FC2ブログ
2013年07月05日 (金) | Edit |
 「自分で考えるための勉強法」シリーズの第32回。
 最近は,読書論をやっています。
 本と出会う代表的な場所には,書店と図書館があります。それをどう使いこなすか。
 

本は買おう。でも図書館も使おう。

 図書館は,お金が足りない人の読書を支えてくれます。
 でも,本はできるかぎり買うことをおすすめします。
 あたり前のことですが,図書館の本は返さないといけません。返してしまえば,あとでふと思いついたときに,手に取ることはできなくなります。

 これは,読書の初心者が思う以上に大きなデメリットなのです。

 何かを考えたり,書いたりしているとき,「あの本にこういうことが書いてあった」というのを読み返したくなることがあります。
 具体的な知識を確認したいときもありますが,何となく思い出して「もう一度読みたい」ということも多いです。前に読んだときには重要と思えなかったような本でも,そういうことがあります。

 あるいは,自分の本棚に並んでいる一冊がふと目にとまって,手に取ることがあります。そして,ふと開いたページを読んでいると,新たな発見があったりします。
 ときには,「今自分が求めていたのは,これだ!」などということもあるのです。

 こういうことは,読書の大事な楽しみです。
 このように「ふと読み返す」ことをくり返していくうちに,読書を通じての自分の世界ができていくのです。

 でも,図書館に返してしまった本は,ふと読みかえすことができません。だから,お金が許すなら,本は買うべきです。そして,自分の蔵書として蓄積していくのです。

 蔵書の蓄積とは,「ふと読み返して,何かを発見する可能性」を蓄積することなのです。

 「本は買うべきだ」という読書論に初めて触れたのは,大学生のときでした。
 教育学者の板倉聖宣さんが述べていたほか,英語学者・評論家の渡部昇一さんが『知的生活の方法』(講談社現代新書 一九七六)という本で強調していました。

 最初は「そんなものかなあ」という感じでしたが,あとで大事なことだとわかってきました。

 ***

 しかし,多くの人にとって,本代に使えるお金には限りがあります。だから,その限界を補う手段として図書館を使おう,ということです。

 つまり,本屋さんをぶらぶらしたり,読書したりする中で「気になる」「読んでみたい」と思った本を全部買うわけにはいきません。買う本は選ぶ必要があります。
 それを見出すための,「本との出会いの場」のひとつとして図書館を使うのです。

 たとえば,気になる本があるけどかなり高価で,その中身がどうだかわからない,ということがあります。
 
 それには,タイトルや紹介だけで現物を見ていないときもあれば,本屋でちょっと立ち読みしたけど,それでは判断がつかないというときもあります。そういう本を図書館で借りれば,家に持ち帰ってじっくり検討できます。

 すると,「あまりよくない」ということもあれば,「いい本だ,欲しい」と思うこともある。
 後者であれば,フトコロ具合が許すときに買います。

 「一度読んだ本を買うの?」と思うかもしれません。しかし,「借りて読んだ本で,いいのがあったら買う」というのが大事なのです。
 
 世の中には,「図書館はあまり使わない」という読書家も少なくありません。
 前に述べた「蔵書の蓄積」の重要性ということがあるからです。私も「本は買うべきだ」ということに異論はありません。しかし場面によっては,図書館を使っていけばいいと思います。

 図書館を使うことで,本と出会う機会が増えます。

 今述べた「気になる未知の本」の中身をじっくり確かめるのに使える,ということもあります。それから,図書館をぶらぶらして,ふと目にとまった本を手にとってみる,ということも重要です。

 図書館に並んでいる本は,新刊書店とは傾向がちがいます。「最新」よりちょっと古く,いろんなものを分け隔てなく並べるランダムな感じ――それが図書館の蔵書の特徴です。

 だから図書館では,「少し前に出たいい本で,見逃していた」というものを発見することがあります。

 大書店でもあまりみかけないような専門書で,「これは」という本をみつけることもあります。
 「こんな本があったのか」というようなマニアックな本が,ベストセラーのすぐ横に並んでいたりもします。

 図書館の本はタダで貸してくれるので,ちょっと気になったら,気軽に持ち帰って読むことができます。そして,そうやってみつけた本を「欲しい」と思ったら,本屋さんに注文して買うこともできるのです。

 本は買いましょう。でも,図書館を使わないのはもったいないです。図書館を使うことで,あなたが本と出会う機会はぐっと広がるのです。

(以上,つづく)
関連記事
テーマ:読書メモ
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
私の住んでる市の図書館は県内の図書館からしか無料で取り寄せてくれません。県外だと一冊1000円利用者負担ですって。しかも発行から3年たった本、専門書、漫画、3000円以上の本は買ってくれないんです。

ベストセラー文芸書読んだり子供の絵本借りたりするぶんにはとっても便利でありがたく使ってるんですが・・・。

古い本、高い本、専門書がなくて民主主義の砦と言えるのか?ちょっと疑問です。
図書回転率で図書館を評価するのがよくないと思います。

私も図書館で出会って、本屋さんで文庫化してるのに再会した時、買うかどうか悩むことにしてます。小説かエッセイばっかりですが。
金がもったいないのと、本棚には気に入った本だけ並べていたい気持ちの半々です。

