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2019年10月25日 (金) | Edit |
ギャラップ社の調査(2017年)によると、アメリカでは「神が人類を創造した」という創造論を信じる人の割合は38%である。進化ということを認めながらも「人類の進化には神の導きがある」とする人も38%。

そして、「神の導きなしに人類は進化した」という進化論を支持する人は20%である。

この数字は、三井誠『ルポ 人は科学が苦手』(光文社新書、2019年)で知った。アメリカでの「科学不信」の実態や背景について掘り下げた本だ。

アメリカでは、進化論者は2割しかいないのだ。「進化に神が関与」という人も含めれば5~6割。

そして4割弱の人は創造論者である。おそらくその大部分は聖書にある創造論、つまり6000年ほど前にさまざまな生物を含むこの世界が神によって創造されたという話を信じているのだ。アメリカでは授業で進化論とともに創造論を教える学校も少なくないという。

日本ではどうなのか? ネットで検索してみると、2006年の海外の研究者による調査で、進化論の支持率は8割ほどという数字があった。調査の信頼性がどの程度かはわからないし、上記のアメリカのデータとの比較がむずかしい面もある。だが、数字として「まあそんなところかな」という感じはする。

日本とアメリカの違いはどこから来るのか? アメリカではキリスト教がきわめて有力であること、個人の主義主張を大事にする精神や、権威や知識人への反発心が強いことなどが考えられる。

アメリカにおけるさまざまなカルト的な思想・運動について述べた、カート・アンダーセン『ファンタジーランド 狂気と幻想のアメリカ500年史(上・下)』(東洋経済新報社、2019)も、だいたいその立場だ。ただし同書では、もっと強く「狂気や幻想も含め何でもあり」というのがアメリカなのだと論じている。

上記の本で三井さんは、進化論のような「科学」を人が受け入れるのは、そんなに簡単ではないと述べている。人類の歴史の大部分は石器時代で、人間の脳や心は石器時代に基礎ができた。一方科学はつい最近に生まれた。だから本来石器時代的な人間の脳にとって、受け入れがたい面がある、というのだ。

「人が科学を受け入れるのは容易ではない」という点は、私もまさにそのとおりだと思う。しかし「現代人には石器時代の心が宿っている」とまでは言わなくもいいのではないか。そんなことをどうやって科学的に証明するのか。

それよりも「科学の理屈や説明には、日常的・常識的な感覚におおいに反するところがある」と言うべきだと思う。

「大地は平らではなく巨大な球体である」「太陽が地球のまわりをまわっているのではなく、地球は自転しながら太陽の周りをまわっている」「この世界や物体は真空と微細な粒子(原子)から成り立っている」「この世界の生命はすべて、単細胞の微生物が40億年ほどかけて進化・分化した結果生まれた」

たしかにこういう見解は、日常的な常識とは本来はかけ離れたものだ。大地は平らだと思うのが、普通の感覚だ。

だから「この説は科学という、権威のある真理なのですよ」と知識を押しつけたときに、それに反発する人や落ちこぼれてしまう人がいるのは当然なのだ。その困難を乗りこえるそれなりの教育的な方法というものは、やはり必要だ。「人は科学が苦手」という前提は大事なことだと思う。

しかし、科学の普及についての楽観的な見通しも、描けないわけではない。最初に述べたギャラップ社の調査をみると、1999年には「神の導きなしで人類は進化した」とする進化論者の割合は10%ほどだった。2017年にはそれが20%になった。

進化論者は、アメリカではまだ少数ではあるが、勢力を伸ばしつつあるようだ。最近は「科学不信が広まっている」ということがよく語られるが、そればかりではないように思う。

(以上)
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