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2013年02月24日 (日) | Edit |
団地の魅力のひとつに,その「間取り」があります。
「〇平方メートル」「〇LDK」ではあらわしきれない特徴が,団地の間取りにはあるのです。

下の図は,団地の間取りのイメージです。
斜線の部分は,玄関ホールなどの廊下的なスペース。
赤い線は,窓。
出入口の横にあるのは,階段。

(団地の間取り)
団地の間取り

これに対し「今どきのマンション」のイメージは,こうです。
団地と同じく,斜線の部分は廊下で,赤い線は窓。

(今どきのマンションの間取り)
今どきのマンションの間取り

多くの古い団地は,となりあう2戸が対になって階段を共有しています。これだと,ひとつの棟にいくつもの階段があるのがふつうです。これを「2戸1(ニコイチ)」ということがあります。

それに対し,今どきのマンションの多くは,エレベーターとメインの階段は1か所に集約され,外廊下を通って出入りする構造になっています。これだと通行人の目が気になるので,外廊下に面した窓は,たいていは閉めっぱなしです(だから,上の図では省略しました)。
これを,「外廊下」方式といいましょう(一般的な呼び名ではなく,ここだけのものです)。
 
一方,「ニコイチ」方式の団地では,両方の窓(多くは南北)をオープンにできます。これは,やはり快適です。
まず,北側の部屋も,明るい。古い団地は,家全体に日差しが入ってきます。
そして,風通しが断然いいです。
私の住む団地も「ニコイチ」です。高台に建っているせいもあって,南北の窓を開けると風が非常によく通ります。おかげで夏場もほとんど冷房を使わずに暮らしています。
 
「外廊下がない」
「そのため,南北の窓をオープンにできる」
これは,多くの古い団地の特徴であり,明らかなメリットです。

***

もうひとつ,団地の間取りの特徴として,「全体のかたちが正方形に近い」ということがあります。その「正方形」が,襖(ふすま)などでゆるやかに仕切られています。

これに対し,今どきのマンションは,やや細長い長方形です。
玄関から廊下がのびていて,その両側に部屋がある。各部屋の独立性は団地よりも高いです。たいていは,廊下のつきあたりがリビング+ダイニングになっています。

「正方形」型と「長方形」型。
「どちらがいい」とは,はっきりはいえません(これも,ここだけの呼び方です)。
ただ私は,ゆるやかに仕切られた「正方形」型の団地の間取りが好きです。
なんとなく,のびのびした感じがするのですが,どうでしょうか? 家じゅうを「ぐるぐる」「うろうろ」できるので,面積のわりには,きゅうくつな感じがしません。

もちろん「仕切りがゆるやか」というのは,各部屋のプライバシー度が低いということです。私がそれをデメリットと感じないのは,夫婦2人暮らしだからかもしれません。年頃の子どもさんがいる家庭などでは,またちがうはずです。

あとは,やはり日当たり,風通しのことがあります。「長方形」型だと,その真ん中あたりは,どうしても外の光や空気が入りにくくなります。

*「長方形」型は,業界では一般に「田の字プラン」といいます。でも,私にはあまり「田の字」にはみえないのですが。

***
 
今どきのマンションは,多くが「外廊下」方式であり,「長方形」型です。それがスタンダードになっています。
しかし,その「スタンダード」は,かならずしも暮らしやすさを追求して生まれたものではありません。むしろ「経済性」を追求した結果生まれました。
正確にいうと,「予算の制約のなかで,一定品質の住宅を数多く提供しよう」と工夫するなかで生まれたのです。

もしも,今の高層マンションを「ニコイチ」でつくったら,ひとつの棟にエレベーターをいくつも設置しないといけません。それはコストがかさみます。マンションの値段がそのぶん高くなってしまいます。

「長方形」型というのも,経済効率のうえで意味があります。具体的な説明は省きますが,「長方形」型だと,「正方形」型にくらべ,同じ建築コスト(土地代+材料費+工事の手間)でより多くの家をつくれるのです。

「だから今どきのマンションはダメだ」などというのではありません。
「外廊下」方式は,現実的な妥協案です。「長方形」型の間取りも,これはこれでよくできていると思います。

でも,古い団地のような「ニコイチ」方式も「正方形」型もあるということです。
そして,その良さはもっと知られてもいいと思うのです。

(以上)
 
