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2013年12月09日 (月) | Edit |
 「自分で考える勉強法」シリーズの67回目。
 11月3日の記事にある新刊の電子書籍『自分で考えるための勉強法』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)も,ぜひよろしくお願いします。

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(2013/11/01)
秋田総一郎

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 このところ,「勉強のための生活論,組織論」について述べています。
 勉強するための「時間」「場所」「人のつながり」といったことです。細かなノウハウではなく,ざっくりとした基本的な考え方。今回は,進化論のダーウィンという偉人を通して「人とのつながり」のことを述べています。


ひとりでやっているようにみえる人も,
じつはひとりではない。


 ひとりの時間をつくることは,知的創造にとって欠かせません。でもそれは,人とのつながりを絶って孤立することとはちがいます。
 歴史上の天才には,孤立してひとりでやっているようにみえる人がいます。進化論を唱えたチャールズ・ダーウィン(1809~1882,英)も,そうでした。

 ダーウィンは,大学などの機関に属さず,個人で研究しました。彼はお金持ちだったので,自由な時間や研究資金には苦労しませんでした。ロンドン郊外にある自分の屋敷を研究所にしていました。

 ただ,神経症的な病気をわずらっていたので(何の病気かはよくわかっていない),外出したり人に会ったりすることが,あまりできませんでした。若いときは元気だったのですが,30代以降そうなります。それで,彼は大部分の時間を,屋敷に閉じこもって暮らしました。

 そこで,彼に関心を持つ人たちの間では,「ダーウィンは,孤立した天才」というイメージがありました。
 しかし,彼のことを研究した結果,そのイメージは修正されるべきだということがわかっています(ピーター・J・ボウラー『チャールズ・ダーウィン 生涯・学説・その影響』朝日新聞社 1997)。

 ダーウィンは,あちこち出かけたり人に会ったりすることはあまりできませんでしたが,いろんな人にたくさんの手紙を書いていました。そうして,屋敷にいながら多くの科学者と交流して,進化論の研究を進めたのです。

 当時の手紙=郵便というのは,今で言えばインターネットのような,最新の通信手段でした。ダーウィンが活動するころから,イギリスでは郵便制度の改革によって,それまで高価だった郵便料金が,多くの人にも利用可能な値段になりました。

 ダーウィンは,郵便という最新の手段をフルに活用して,いろんな人と交流していたのです。

 そして,信用できる,共感してもらえると思った人にだけ,まだ公表していない自分の進化論について伝えました。そうやって,自分の考えを支持する専門家のグループを,ひっそりと組織していったのです。

 ダーウィンの進化論は当時,「神の否定」につながる危険思想でした。
 それを自覚していたダーウィンは,「何の戦略もなしに自分の理論を公表したら,つぶされてしまう」と思いました。そこで,自分を支持する専門家グループ=学派を組織し,その助けを借りて,つぶされることなく自分の考えを社会に広めていこうとしたのです。

 彼が進化論について初めて着想したのは30代前半のことですが,それを『種の起原』などの著作で公表するまで,20年近くかけて準備しています。その間,自分の学説を構築することと平行して,仲間の輪を広げていったわけです。

 その戦略は当たりでした。彼の学説は,多くの支持や反響を得ることに成功します。

 彼の進化論を社会に普及する活動を直接行ったのは,ダーウィン自身ではなく,彼を支持する科学者たちでした。講演や反対者との論争は,ダーウィンの支持者のハックスリーという科学者が中心になってやっていました。

 進化論を発表して有名になってからも,ダーウィンは屋敷にこもったままでしたが,旧来の仲間とのつきあいを大事に守っていきました。

 ダーウィンのような,半病人で家にこもりがちの学者でさえ,孤立しないようにいろいろ努力しています。ひとりでやっているようにみえる人も,じつはひとりではありません。孤立からは,何も生まれないのです。

(以上)
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テーマ:勉強
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
一人では何もできない。自分にとって必要な仲間をもつことだ。
なるほどと思いました。その仕事が画期的であればあるほど丁寧な仲間つくりが大切だと教えられた気がします。
ダーウインなかなかやりますね。家にこもってもできるなんてすごいです。
2013/12/09(Mon) 21:43 | URL  | かずゆき #-[ 編集]
かずゆきさんへ
 コメント,ありがとうございます。
 たしかに,ダーウィン,やりますよね。「画期的な仕事であればあるほど丁寧な仲間づくりが必要」というのは,おっしゃる通りだと思います。
 ただ「1人では何もできない」ということはどうなのか…と,私は思います。1人でもできることはたくさんあります。ダーウィンだって,仕事の核心の部分である「研究・執筆」のところは基本的には1人で進めたのです。
 もちろん,「1人でできることには限界がある」というのなら,まったくそのとおりだと思います。
 そして,「仲間は必要だが,仲間がいないから何もできないというのではなく,自分でできることをまず進めて,状況に応じてしだいに仲間をつくっていけばよい」と考えればいいとも思います。ダーウィンも,そういうことを行ったのだと,私はとらえています。
 こんなことを考えたのも,かずゆきさんのコメントのおかげです。感謝です。
 
2013/12/09(Mon) 22:05 | URL  | そういち #-[ 編集]
一人で本読んで勉強することもできるけど、読書だって、書いた人との時間を超えた交流ですから、やっぱり一人でできることは限られていると思います。
でもそれとは別に、リアルタイムでの交流もあるとよりよいですね!
おんなじ今を生きてる相手ならではの共感ってあると思うし、壁当てよりキャッチボールのほうが楽しいですもん。
2013/12/13(Fri) 17:45 | URL  | ピピネラ #eR1ha.nA[ 編集]
ピピネラさんへ
 コメントありがとうございます。
 たしかに,まず大切にすべきは仲間を作ることだと思います。だからこそ,この勉強法のシリーズでも「孤立からは何も生まれない」といったことを述べています。今回の記事の「ひとりでやっているようにみえても,実は…」という話もそう。リアルタイムの交流,そしてじかに会ってお話しするような交流はほんとうに楽しいし,意義があります。まず,それは基本だと思います。

 しかし一方で,「ひとりにならないと,人はじっくりは考えられかったり,まとまったアウトプットができなかったりする」という側面もあると思っています。

 「ひとりでは考えられない,でも,ひとりにならないと考えられない」……なんだか矛盾した話です。
 しかし「矛盾」したそのあり方にこそ,「ほんとうのところ」があるのではないかと思っています。ものごとには本来矛盾したところがあるものではないかと。

 勉強において,仲間と交流する楽しさを知った人の場合には(そうでない人は,まず交流することを知ったらいいと思う),その一方で「ひとりで行えること」の意味も考えてみるとよいのでは……なんだか抽象的な話になってしまいましたが……
 
2013/12/14(Sat) 14:35 | URL  | そういち #-[ 編集]
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