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2014年01月19日 (日) | Edit |
「総買い物額」の内訳

みんなの買い物の「みんな」とは?

 これまでに「GDPとはみんなの買い物の総額である」「日本の1人あたりのGDPは370万円(400万円弱)である」ということを述べました。

 それに対しこんな疑問を抱く人もいます。「1人あたり370万円ということは,4人家族だと1500万円。ほんとにそんなに買い物するの?」

 じつは,まだ大事なことを説明していませんでした。それは,「みんなの買い物」というときの「みんな」というのは,私たち1人1人のような「個人」だけではない,ということです。

 経済において「買い物をする存在」は,大きく分けてつぎの3つがあります。

 ①個人(家計)  ②企業  ③政府(国や自治体)

 この「買い物をする存在」のことを「経済(の)主体」といいます。「経済における行動の担い手」ということです。

 企業というのは,製品やサービスをつくったり売ったりするのが仕事ですが,その仕事をするためにパソコンを買ったり,本社のビルを買ったり,工場を建てたり機械を買ったり,いろんな「買い物」をしています。

 政府も同じことです。役所にある机もパソコンも,買ってきたものです。道路をつくったり,学校や病院を建てたりといった公共事業は,政府の大きな「買い物」といえるでしょう。

 「個人」は経済学では「家計」といいますが,とっつきにくい言い方なので,この本では「個人」にします。
また,ここで「企業」というのは,純粋な民間企業だけでなく,政府や自治体の経営する公営の企業もふくみます。

 ここまでをまとめると,こういう「公式」になります。

日本の総買い物額
 GDP = 個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物


 「その国の経済は,個人と企業と政府の買い物が合わさってできている」といってもいいです。
「買い物額が1人平均年間370万円というのは多すぎるのでは?」と思った方は,たしかにそのとおりで,この「370万円」には,企業や政府の分もふくまれていたのです。だから,「個人の買い物の1人あたり平均」は,370万円よりは少ないです。


主体別の内訳

 では,日本の総買い物額=GDPに占める「個人」「企業」「政府」のそれぞれの割合は,どうなのでしょうか?

【問題】
現在の日本のGDPで,最も多くの割合を占めているのは,つぎのうちのどれだと思いますか? 

予想
ア.個人による買い物
イ.企業による買い物
ウ.政府による買い物


***


 つぎの帯グラフは,今の日本のGDP=総買い物額の内訳です。個人による買い物がGDP全体の60%を占めています。GDPの最も多くの部分は,私たち個人の買い物が占めているのです。

GDP内訳

 ここでいう「個人の買い物」には,「個人消費」と「住宅の購入」があります。住宅の購入は,統計のうえでは,日常的な買い物である「消費」と区別するのです。ただ,住宅購入の額は,個人消費よりずっと少ない(20分の1ほど)ので,個人の買い物≒個人消費と言っていいです。

 日本の1年間の個人消費(+住宅購入)の総額は,286兆円。1人あたりだと,286兆円÷1億2800万人≒220万円。
 これが「個人の年間の買い物額の平均」なら,多くの人の生活感覚ともそんなにズレていないのではないでしょうか。

 なお,個人,企業,政府の買い物のほかに「非営利団体」による買い物もあります。「非営利団体」とは,病院,学校,宗教法人などです。また,GDPには「純輸出」という項目もあります。年間の輸出額から輸入額を引いたものですが,これは別のところでまた説明します。


国の経済の内訳を知る

 前にも述べたように,「景気がいい・悪い」というのは,「みんなの買い物額=GDPが増える傾向にあるか,減る傾向にあるか」ということです。

 そして,GDPの最も大きな部分は,個人の買い物(「個人消費」というのと,ほぼイコール)なのです。だから,景気がよくなる・悪くなるということに対して,私たち個人の動きは,きわめて大きな影響をあたえるということです。

