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2013年07月11日 (木) | Edit |
 前回の 「ねじれ国会」って? の続き的な記事。

 今回の参院選では,「憲法改正」の問題も論点のひとつです。
 安倍総理は,つぎのようなことを言っています。

「憲法の改正について定めた憲法第96条では,憲法改正を発議するには衆参両院でそれぞれの総議員の3分の2以上の多数が必要だとしている。これを衆参両院それぞれの過半数で発議できる,ということに変えよう。つまり,憲法第96条を改正しよう」
 
 憲法改正は,国会が「発議」するだけでは決まりません。
 この発議にもとづき,国民投票にかけられます。そしてこの投票で過半数を得ることが,憲法改正には必要です。

 それにしても,今の憲法では「憲法改正」は,ものすごくハードルが高いです。

 改正を国民投票にかけるための「発議」のところで,衆参両院の(総議員の)3分の2が必要。
 戦後,与党(首相を出している党派,政権党)が衆参両院の3分の2以上をおさえたことはありません。
 衆議院だけなら,今も含め2度ほどありますが。

 そして,もし「発議」できても,国民投票での過半数というのも大変です。
 
 憲法改正という大問題で,私たちは「改正」のほうに過半数を投じるでしょうか?
 その「改正」の中身がなんであれ,です。
 なかなか難しそうですね…
 「何かを大きく変える決断」というのが,どうも私たちは苦手だと思います…

 だから,もしも憲法第96条が改正されたとしても,政府・与党が好き勝手に憲法改正できるわけではないでしょう。
                        *

 では,憲法第96条を改正したとして,安倍さんはどうしたいのでしょうか?

 それは,おそらく憲法第9条の改正ですね。

 この議論は,多くの人がイメージできると思いますので,立ち入りません。
 でも,9条の改正を国民投票にかけたとしても,過半数を得るのはたいへんでしょう。とくに議論や反対の多いことなのですから。

 しかし,「憲法改正」の議論の対象は,9条だけではありません。

 法律案の決議について衆議院と参議院の関係を定めた,憲法第59条というのがあります。
 これは,つぎのことを定めています。

 ①法律案は,原則として衆参両院で可決することによって成立する。

 ②ただし,衆議院で可決された法律案を参議院で否決した場合,この法案を成立させるには衆議院の3分の2以上で再可決することが必要。


 こういうルールにすると,与党(政権党)が衆参両院で過半数を押さえている場合はいいのですが,参議院で過半数を押さえていない「ねじれ国会」のときには,ややこしいことになります。
 法律案を成立させるのが,非常に大変になる。
 つまり,国の政治の大事な決定がむずかしくなる,ということです。

 このことは,前回の記事(「ねじれ国会」って?)で述べました。

 この憲法第59条(2項)は,日本国憲法のなかで,かなり重大な「問題」といえるでしょう。
 「設計ミス」に近い,といってもいいかもしれません。
 
 いや,そうではない,それだけ慎重に国の方針が議論されることになる。政府の暴走が防げる。だからこれでいいんだ,という意見もあるかもしれません。
 でも私は,「今のままだと,〈政府がものを決められない〉という弊害のほうが大きい」という見解に賛成です。

 「憲法改正」というとき,じつはまず議論されるべきなのは,第9条のことではなく,第59条のほうではないかと思います。そして,そういうことをいう識者・専門家は,最近はけっこういます。

 そして,第59条改正のほうであれば,9条の問題よりは,国民のコンセンサスを得やすいかもしれません。
 でも,「内容・主旨を理解してもらう」ための説明は,かなりたいへんそうです。
 制度の内容とか,ちょっとややこしいところがあります(それほどでもないかもしれませんが)。

 でも,憲法第59条の改正の議論は,今度の選挙で下火になる可能性も高いです。

 59条の「欠陥」は,「ねじれ国会」のときにあらわれますが,今度の選挙では,おそらく自民・公明が勝利して「ねじれ」が解消されるからです。「欠陥」が覆いかくされてしまうのです。
                        *

 それから,「憲法改正」ということ自体,今度の選挙で現実味が薄くなるはずです。

 「改憲」派である日本維新の会やみんなの党が躍進して,参議院で勢力をのばせば,「改憲」勢力が,自民・公明とあわせて参議院でも3分の2を制することになるかもしれない。でも,維新の会の勢いがなくなってきたので,その可能性は低くなっています。

 でも,そうやって議論が先送りになるのは,どうかとも思います。

 長年にわたり,まったく改正されてこなかった日本国憲法。
 部分的に,今の現実にあわせてリフォームしていくべきところがあるのでは,と考えてもいいでしょう。
 ほかの先進国では,憲法は相当に改正されているのですから(このことは,最近はかなり知られるようになりました)。
 すくなくとも,一定の議論はなされていいはず。
 学者や評論家の議論ではなく,政治家・政党による具体的な検討として,です。

 今度の参院選のあとは,たぶん国政選挙は3年間ないでしょう。
 その間に,憲法の問題もじっくり議論されていいのでは?
 まあ,まずは経済の問題が大事ですが,「憲法という,国の基本設計図をどうするか」といった問題も,放ってはおけないはずです。(経済が悪化して「それどころではない」なんてことにならないよう,祈ってます)

 以上,よくある内容の解説だとは思います。意見としても,特別なものではないです。日経新聞(7月1日)の,政治学者・北岡伸一さんによる論説などをもとに,少しやわらかく書きなおした,といったところ。

 これも「こっそり知ろう,常識は」ということで。

(以上)
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