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2014年01月23日 (木) | Edit |
GDPの三面等価

「ダブり」を取り除く

 「GDPは総買い物額である」というと,「ほかの本で読んだ説明とちがう」とか,「総買い物額がなんで〈総生産〉なの?」といわれることがあります。ここで,そんな疑問に答えます。

 「総買い物額」というけど,じつはそこにはふくまれない,特殊な「買い物」があります。それは,「そのモノを誰かに売ることを前提にモノを買う場合」です。日常的な言葉なら,「仕入れ」と言えばいいでしょう。「仕入れ」は,個人が日常生活でする「買い物」ではなく,企業がビジネスのためにするものです。

 「仕入れ」としての買い物は,GDPにはカウントしません。「仕入れ」には,①仕入れたモノをそのままの形で売る場合と,②原材料として仕入れる場合とがあります。

 たとえば,「スーパーがパン工場からパンを仕入れる」のは①のパターンで,「パン工場が原材料の小麦粉を仕入れる」のは②のパターンです。

 なぜ,そんなやり方なのか。「そうしないと,生産されたモノの価値をダブって計算してしまうことになるから」です。

 経済の入門書でよくあるのは,つぎのような説明です。

・スーパーで食パンが100円で売られている。私たちがそれを手にするまでには,いろんな過程を経ている。

(イメージ)
 農家がコムギを育てる→コムギを原料に製粉業者が小麦粉をつくる→小麦粉を原料にメーカーが工場でパンをつくる→パンを小売店が仕入れて消費者に売る。

・コムギは,ひとつの段階を経るごとに手を加えられ,そこでの仕事(労働)の分の値段を上乗せされていく。

(イメージ)
 100円の食パンの材料に使うコムギが10円。
 それが,小麦粉になると20円。
 その小麦粉でつくったパンを,メーカーは80円でスーパーに売る。
 さらに,スーパーはそのパンを100円で私たちに売る。

・GDPの計算では,以上のすべての段階の金額(買い物額)を合計するということは行わない。最終的に生産されたパン100円の価値だけをカウントする。

 つまり,コムギ10円+小麦粉20円+パン80円(メーカーからスーパーへの卸価格)+パン100円(スーパーでの販売価格)=200円 ということは,しない。

 なぜこのように考えるのでしょうか。

 この過程で生産されたのは,あくまで100円の価値のパンです。小麦粉などの原材料費や,スーパーが工場から仕入れるときの値段は,スーパーでの販売価格100円の中にふくまれています。そこをダブってカウントしないようにしているのです。最終的に生産された100円の価値だけをカウントします。

 このように,「ダブリ」を除いて,国全体の買い物額をカウントしていったのが,GDPです。このダブリの部分のことを経済学では「中間投入」といいます。

 「中間投入を除く」という一定の操作を加えた「総買い物額」。
 そうやって「生産された価値」を把握した数字。

 それがGDPの,よりくわしい定義です。「生産された価値」のことは,「付加価値」といいます。

 つまり,GDPは「国全体で,さまざまな労働によって生産されたモノやサービスの付加価値の合計」なのです。国内で生産された価値の合計。だから,「国内総生産」といいます。


誰かの支出は誰かの所得

 じつは,「国内総支出」という言葉もあります。さしているものは「国内総生産」と同じです。

 ただ「総支出」というのは,生産された価値あるモノやサービスを誰かがお金を「支出」して買っている,という面からものごとをみています。「買い物」としてGDPをとらえた言葉です。

 最初に出てきた「GDPは総買い物額」というのは,「総支出」としてGDPをみたものなのです。「総生産」と「総支出」は,コインの表と裏のような関係です。同じものを,どちら側からみるか,というちがいです。

 さらに,「総所得」という言葉もあります。これも,「総生産」「総支出」と同じものを,別の側面からみたものです。

 つまり,誰かがお金を支出してモノやサービスを買ったとき,それは売った者(企業やその従業員)の所得になります。つまり,「それだけのお金が入ってくる」ということです。
 誰かの支出は誰かの所得。だから両者もイコールだ,というわけです。

 「誰か」というのは,要するに私たちのことです。「誰かの支出は誰かの所得」というのは,

 私たちが買い物をすれば,それは誰かの所得となる

ということです。

 言ってしまえばなんでもないことですが,これはじつは経済をみるうえで非常に重要なことです。

 また,「生産された付加価値は,誰かの所得」ということもいえます。付加価値というのは,売上から原材料費などの中間投入を除いた分のことでした。これは,かみくだいていえば商売の「儲け」の一種だといっていいでしょう。

 この「儲け」は,どうなるのかというと,会社の従業員と会社,そして会社に出資した株主などで分けることになるのです。

 つまり,従業員の給与,役員への報酬,株主への配当,会社の蓄え(内部留保という)などになります。「儲け」が山分けされてみんなの「所得」になるのです。そして,「儲け」とは言い換えれば「付加価値」のことなのです。

