからみた明治神宮の森

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 明治神宮をあとにすると,2時ころになっていました。
 時間があれば行こうと思っていたところがほかにもあったのですが,だいたい満足しました。
 渋谷へ出て遅い昼食をとったあと,興味のあるお店を少しのぞいて,帰りの電車に乗りました。

 40分ほどで自宅の最寄駅に到着し,今回の「旅行」はおしまい。

 東京というところは「多くのお金や知恵や労力の詰まった人工物」の宝庫です。
 明治神宮の森のような,一見「自然」に属するようなものでさえ,手の込んだ「人工物」なのです。
 
 東京見物のだいじなたのしみは,そんな「人工物」のすごさや素晴らしさを味わうことです。新しいものであれ古いものであれ,それを素直に味わえないと,東京はおもしろくありません。
 今回の「ささやかな夏休み」で,あらためてそう思いました。

(以上)
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