とにかく,この「公式」は重要です。

 GDP = 個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物

 こういう内訳を知るのが重要なのは,国の経済がどういう要素で成り立っているかを知ることだからです。それは,景気低迷などの問題があるときに,どこに原因があるのか,どういう対策をとるべきか,といったことを考える入り口になります。

 会社の経営でも,会社全体の数字だけでなく各部門別の売上などの数字をみて,どの部分に問題があるのかを把握しようとします。それと同じようなことです。

(以上)
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コメント
この記事へのコメント
GDP=国民の買い物総額=収入総額っていうふうに、昨日は納得したんですが、国内で売り買いしてる場合は買い物額=収入だけど、外国のものを買った場合はどうなりますか?
以下の場合はGDPにふくみますか?

①個人が海外旅行先でお土産を買う
②企業が自社製品の材料を買う
③国家が外国の国債を買う
④国内で外国の会社の商品を買う
⑤ネットで個人輸入
⑥思いやり予算
⑦政府開発援助
⑧国内にいる外国人の買い物

収入とすると、国内にいる外国人の収入はどうなるのでしょう?

国内総生産って言うときもありますが、生産したけど売れなかったものとか、無償であげたもの、物々交換、自給自足、は反映されないという理解でいいですか?

あと、麻薬等の密売や、フリーマーケット的なものも把握しようがない気がします。
そう考えると、統制がとれてない国ではGDPを調べること自体が困難ですか?
そもそも正確に調べる必要もないかもしれないけど・・・

アホっぽい質問でごめんなさい。。。
でもなんだかGDPが頭からはなれません!
2014/01/20(Mon) 17:59 | URL  | ピピネラ #eR1ha.nA[ 編集]
ピピネラさんへ
 コメント,質問ありがとうございます。
 「アホっぽい」なんてとんでもない。たいへん重要な質問だと思います。
 「何がGDPに含まれるか・含まれないか」というテーマは,第4回か5回でやる予定でした。
 そこでも関連することを述べていきますが,とりあえずご質問にお答えすると・・・

> ①個人が海外旅行先でお土産を買う 海外での買い物は含まれない。その海外でのGDPとなる。
> ②企業が自社製品の材料を買う 含まれる。ただし,基本的には次回述べる「中間投入」として。 
> ③国家が外国の国債を買う 含まれない。金融上のお金の流れはGDPとはまた別。これも重要。
> ④国内で外国の会社の商品を買う 含まれる。
> ⑤ネットで個人輸入 「輸入」ならば,いわば「マイナスのGDP」として含まれる。ただし,「ネットの個人輸入」が経済統計上の「輸入」に含まれるのかどうか,私は自信がありません。
> ⑥思いやり予算 含まれる。 「政府支出=政府の買い物」の一部
> ⑦政府開発援助 GDPには含まれないが,「移転収支」という「海外とのやりとりのトータルな収支(経常収支)」の一部であり,国の経済を測るうえでの統計項目のひとつ。
> ⑧国内にいる外国人の買い物 含まれる。国内の外国人の収入も含まれる。
>
> 国内総生産って言うときもありますが、生産したけど売れなかったものとか、

 売れ残りは,GDPの中の「在庫投資」というものになります。つまり含まれる。
 記事の中でいずれ説明します。

>
 無償であげたもの、物々交換、自給自足、は反映されないという理解でいいですか?

 はい,基本的にはそのとおりです。お金で売買されるものがGDPの対象と考えていいです。

> あと、麻薬等の密売や、フリーマーケット的なものも把握しようがない気がします。
> そう考えると、統制がとれてない国ではGDPを調べること自体が困難ですか?
> そもそも正確に調べる必要もないかもしれないけど・・・

 はい,こういうアングラな経済は,本来はGDPに含まれるのですが,補足できないので数字のなかに入っていない,ということです。おっしゃるとおりです。
 そして,記事にも書きましたが,正確にGDPを算出するのはたいへんなことで,しっかりとした政府があって統制がとれていることが必要です。発展途上国のGDPは,正確性に限界があります。
>
> アホっぽい質問でごめんなさい。。。
> でもなんだかGDPが頭からはなれません!