 ここのところはややむずかしいので,次回以降でまた補足します。


GDPの三面等価

 誰かの支出であり,同時に誰かの所得である金額は,そのモノやサービスを生む労働によって生産された「価値」である。
 つまり,

 総生産=総支出=総所得

 これを,経済学で「GDPの三面等価」といいます。

 これは,たとえばこんなイメージです。
 底面が三角の立方体(三角柱)があって,これが「GDP」だとする。この三角柱はみる角度によって,ちがう面(「生産」か「支出」か「所得」か)がみえている。でも,どの面からみても,同じひとつの存在(三角柱)をみている……
     GDP三角柱

 多くの経済の入門書や教科書では,「総生産」という面から,GDPをまず説明します。真正面からの説明です。
 しかし,「中間投入を除いた価値の総生産額」という説明は,入門としてはじつはハードルが高いのです。最初にこの説明をもってくると,初心者はかなりの率で拒絶反応がおきます。
 
 それより,「買い物」としてまずGDPをとらえるほうが,初心者にはイメージしやすい。そして,まずはばくぜんと「国全体の総買い物額」とイメージする。そのあとで一歩進めて,「ダブリ=中間投入」を除いたものとして,理解すればいい。この本では,そういう説明の順序をとりました。

(以上)
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コメント
この記事へのコメント
国内の総買い物額、仕入れはふくまない=国内の総収入=総生産額 
(政府が把握してるもの)と頭に入れました。

ほんと、「国民総生産」って表現はわかりにくいです。
このブログでやっと意味がわかりました。感謝です!

「生産」って言われると、誰かが作ったわけじゃない土地とか石油とか魚とか、今年作られたわけじゃない骨董品とか、形のない様々なサービスが含まれて、
わたしが作る晩ご飯とか、農家の祖父母が送ってくれるお米とか、そういちさんが書いてるこのブログとかが含まれなかったらなんだか変な感じ。

それに「国民」って部分も正確じゃないので、ニュースとかでは「国内総生産額」って言って欲しいです。

調子にのって質問です。
①Aさんが本を買って古本屋に売っってBさんが買った場合、GDPに含まれるのはAさんの分だけですか?

②日本人が日本の国債を買っても金融上の動きだからノーカウントですか?「金融上」っていうのがよく分からないんですが、国債とか株とかは買うっていうけど買い物っていうより貯金みたいなものってことでしょうか?

③土地、貴金属、保険はGDPにまれますか? 

④Aさんが土地を買ったら値上がりしたので、Bさんに高い値段で売ったら、Bさんの分、ですか?

2014/01/23(Thu) 22:30 | URL  | ピピネラ #eR1ha.nA[ 編集]
ピピネラさんへ
 コメントありがとうございます。
 「このブログでやっとGDPの意味がわかった」といっていただき,感謝です。

 GDPを「生産物」ととらえると,いろいろ誤解が生じるのだと思います。
 
 「生産物」ではなく「付加価値」。あるいは日常語でいえば「儲け」です。
 このへんはまた記事本文かこのコメントの中で述べたいと思います。

 > 調子にのって質問です。
> ①Aさんが本を買って古本屋に売っってBさんが買った場合、GDPに含まれるのはAさんの分だけですか?

 そうです。中古品の売買はGDPに含みません。

> ②日本人が日本の国債を買っても金融上の動きだからノーカウントですか?「金融上」っていうのがよく分からないんですが、国債とか株とかは買うっていうけど買い物っていうより貯金みたいなものってことでしょうか?

 「金融」の概念については,また本文の記事で述べていきます。
 金融とは,基本的には「お金を貸すこと」だと思えばいいです。
 国債や株を買うのは,おおまかにみれば銀行への預金と同じです。
 銀行への預金は,銀行にお金を貸しているのです。国債を買うのは国へお金を貸すこと。
 株式は,「会社がもうかったら配当というかたちで返す」という約束でお金を貸すようなもの。

> ③土地、貴金属、保険はGDPにまれますか? 

 こういうのは「ストック」というもので,これに対しGDPは「フロー」です。
 これも,記事本文でちゃんと説明したいと思います。
>
> ④Aさんが土地を買ったら値上がりしたので、Bさんに高い値段で売ったら、Bさんの分、ですか?

 土地取引がGDPに含まれるか,ということであれば,含まれません。
 ストックの所有が移転するだけではGDP発生しない。
 ただし,その取引を仲介した不動産会社が手数料収入を得たら,それはGDPに含まれます。

 どのご質問も重要な点にかかわるものばかりです。刺激になります。
 これからもどんどんお願いします。
 
2014/01/23(Thu) 23:34 | URL  | そういち #-[ 編集]
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