(参考文献)隔月刊「コンフォルト」5月増刊『図説 日本の「間取り」』建築資料研究社,2001年。「間取り」というものを考えるうえでよい本です。豊富な図版と解説で,住宅に興味のある人なら初心者でもたのしめると思います。ただし,今は入手困難かもしれません。


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テーマ:建築デザイン
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
団地のよさもわかるのですが。。
団地に住んでます。でも新築マンションに引っ越す決断をしました。
結局、団地には高齢者になるまでの設備が不足してるんですよね。
トイレや風呂に窓があるなどよいのですが、やはり、エレベーターなしではこれからなかなかきびしいです( ´∀`)
今三階ですが、それでも辛いです。
高齢者に関わる仕事をしているので、そこの課題はかなり生活に関わることを実感しています。あとは、住民の質も結構課題です。
2013/10/10(Thu) 19:52 | URL  | スプーン #jFhDM2Bo[ 編集]
Re: 団地のよさもわかるのですが。。
 こんにちは,コメントありがとうございます。
 階段がないのは,たしかに多くの団地のデメリットですよね。

 私としては,「団地はとにかく素晴らしい,理想の住宅・住環境だ」などというつもりはありません。また,私だって,ずっと団地に住んでいるかどうか,たしかなことはいえません。

 団地には多くの欠点やデメリットがあります。でも,ほかのタイプの住居にはない,いいところもある,と思っています。
 そこで,予算的に制約のある場合の「住居の選択肢」のひとつとして,考えられるのでは?ということです。それで,人によっては「団地,いいかも」と思う人もいるかもしれない…でも,世の中的には少数派だと思います。スプーンさんのようなご意見が,やはり多数派だと思いますし,それを否定したり,説得しようということではありませんので…
 ただ,団地に住むかどうかはともかく,一般にはネガティブなイメージである「団地」の「いいところ」に目を向けてみるのは,「住まい」というものにたいするイメージや価値観を広げる意味があるのでは,とは思っています。
2013/10/10(Thu) 20:51 | URL  | そういち #-[ 編集]
逆のことを。
こんにちは。
団地のリノベのことを調べていてこちらを知りました。
私自身は、年代も育ってきた環境も、そういちさんにかなり近いと思います。
今も某団地に住んでいて、リノベできる物件を探しているところです。
高齢者に優しくないという話について、私の実家がまさにエレベーターがまったくないところなのですが、逆のことを感じています。
実家も含め、まわりの高齢者はとても元気です。
生活(行動)がしんどいという話もあまり聞きません。
階段の上り下りを何十年も日常的にしていることがかなり大きな要因なんじゃないかと思っています。
逆に地方の一戸建てに住む主人の実家は数年前にバリアフリーのリフォームをしましたが、立て続けに体調を崩してしまい、宅内で大きなケガもしてしまいました。
義父は長期間のリハビリを要する状態です。
それまでも義両親は日常的に車を使い、1Fしか使わないような生活を20年近く続けていました。
ちなみに義両親のほうが私の両親よりも若いです。
もちろんこのことだけが原因だとはいいませんが、きちんと調べてみると案外面白いかもしれないと思いました。
2013/10/27(Sun) 11:50 | URL  | かりな #-[ 編集]
Re: 逆のことを。
 かりなさん,はじめまして。コメントありがとうございます。
 「エレベーターのない団地での階段の昇り降りが,高齢者の健康にどう作用するか」って,たしかに調べてみたら面白いですね。高齢者の健康に関する専門家で,きちんとやってくれる人がいたらいいのに(たいへんな調査でしょうから,自分のような素人には無理)。でも,もう誰か調査しているかも……

 私の実家も,エレベーターがない団地でした。そのなかで,階段の昇り降りに不自由している(程度にもよりますが)という人が実際どれだけいたのか,というとちょっとよくわからない感じがします。
 ただ,住んでいる人(とくに高齢者)にとって「エレベーターがない不安」というのはあるのでしょう。
 その「不安」が強調される傾向があるかもしれません。また,そして団地の「建て替え」が進められるときには,最もわかりやすく,否定しにくい「団地の問題点」として「エレベーターがない」ことが打ち出されるという面があるのかも……
 コメントをいただいて,そんなことも考えました。
 
2013/10/28(Mon) 07:20 | URL  | そういち #-[ 編集]
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