2016年09月22日 (木) | Edit |
先週末にテレビをみていたら「○○に10万円あげたらこんな使い方された」(TBS)という番組をやっていて、ちらちらみてました。

「10万円あげるとしたら何をしますか」と、街角でいろんな人に聞いてみる。
多くの人は、旅行に行く、貯金する、何かの足しにしたい、などという。でも、おもしろい使いみちを考えている人がいたら、10万円をあげてそれを実行してもらう。

番組のなかでは数名の10万円をゲットした人が登場しました。

とくにおもしろかったのは、ベトナム人の、電気の通っていない村に住む若いお父さん。

その人は、ソーラーパネルと扇風機を買いました。LED照明とバッテリーはもっていたけど、不調で使いものにならなくなっていた。ソーラーパネルによって、LED照明も復活。ささやかだけど、10万円で電気のあるくらしを実現した、というもの。

途上国だと、そういうニーズや発想があるんだな。それに今の技術だと、10万円でパーソナルなかたちで「電気のあるくらし」を実現できる、というのもおもしろいと思いました。

ベトナムでは、ほかに「子どもの学費の足しに」とか「牛を2頭買う」と答えた人もいました。「自分より貧しい人にあげちゃう」なんて人もいました。

日本のケースだと、北海道の羅臼(らうす)という昆布の名産地に住む30代女性のケースが印象的でした。「地元の人も滅多に口にできない、最高級の昆布をたくさん買って、それを使った料理をお世話になった町の人にふるまう」というのです。この人は数年前に札幌から羅臼に移り住んだのです。

「自宅のアパートでプロジェクションマッピングをする(そのための機材を買う)」という東大生のケースも、なかなかおもしろかったです。

10万円あると、いろいろおもしろいことができるわけです。
ベトナムだと、10万円は日本の数十万円かそれ以上の重みがあるでしょうが。

そういえば私も、数万円から10万円で、旅行やふつうの買い物ではない、ちょっと楽しいことをしたことがあります。
「こども文庫」「家庭文庫」みたいなものをつくったのです。

妻が雑居ビルの1室を借りて小さな書道教室をしています。
その部屋に小さな本棚をしつらえ、子どもや大人が楽しめる本を並べたのです。メインの本棚は知人の建築家(寺林省二さん)がDIYでつくって寄贈してくださった。これを「そういち文庫」と名付けました。

そういち文庫の蔵書は、今は100数十冊といったところ。
すでに持っていた本を並べたりもしましたが、100冊くらいは新たに買ったでしょうか。ブックオフなどで安く買ったものもありますが、新刊を買ったものも多いです。少しづつ買い足して、今までで10万まではいかないけど、何万円か費やしました。

そういち文庫の本は、書道塾の大人や子どもの生徒さん(合計で20数人)が借りていきます。

文庫を開設したのは2015年3月でしたが、ついこのあいだ貸出ノート(ふつうの学習ノート)の1冊目がいっぱいになったので、2冊目のノートをつくりました。そういち文庫はそれなりに繁盛しています。これは、本好きとってなかなか楽しい遊びです。

 2015年8月のそういち文庫・本を増やした

 そういち文庫で本を読む帽子の子

「子ども文庫」「家庭文庫」を自分でやってみたい、でも今の私の経済力では無理、いつか将来は、みたいなことを述べているのを、インターネット上でみかけたことがあります。

たしかにそれぞれの事情というのはあるでしょうが、でも、とりあえずの「文庫」をつくるのは、たぶん数万円あればできるのです。今「数万円」がなかったとしても、貯めることのできない金額ではない。問題は「お金がない」ということとは、少しちがうような気がします。

私たちは「もっとお金があったら、○万円くらい手元にあったら、こんな夢を実現したい」と、ときどき考えます。
しかしその夢は、もともとイメージしているよりも、ずっと少ない金額でどうにかなるのかもしれない。

そんな発想はやはり大事なのでしょう。

たとえばこんなこともありました。
グレーザーというアメリカの物理学者は、1950年代に、素粒子研究に使う画期的な観測装置のアイデアを思いついたのですが、研究予算がなかった(大学などの理解を得られなかった)。そこで、自宅にあった古いラジオの部品などで、それなりの装置を組み立てました。そして、それを出発とした研究は高く評価されて、1960年にはノーベル賞を受賞したのでした。

やっぱり、「今はお金がないから、何もできない」というのは、もったいない考えではないかと。
もしも今手元に1万円しかないなら、それで何かできないか。

***

などと偉そうに書きましたが、これから私は10万円くらい使って妻と2人で小旅行に行ってきます。
おいしいものを食べたり、ごくありきたりなお金の使い方をしてきます。

行ってまいります。

***

最近本を出しました。

中心の移り変わりから読む 一気にわかる世界史(日本実業出版社刊)←こちらをクリック

2016年09月10日 (土) | Edit |
この2、3回のブログにも書いたとおり、つい最近世界史の本を出版しました(『中心の移り変わりで読む 一気わかる世界史』日本実業出版社)。その作業の追い込みのこの何か月かは、世界史関係以外の本を読むことが減っていました。