仕事しないと夫に気兼ねなく本が買えないし、
仕事するとゆっくり本読む時間がなくなる。
貧しい本好きのジレンマです。


2013/11/12(Tue) 21:10 | URL  | ピピネラ #eR1ha.nA[ 編集]
ピピネラさんへ
 コメント,ありがとうございます。
 「県立中央図書館」から取り寄せるということだと,板倉聖宣の本はかなりの確率であるのでは?
 都道府県レベルの中央図書館だと数十万冊から100数十万冊の本があるので,かなりいろんなものがあるのです。近所の図書館を窓口にして,そこにある本をリクエストして借りることができます。
 もちろん,市内の図書館になければ,まず近隣の市の図書館にないかを市内の図書館に検索してもらい,それでなければ県立中央にないか…という順になります。

 ただ,おっしゃっているのは,県立中央図書館も含め,県内の図書館にはなかった,ということでしょうか?

 あるいは,私は東京ですが,県によっては中央図書館からの取り寄せはできないということなのか…

 あとは,アマゾンの中古ですね。中途半端に古い本というのは,ときどき二束三文(100円とか200~300円とか)で売られています。でも,今アマゾンをみたら『社会の法則と民主主義』は,500円台(送料別)の中古しかなかったですね…送料も入れると700~800円になってしまう…

 まあ,いろいろ制約はありますが,図書館はやはり使いでのあるものだと思います。
 ただ,最近は利用率が下がっていて,各自治体で図書館への予算が減っているとか。

 図書館と,二束三文の古本(1冊50円とか100円とか,せいぜい300~400円くらいまでの古本)は,お金がない読書好きにとって大事です。私も失業していたころは,それらをかなり使いました。
 
2013/11/12(Tue) 21:50 | URL  | そういち #-[ 編集]
そうなんです。調べてもらったけど、「歴史の見方考え方」は県内に一冊もないんですって!
板倉さんの他の著作が他の図書館にあるかもしれないけど・・・
県立中央なら購入図書の基準が違うかもしれないからリクエストしてみて、ダメならアマゾンですね。

やっぱり地方と都市では未だ情報格差がありますね。
お金さえ出せばいいんですけど。
そしたら貧富の差になっちゃう。

グチってすみません。
なんか、図書館ってもっとスゴイと思ってたんです。

アマゾンで買って読み終わったら図書館に寄付したら私も他の人も他の人も読めますね。
あれ?本末転倒?

2013/11/13(Wed) 09:04 | URL  | ピピネラ #eR1ha.nA[ 編集]
Re: タイトルなし
 そうですかー,県内の公共図書館に『歴史の見方考え方』がない……まあ「知る人ぞ知る」というところはありますが,これまでに何万部か出ていて,息長く読まれている本なのですが……

 でも,公共図書館におおいに限界がある,というのもたしかにそうですね。
 だから,ささやかであっても(ほんの何十冊であっても),「自分の蔵書」を持つというのは,知的な面での自分の世界をつくる上で意味があるのでしょう……読みたい本が図書館でもなかなかみつからないのであれば,自分で持っているしかないわけですし。

 そういえば,ほとんど蔵書を持たず,もっぱら図書館の本の読書だけで,著名な思想家・知識人になった人がいます。エリック・ホッファー(1902~83)という人です。このブログの「自分で考えるための勉強法」のカテゴリーの「二人の極端な独学者 三浦つとむとエリック・ホッファー(1,2)」という記事でも紹介しました。気が向いたら,ご一読いただければ。
 ホッファーみたいな人が生まれるのは,アメリカの公共図書館が充実している(していた?)からではないかと思います。日本では,アメリカほどのレベルに達しないうちに,公共図書館は衰退期に入ってしまったようにも思えます。
 
2013/11/13(Wed) 22:07 | URL  | そういち #-[ 編集]
こうなったら電子書籍に頑張ってもらうしかないですね!
読める本が増えて、読む機械がもうちょっと安くなればなぁ・・・。

「近代社会の考え方」があったので借りてみました。
まだはじめのほうしか読んでないけど、文章から受ける印象が、そういちさんそのもの!
私の思う理想の先生像ってこういう感じです。
2013/11/15(Fri) 09:08 | URL  | ピピネラ #eR1ha.nA[ 編集]
ピピネラさんへ
 コメント,ありがとうございます。
 私も,電子書籍はこれからもっと発達していったらいいな,と思います。そのことによって,安くいろんな本を読めるようになるといいですね……

 板倉さんの本,手にとって読まれたのですね。
 本のタイトルは,おそらく『近現代史の考え方』(仮説社,1996)です。
 この本は「近代社会」を考えるうえで,じつにいいと思います。
 「文章から受ける印象が…」の部分は,なんというか順序が逆で,私が板倉さんの影響を受けているわけです……まさに「先生」というに値するすばらしい著者だと思います。ぜひ読んでみてください。
2013/11/15(Fri) 22:07 | URL  | そういち #-[ 編集]
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック