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2014年01月08日 (水) | Edit |
 先日(1月5日),アンパンマンの作者・やなせたかしを描いたNHKスペシャルを観ました(「みんなの夢まもるため~やなせたかし・アンパンマン人生」,やなせは去年の10月に94歳で亡くなった)。

 番組で強調していたのは,「戦争体験に基づいて,やなせがアンパンマンにこめた想いやメッセージ」といったことでした。
 しかし,私にとってそれ以上に印象的だったのは,「アンパンマンというキャラクターが形になっていったプロセス」でした。

 アンパンマンが大ヒットしたのは,1980年代末にテレビシリーズが放映されてから。
 しかし,アンパンマンの原型は,1969年にすでに生まれていたのだそうです。ただし,そこに出てくる「アンパンマン」は,ふつうの人間がアンパンマン的扮装をしているというもの。内容も大人向けでした。

 その後1970年代初頭に,「顔が食べられるアンパンマン」が登場します。今度は,子ども向けの作品です。しかし,6~7頭身のすらっとしたプロポーションで,現在のアンパンマンとはかなり異なります。

 つまり,アンパンマンというキャラは,作者が長い時間をかけ,何度もつくりなおしていくことで,今のかたちになったのです。そして,そのことによって「大ヒット」となりました。
 1969年や1970年代初頭のバージョンで止まっていたら,「アンパンマン」という作品は,ほとんど知られることなく終わったはずです。

 ***

 チャールズ・イームズというデザイナーは 「過去の仕事にあらためて取り組み,再検討する大切さ」ということを何度も語ったそうです。

 たしかにこれは大切なことなのでしょう。
 アンパンマンだって,「1969年のアンパンマン」という「過去の仕事の再検討」から生まれたのですから。

 イームズは,イスなどの家具や建築や映像表現で,数々の名作を生み出しました。

 たとえばイームズの映像作品の代表作に「パワーズ・オブ・テン」という短編科学映画があります。
 映画の内容そのものにはここでは立ち入りませんが,この映画も「過去の仕事の再検討」から生まれた名作です。
 
 この映画には3つのバージョンがあります。最初のバージョンは1~2分の「試作版」で,1963年製作。その後1968年に,より本格的なモノクロ版がつくられ,1977年にはカラー版(上映時間9分ほど)がつくられました。
 このうち,1977年のカラー版は,最も完成度が高く,(映像に関心のある人たちのあいだで)名作中の名作とされています。1977年版がつくられなかったら,「パワーズ・オブ・テン」という作品は,ここまで名を残さなかったでしょう。

 イスのデザインでも,イームズは「過去の仕事の再検討」によって,作品を生み出しました。

 たとえば,1950年代初頭につくられた,「プラスチック・チェア」という彼の代表作があります。このイスは背もたれと座面が一体化しているのが特徴ですが,そのコンセプトに基づくイス(木製)を,イームズは1930年代末にすでに試作しています。

 ただし,技術的にもデザイン的にもまだまだ発展途上のものでした。それが「完成」の域に達したのが「プラスチック・チェア」だった,と専門家は評価しています。

 「過去の仕事の再検討」は,別のいい方をすると,「焼き直し」です。
 「焼き直し」は,一般にはあまり評価されません。
 それよりも,「新しいこと,未知のことにどんどん挑戦していく」のが,「創造的」とされるのでしょう。

 でも,じつは「焼き直し=過去の仕事の再検討」は,創造の大切な手段のようです。それは,発展途上のアイデアを,完成させていくことなのです。

 ***

 私の今年の目標は,「去年(かそれ以前に)取り組んだ仕事を再検討して,より完成させたり,新しいバージョンをつくったりすること」です。

 たとえば,去年このブログにも載せた世界史関連の文章を改訂する。
 去年の末につくった「そういちカレンダー」の新しいバージョン(2015年版)をつくる。
 去年はじめたこのブログを,いろいろ微調整や改良をしながら,続けていく。
 このほか,「やりかけ」になっているものを,ひとつでも完成させる。
 
 まったく新しいこと・未知のことをしようというのではないのです。

 でも,なんだかわくわくしてきます。「過去の仕事にあらためて取り組む」ことを,私はたのしみにしています。かなり「ぜいたく」なたのしみだと思っています。

(以上)
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ジャンル:学問・文化・芸術
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