FC2ブログ
2019年08月12日 (月) | Edit |
この時期は、先の戦争(第二次世界大戦、太平洋戦争)についての追悼や振り返りがさかんだ。ではそもそも、あの戦争によって世界全体でどのくらいの人が亡くなったのだろう? 第二次世界大戦は、一般には1939年から45年にかけてあったとされる。1940年の世界人口(推定)は23億人である。なお、2018年現在の世界人口は76億人だ。

選択肢で考えてみよう。ア.100~200万人 イ.500~600万人 ウ.1000~2000万人 エ.5000~6000万人 オ.1~2億人



第二次世界大戦による世界全体の死者は、軍人2305万人、民間人3158万人、計5400万人余りにのぼった。正解はエだ。(以下、日本以外の戦死者数はウッドラフ『概説現代世界の歴史』で引用するデータによる)

では、世界で最も多くの犠牲者を出した国はどこだったか?

それはソ連(今のロシアなど)だ。ソ連の戦死者は、軍人1360万人、民間人772万人。合計で2100万人を超える。1940年のソ連の人口は2億人だった。2100万人は総人口の1割強である。ソ連はおもにドイツと戦ったのだが、その戦い(独ソ戦)は、きわめて激しいものだったのである。戦争というよりも、まさに地獄だったといっていいだろう。

そしてドイツの犠牲者は、軍人400万人、民間310万人で、合計710万人。1936年のドイツの人口は6700万人。戦死者の割合は1割強で、ソ連とほぼ同程度だ。

日本では軍人・軍属230万人、民間人80万人が亡くなり、合計で310万人(厚労省のデータ)。1940年の日本の人口は7200万人である。

中国は、軍人132万人、民間1000万人。中国はおもに日本と戦い、ソ連に次ぐぼう大な死者を出した。第二次世界大戦当時の中国の人口については、よい統計がみあたらないが、1950年の人口は5億5000万人である。

こういう戦死者の数字は、諸説ある。国によっては統計の精度が低かったり、政治的なバイアスがかかっている場合もあるだろう。しかしいずれにせよ、最近の大災害やテロなどで目にする犠牲者を大きく超える、ケタはずれの悲惨な数字であることにかわりはない。

そしてこれは70~80年前の世界で現実に起こったことなのだ。ほんとうに、想像を超えたとんでもないことがあったのだと思う。

世界大戦があったことについて、私たちは子どもの頃からいろんな機会に聞かされてきたので、あたりまえになっている。しかし、もしもこの戦争について知識を得る機会のないまま成長した人間が、世界大戦についていきなり聞いたとしたら、どう思うだろうか? 簡単には消化できないのではないだろうか。「うそだろ?」「信じられない」という反応があってもおかしくない。

現に最近は「日本とアメリカって戦争したことがあるんですか?」などという若い人がいるらしい。その現場に立ち会ったことはないが、あり得る話だ。

今後、こういう無知な人は増えていくだろう。戦争を体験した世代や、その世代からじかに話を聞いた人たちがいなくなれば、戦争に関する記憶や知識は意識的に勉強しないと得られないものになる。学校の教科書にはもちろん書かれているだろうが、そんなものはいっさい読まない、授業もろくに聞かないという人は大勢いる。そして最近はテレビをみない人も増えているのだ。今でもたとえば「日露戦争」というものがあったことを知らない日本人は、若い世代ではかなりの割合でいるはずだ。

そして、教科書や本で戦争について読んだとしても、それだけでは抽象的で手ごたえが足りない。「あなたのひいおじいさんは戦争に行って…」「おばあさんは空襲で焼け出されて…」みたいな身近な人からのインプットは、知識にリアリティを与えるうえでやはり重要なのだ。しかし、戦争を体験した世代はこれからは本当にいなくなる。

あと何十年かのうちに日本や世界のかなりの人たちが、世界大戦というものがあったことを知らない世の中になるのではないか。戦争を経験していないとか、その悲惨さをわかっていないというのではなくて、それがあったこと自体を知らないのだ。

その先には、さらにおぞましいことが起きる。「世界大戦などというものはなかった」と主張する者たちが出てきて、それなりに影響力を持つようになるのだ。「進化論はまちがっている」とか、「ワクチンのような現代医療の多くが効果のない有害なものだ」といった主張の類のひとつとして「世界大戦はなかった」論が出てくる。

「世界大戦はなかった」論者は、たぶんこんなことを言うだろう。……そんな、何千万人もの死者が出るような大戦争があったなんて信じられますか?あり得ないでしょう。そんなことが本当にあったとしたら、すでに世界は滅びてますよ。あれは〇〇(←差別・攻撃の対象)がでっちあげたフェイクです!そのようなウソを人びとに信じこませて、自分たちの都合のよい方向に動かしているんです。戦争体験者へのインタビューとか、戦争のドキュメンタリー映像というのは、みんなCGです……

上記のような全否定の極論だけでなく、その被害や悲惨さを矮小化する主張ならば、もっと出てくるだろう。たとえば「5000万人も死んだなんてウソ。本当はヒトケタ少ない」みたいな。あるいは個別の事件・事実の否定がもっとさかんになる。すでに「ホロコーストはなかった」論というのがあるが、いつか「ヒロシマ、ナガサキはなかった」などという狂ったデマが力を持つかもしれない。

私は決してふざけているのではなく、そのようなことがほんとうに未来に起こりうるのではないかと真面目に心配しています。今のフェイクニュースだらけの世の中をみていると、そう思ってしまう。言われてみると「たしかにあり得るのでは」と、あなたも思いませんか? 

世界大戦についての記憶が失われ、「そんなものはなかった」などという大ウソが蔓延したら、世界大戦がくり返される危険はおおいに高くなってしまうだろう。重大な過ちについての教訓を失えば、失敗しやすくなるのは当然だ。

だからやっぱり、大人は子どもや若い人に戦争についての話をしよう(たいした知識などなくてもいいのだ。本記事の犠牲者数のことも素材になる)。勉強させよう。大人も少し勉強しよう。今のシーズンはいい機会だ。テレビで戦争体験を語る人たちが、本当に高齢な様子をみていると、そう思う。

***

世界史関連のさらに踏み込んだ内容の長文を載せる別ブログ「そういち総研」というのをやっていて、そこに第二次世界大戦の概要を私そういちがまとめた記事をのせています。ブログの記事としてはかなりの長文ですが、ヨーロッパの戦争と太平洋戦争の両方を視野に入れ、基本的事実を読みやすい文章で堅実にまとめたつもりです。1~2時間で初心者の人がかなりまとまった知識を得ることができます。夏休みの機会にぜひ。

初心者のための、一気に読める第二次世界大戦の要約←クリック

(以上)

関連記事