 くりかえしますが,質問にお答えしていて,じつに的を得た質問で「すばらしい!」と思いました。短時間にこれだけの質問が出てくるのは,すごいと思います。
 これからも,どんどん突っ込んでください。
2014/01/20(Mon) 21:15 | URL  | そういち #-[ 編集]
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
2014/01/21(Tue) 15:30 |   |  #[ 編集]
鍵コメさんへ
 ご連絡ありがとうございます。心配しておりました。
 入院はなさってないとのことで,少し安心しました。どうかお大事になさってください。
 そして,貴ブログの熟練の深い文章を,また読ませていただきます。

2014/01/22(Wed) 07:31 | URL  | そういち #-[ 編集]
GDP
秋田様。まだPCを買って4か月なので、おかしなところがあったらごめんなさい。GDPの三面等価の原則はよくわかりました。学生の頃から疑問に思っていたことは、三面等価というといつも同じところを円環運動して発展がないことです。つまり厳密にいえば、生産国民支出で新投資がなされ拡大再生産がなされ円環運動ではなく螺旋的に発展していくとGDPの三面等価の原則は解釈されるべきだと思います。
2019/05/09(Thu) 18:48 | URL  | 有安弘一 #-[ 編集]
有安さんへ
> 学生の頃から疑問に思っていたことは、三面等価というといつも同じところを円環運動して発展がないことです。つまり厳密にいえば、生産国民支出で新投資がなされ拡大再生産がなされ円環運動ではなく螺旋的に発展していくとGDPの三面等価の原則は解釈されるべきだと思います。

有安さん コメントありがとうございます。
おっしゃるところの拡大再生産につながる螺旋運動というのは、たしかに重要だと思います。ただ、その運動をとらえる視点は三面等価ではなく、経済(GDP)を構成する3つの主体の活動のあいだの相互作用・相互浸透です。つまり国民の消費と企業の投資、政府支出の相互作用を通じて経済が発展していくという構図です。

これは単純化すれば、消費増→(需要増に対応して)投資増→(国民の所得が増えて)消費増ということですが、同時に(消費増を見越して、あるいは景気刺激のため)投資増→(国民の所得が増えて)消費増→(需要増に対応して)投資増という側面もあります。消費増→投資増→消費増であると同時に投資増→消費増→投資増でもあるというのは、タマゴとニワトリみたいな感じですね。消費と投資は、どちらかが固定的に原因か結果のいずれかであるということはない。どちらも原因でもあり結果でもある。一般論としてはそうなります。

そこで図式化すると消費と投資の2つの項目のあいだは→と←の2方向の矢印で結ぶことができます。消費⇔投資ということです(ここでの投資には企業による設備投資などのほか、政府による投資、つまり公共投資も含む)。これが相互作用ということです。こういう考え方はケインズ以降の経済学の根本といっていいでしょう。当ブログでもそこまで話を展開しようとして、何年も止まっていますが。そして、高度成長の時の日本は、こうした相互作用が典型的におこったのですが、経済・社会の状況しだいではその相互作用が活発に起こらないこともあるわけです(近年の日本にはその傾向がある)。

一方、三面等価というのは、ひとつの現象・実体が光の当て方によってちがったものにみえるけど、じつはひとつでもあるという考え方ですね。ある経済をトータルにとらえたとき、消費は生産であり所得でもあるという、なんだかいかにも弁証法的な感じです。消費と投資の相互作用というのも、弁証法的な感じですが。
2019/05/11(Sat) 11:30 | URL  | そういち #-[ 編集]
GDPの三面等価の原則
秋田様。お答えどうもありがとうございます。難しいところなんで何回も熟読させていただきます。
2019/05/13(Mon) 14:51 | URL  | 有安弘一 #maXf493M[ 編集]
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