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2013年07月07日 (日) | Edit |
 今朝(7月7日)の日経新聞の一面に,こんな告知がありました。

 日経「星新一賞」
 想像力に富んだ物語募集


 日本経済新聞社は文芸賞,日経「星新一賞」を新設します。星新一氏が残した自由な発想の作品は現実の科学を刺激し,未来を切り開いてきました。形式やジャンルにとらわれない理系的な発想力,想像力に富んだ物語を募集します。


 公募で「1万文字」以内の短編を募集。ジュニア部門もある。団体でも応募可。
 さらに「人工知能」といったプログラムソフトでつくった作品も応募可,というのも話題になっています(最近はそういうソフトも研究されているそうです)。
 応募期間は今年7月から10月。審査発表は来年3月。

 日本の科学を(ひいては産業・経済の発展も)刺激したいという趣旨が,日経らしい。

 そういえば,「星新一賞」っていうのは,まだなかったんですね。

 星新一は,いわゆる「文壇」での評価は高くありませんでした。いや,SFファンのあいだでも,ある時期からは「SFの入門編」扱いで,「主流」からは外れた感じになっていました。
 最相葉月(さいしょうはづき)著『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮文庫,上・下)などによれば,そういうことらしいです。

星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)星新一〈上〉―一〇〇一話をつくった人 (新潮文庫)
(2010/03/26)
最相 葉月

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 でも最近は,再評価されているようです。
 今述べた,最相さんの「星についての初の本格的な伝記」といった仕事(単行本が2007年刊)も,その動きをリードしたといえるでしょう。

 まあ,「再評価」というよりも,「新しい権威・古典」になった,といったほうがいいかもしれません。
 すでに相当な権威でしたが,さらに「格」があがったという感じ。

 「新しい権威・古典」は,世代交代によって生まれます。

 つまり,星新一を少年少女時代に読んで育った世代が,中高年になって偉くなってきたということ。

 星の本(『ボッコちゃん』など)が,中高生に人気を博し,ベストセラーになったのは1970年代からのこと。
 星の活躍は1950年代末からですが,初期の読者は大人,とくにSFファンが中心でした。途中からそのような読者が離れていって,文学やSFに特別な興味があるわけではない若い読者に読まれるようになっていきます(さきほどの,最相『星新一』などによる)。

 だから「星新一世代」というのは,一番上の年齢層で,60歳前後(40数年前の高校生)ということです。メインは40~50代でしょうか。私もこの世代ですし,星新一を中高生のときに読みました(この数年で,また読み返してます)。

 その「星新一世代」が若いころは,「あんなのは,子どもの読み物だ」という人たちが上で威張っていました。
 でも,そんな旧世代がいた席に,最近は「星新一世代」が座るようになった。
 そして,自分が若いころに影響を受けたものを,「権威」として評価しようとするようになる。

 そんなふうにして,かつての「サブカルチャー」が,「新しい古典」として殿堂入りしていく。
 こういうことは,社会のあちこちで起こっている。
 そして,そのことは「前向きにとらえていい」と思ってます。

                      *

 前置きが長くなりましたが,そういうわけで,星新一の「四百文字の偉人伝」を。
 400文字前後で古今東西のさまざまな偉人を紹介するシリーズ。


星 新一(ほし・しんいち)

発刊済みの本を手直しし続けた

 作家・星新一(1926~1997)は,SFを中心に1000余りの短編を残しました。彼の本の発行部数の累計は,何千万部にもなります。多くの人に読まれた作家でした。
 彼の作品の多くは,子どもでも楽しめる読みやすいものです。そのように書くのは,じつはむずかしいことです。
 しかし,世の中には「子どもが読めるようでは低級だ」と思う人がいます。そのためか星の仕事は,文学賞にはあまり縁がありませんでした。
 それを,星は残念に思っていたかもしれません。
 でもそれ以上に,「多くの人が読んでくれる」ことによろこびやプライドを感じていました。
 だからこそ晩年は,過去の作品を推敲して,「今の子どもが読みにくい,古びた表現を直す」ことに熱心でした。「ダイヤルを回す」を「電話をかける」に直したりしたのです。彼ほど発刊済みの本を手直しする作家はいませんでした。
 彼の「大衆に尽くそう」とするサービス精神と,「後世に作品を残したい」という執念を感じます。

最相葉月著『星新一 一〇〇一話をつくった人』(新潮社,2007)による。

【星 新一】
 昭和の戦後に活躍した作家。日本のSF(空想科学小説)の開拓者の1人。「ショートショート」といわれる超短編の傑作を数多く残した。作品集に『ボッコちゃん』など。
1926年(大正15)9月6日生まれ 1997年(平成9)12月30日没 

 「四百文字の偉人伝」は,古今東西のさまざまな偉人を,400文字ほどで紹介するシリーズ。このブログでときどき載せています。(カテゴリー:四百文字の偉人伝
 その101話をまとめた電子書籍『四百文字の偉人伝』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も発売中です(アマゾンKindleストア楽天Kobo,ディスカヴァー社のホームページにて販売,400円)


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(以上)
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テーマ:創造と表現
ジャンル:学問・文化・芸術
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