しかし、このところは世界史以外の本を、以前に読んだものも含め、たて続けに読んでいます。これが楽しい。おもに、現代日本の社会・経済にかかわる本。

たとえば、吉川洋『人口と日本経済 長寿、イノベーション、経済成長』(中公新書、2016)、村上由美子『武器としての人口減社会 国際比較統計でわかる日本の強さ』(光文社新書、2016)を読みました。

どちらの本も「少子高齢化時代の日本、その中長期の未来」を考えるというもので、よく読まれているようです。

このほか、数か月前に読んで今回読み返した、橘木俊詔『日本人と経済 労働・生活の視点から』(東洋経済新報社、2015)にも、共通の問題意識があります。

吉川『人口と日本経済』の最もおもな主張は、「人口が減っても、その国の豊かさに深くかかわる1人あたりGDPが向上できればいい」「1人あたりGDPを向上させるのはイノベーション(技術革新やすぐれた新企画で画期的な製品やサービスを生みだすこと)。イノベーションこそがカギだ」ということです。

こういう主張は「あたりまえ」といえば「あたりまえ」なのですが、著者はケインズ経済学の研究などで知られる有名な学者。そういう権威がていねいにさまざまな経済統計を示し、マルサスやケインズのような古典的な大学者の言説も引用しつつ述べているので、「説得力や厚み」を読者は感じるのだと思います。「やっぱりそうだよね」と、再確認ができる。

村上『武器としての人口減少社会』も、「イノベーションこそが重要」という基本的な考え方に立っていると思います。

『人口と日本経済』との関連で本書を読むならば、イノベーションを起こし、そこから産業・経済を発展させるうえで有利なさまざまな条件を、日本人や日本社会が持っている、と述べています。そのことを、さまざまな国際比較統計などを用いて論じている。著者は大手の外資系証券会社を経て、現在はOECD(経済協力開発機構)の東京センター長を務める、とのこと。

一方、橘木『日本人と経済』は、やや関心が異なります。橘木さんは、小泉政権のころ(2000年ころ)「現代の日本で格差が広がっている」という分析が大きな話題となった、やはり有名な経済学者です(『日本の経済格差 所得と資産から考える』岩波新書、1998など)。

橘木さんのほかの本もあわせて読むと、橘木さんは「日本経済がイノベーションでさらにおおいに発展する」ことが可能だとも、またその方向の取り組みがとくに重要だとも考えていないようです。「格差」の分析を重要なテーマにしてきた学者としては、そうなるのでしょう。

「少子高齢化と日本の未来」に関し、橘木さんがとくに関心を持つのは、「日本がどんな福祉や社会保障の国となるべきか」ということ。つまり「成長」ではなく「分配」の問題。この本はおもに日本経済史について述べていますが、最後のほうの未来への展望を述べたところで、そのへんの議論が出てきます。

その選択肢は大きく3つある、と橘木さんは言います。①ヨーロッパ型の福祉国家、②アメリカ型の低福祉の自由主義国家、③家族や地域社会が福祉を担う、かつての「美しい日本」の在り方を再構築する。

今の日本は、①~③のどれにも明確に属さない、中途半端なかたちのようです。日本の福祉・社会保障の政策は場当たり的で、きちんとした構想に基づく制度の構築がなされてこなかったところがあるのです。

橘木さんがおしているのは、①福祉国家です。③「美しい日本」的な方向は、一部の「保守」が主張しているが、橘木さんによれば現実的ではない。ただし、福祉国家にも北欧型の「高負担・高福祉」もあれば、ドイツ・フランスのような「中負担・中福祉」もある。おそらく「中負担・中福祉」が現実的であろう、と。

また、北欧の経済をみるかぎり、福祉の充実がイノベーションを阻害することはないはずだ、とも橘木さんは述べています。

***

以上の3冊はあわせて読むと、「日本の中長期の未来」を考えるうえで意味のある視点や情報をいろいろと得られると思います。1冊だけでもいいのですが、「あわせて読む」のが、とくにおすすめです。

3人の著者は、それぞれ考えや関心がちがいます。しかし、どの人もペラペラの情報や言説を流すのとは異なる、「知識人」と呼ぶに値する人たちだと感じます。とくに、専門知識をしっかりと持つ知識人。どうせなら、そういう人の書いた本をちゃんと読んだうえで、社会のことを考えたいと思います。

この中の誰かの見解に全面的に賛成でなくてもいいのです。じっさい私はそうです。でも読むことで、自分も考えることができる。それが読書の最大の意義です。

では「私は何を考えたか」というと、特別にオリジナルなことを思いついたわけではありません。でも、今回ここでまとめたような「視点」を得たわけです。これは、今後の読書はもちろん、さらには自分の行動にも一定の影響をあたえるでしょう。それなりの「問いかけ」が私のアタマにできた、あるいは再確認された、ということ。

「これからの日本人に、ほんとうにイノベーションが実現できるのか?そのような活力がまだあるのだろうか?」「日本人は、①福祉国家、②アメリカ的自由主義、③美しい日本的社会のうち、どれを選択するたろうか?」「ほんとうにほかに選択肢はないのか?」「いや、選択肢を明確にもできないまま、このままズルズルいかないだろうか?」

「悪いシナリオで、イノベーションによる成長も、きちんとした福祉国家の構築もすすまなかった場合もありうる。そんな場合にそなえ、個人として何をしておけばいいのだろうか」……たとえば、そんなことを考えるわけです。

そして、アメリカ自由主義的な「自助努力」の発想で、個人として経済力を高めなくては、と考えたりする。あるいは、家族やそのほかの人間的なつながりをしっかりしていくことも大事だ、とか。やはりどちらも大事ではある。そうだとしたら、何をする……そんなふうに考えたのでした。

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中心の移り変わりから読む 一気にわかる世界史←こちらをクリック

(以上)
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2016年09月04日 (日) | Edit |
つい先日発売した、私の著書

中心の移り変わりから読む 一気にわかる世界史←こちらをクリック
(日本実業出版社)

に対し、さっそく読者の方から感想をいただきました。
京都府の宮木新平さんからの感想です。昨日、メールをいただきました。

(宮木さんからの感想)
おようございます。そういちさんの本をゆっくりと読み進めています。今朝,ちょうど半分くらいの所まで来ました。知識と学力の不足している私でも大丈夫みたいです。

読み終わってからなんて言っていると,書きそびれてしまうかもしれないので中間報告的に,思いつたことを書いておきます。

一般的に知識が豊富にある著者は,ついつい細部にわたって知っていることを余さず書いてしまいたいものなのでしょう。しかし,この本はその辺りをぐっと我慢して,素人の気持ちをそらさない用に気を使って書いてくださっているのが伝わってきます。

高校の世界史の授業をイヤイヤやり過ごしていたけど,もう一度学び直してみたいという好奇心の残っている中高年の読者の期待にこたえる内容ですね。

そして,今現役の高校生で世界史の授業や教科書にうんざりしている人たちの向学心をよみがえらせるのにも役立ちそうです。そう言えば,緑と黒のインクを使った二色刷りのレイアウトも何となく学習参考書を意識したつくりになっているみたいですね。


たしかに、「書き込みすぎない」「初心者にとって読むのがイヤにならない情報量」というのは、つよく意識したところです。
たとえば、古代ギリシア史の有名な戦争で「ペルシア戦争」というのがありますが、それについての本書『一気にわかる世界史』の記述は、こうです。

 紀元前400年代(2500~2400年前)には、アテネを中心とするポリスの連合軍が、当時の世界で最大の国だったアケメネス朝ペルシアと戦争して勝利しています。「ペルシア戦争」です。
 といっても、ペルシアを征服したのではなく、攻めてきたペルシア軍をいくつかの合戦で撃退した、というものですが、当時のギリシアの勢いを示しています。
(57ページ)


ここは、教科書や一般的な概説書なら、この戦争の経緯や背景・個々の戦闘の経緯などまで書くわけです。しかし、それを行いながら「通史(太古から現代までを通した歴史)」を書くとなると、とにかく長くなってしまう。多くの年号や名称も出てくることになります。「歴史好き」はそれでいいのですが、そうでない人は疲れてしまう。情報量が多すぎて、全体像がみえなくなってしまう。

だから、本書では上記のような書き方の密度で「通史」を展開していきます。
簡潔すぎてもの足りないという面は当然あるでしょう。
しかし、まずは世界史の骨格・全体像を伝えることが、本書の目的です。

「全体像がみえてくる」「みえてきた感じがする」ことは、宮木さんがいわれる「向学心」のベースになるはず。
つまり「世界史って、知る価値があるんだな」という気持ちにつながるのではないかと。

本書を読んでくださった方、ぜひ感想をお寄せだください。
あるいはご質問も。本ブログでお答えします。
(このブログでご紹介する場合、ご希望や許可がないかぎりは、匿名です)

 ***

昨日、新宿の西口にあるブックファースト新宿店に立ち寄りました。
新宿は私にとって最も身近な繁華街で、その中でもよく行く本屋さん。
大きくて、しかも本のディスプレーや並べ方も新鮮な、刺激やたのしさにあふれた書店です。

「私の本が並んでないかな」と思って入ったのです。
そうしたら、ありました。それも、その書棚ではかなり目立つかたちで。
お店の「Bゾーン」という一画の「世界史概説」の棚。
(お店の方にお声がけして撮らせてもらいました)

 ブックファースト新宿店にて 
 書店に並ぶ『一気わかる世界史』

 『一気にわかる世界史』が並ぶ棚

表紙がみえる3冊のうち、まん中の「一気にわかる世界史」が、私の本。
この分野では実績のある著者(神野正史さん)の新著や、最近の世界史本のベストセラー(角田陽一郎さんの著作)と並んでいます。かけ出しの著者としては、ありがたい光景。

(以上)  
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