FC2ブログ
2013年05月25日 (土) | Edit |
マスコミの仕事は,「人びとが社会についてより賢明に判断するために,情報や考え方を知らせる」ということでしょう。じっさい,マスコミはその役割をそれなりに果たしていると思います。

でもたまに「そのときどきの出来事に反応して,気分を煽るだけ」になってしまうこともあります。

「株式相場」とか「景気」にかんしては,とくにその面がつよいです。

たとえば,株価が低迷しているとき,マスコミはほとんど株のことを話題にしません。読者(視聴者)も見向きもしません。でも,株価が上がってくると,あちこちで特集が組まれます。読者も関心を持ってくれます。「今,株を買ったらいいですよ」という「イケイケ」のメッセージを,人びとはそこから受け取ります。
 
でも,「株価の安定性」という面からみると,相場が低迷しているときこそ,株を話題にして,相場に勢いがあるときには,もっと冷静な態度をとるほうがいいはずです。

「安定性」「安定的な変化」というのは,社会にとって重要です。「急激」な変化は,しばしば問題や副作用をひきおこします。

ところで,テレビの科学番組でみたのですが,ある種の向精神薬と,ある種の違法薬物は,「脳に作用して,効いているときの状態」が似ているのだそうです(分析の画像でみると,たしかに似ている)。

では何がちがうのか。「効く」速度がちがうのです。違法薬物は,急激に効いて,急激に消えていく。正しい薬は,もっとゆっくりと作用する。

物価だって,1~2年で2倍に上がったら,大問題になりますが,20年で2倍なら,むしろ「健全」といわれます。

マスコミはときどき,「急激な変化」に加担することがあります。たとえば「不安が不安を呼ぶ」ときの,「社会の気分の増幅装置」になってしまう。ほんとうは「安定化」に貢献しないといけない場面でも,そうなってしまう。

でも,最新のニュースを報道する以上,そうなりがちなのは,しかたがないともいえます。

たとえば,それまで何か月も上昇一本やりだった株式相場が,ある日急落した。その事実を1面で大きく報道することじたいが,「気分の増幅」につながります。どんなに淡々とした表現であっても,「不安」は伝わります。

だから,そこから先がマスコミ人の腕のみせどころなのでしょう。ことがらの背景にあるいろんな側面を,コンパクトにうまく伝えられるかどうか。むずかしいことだとは思いますが,それができたらみごとに「役割」を果たしたといえます。
 
***

きのう,駅のスタンドでいくつかの新聞(朝刊)を買って,読みくらべてみました。株価の急落をどう報じているか。こういうときは,「読みくらべる」いい機会だと思ったのです(ヒマ人ですね)。

23日の株式市場のことは,どの大新聞も1面トップでした。見出しを並べてみましょう。

【日本経済新聞】 過熱警戒で売り増幅 株急落,1143円安 一時的調整の声
【読売新聞】 株急落1143円安 史上11番目の下げ幅 金利上昇の悪影響懸念
【産経新聞】 東証急落1143円安 NY株乱高下 世界市場混乱 期待先行に水差す
【朝日新聞】 東証暴落1143円安 13年ぶりの下げ幅 円・金利も乱高下 アベノミクス危うさ露呈


読売と産経は,淡々とした,客観的「事実」中心の表現。そのぶん,記事を読むと,ややぼんやりした感じがします。

これに対し,あるメッセージを打ち出している新聞もあります。日経は「これは一時的な調整だ,景気失速ではない(はずだ)」。朝日は「ほら,アベノミクスはやっぱり危ない」。

日経は,「株式市場が盛り上がってほしい」というスタンスが明確な新聞です。そういう読者層の新聞なのです。だから「イケイケ」な気分を増幅するところがあります(ところで,株価に影響しない出来事には,日経は冷淡です。株価急落と同じ日の「80歳三浦さんエベレスト登頂」のニュースは,他紙では1面でしたが,日経では社会面の扱いなのです)。

朝日は,「株式市場」というのが,キライなのでしょう。そういえば,今回の株価の急落を「暴落」と表現したのは,このなかでは朝日だけです。

記事全体をだいたい読んだのですが,今回については,朝日新聞は,事件に反応して「不安」「不信」を煽ることをしている,と感じました。そのように「〈警鐘をならすこと〉こそがマスコミの仕事だ」と思っている人が,紙面をつくっていると。それが見出しにあらわれているわけです。
 
いつも朝日がそうだということではないでしょう。別の場面では別のマスコミが,同じような「増幅」をしていることもあるはずです。気をつけたいものです。

(以上)
  
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック