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2014年03月26日 (水) | Edit |
 東京・多摩からターミナル駅まで,片道約50分の電車通勤。
 あえて,やや空いている各駅停車に乗ります。
 そこでの読書は,毎日のたのしみです。
 この3~4週間で読んだ本で,印象深かったものをご紹介します。

 このシリーズは3回目ですが,前回から何か月も経ってしまいました。
 これからはもっと頻繁に,と思っています。

 ***

●児美川孝一郎『キャリア教育のウソ』ちくまプリマ―新書,2013

キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)キャリア教育のウソ (ちくまプリマー新書)
(2013/06/05)
児美川 孝一郎

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 2000年代初頭から学校などで広まった「キャリア教育」について論じた本。
 それをまるっきり「ウソ」だと批判しているわけではない。
 ただ,いろんな限界や落とし穴もある,と述べています。
 
 たとえば,「自分のやりたいこと,なりたい職業をみつけよう」という,よくあるテーマ。「やりたいこと」主義のような傾向が,今の「キャリア教育」にはあるという。
 しかし,著者は言います。

《子どもや若者の「やりたいこと」は,必ずしも特定の職業や仕事という次元に落とし込まれる必要はない。
 技術系なのか,事務系なのか,広い意味での対人サービスなのかといった「方向感覚」と,自分が働いていくうえで何を大切にしたいのか,何をやりとげたいのかといった「価値観」が,大まかにつかめれば十分である。》(78ページ)


 私も,この考えに賛成です。
 私は,若い人の就職相談の仕事をしていて,「キャリア教育」の世界と縁がありますが,「方向感覚と価値観がつかめればよい」というのは,「現場」の感覚としても賛同できます。こういう考え方が,はやく多くの人の常識になればと思います。



●伊東孝之ほか編著『新版世界各国史20 ポーランド・ウクライナ・バルト史』山川出版社,1998
ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史)ポーランド・ウクライナ・バルト史 (世界各国史)
(1998/12)
伊東 孝之、 他

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 「問題」となっているウクライナについて知りたくて,本棚から引っ張り出した。
 ネットだけではわからないことが,こういう本を読むとわかるのだと思います。
  
 大国の「狭間(はざま)」にあって,大国の圧迫や侵略を受け続けてきた国ぐにの歴史です。

 この本が対象とする「ロシアとドイツ(プロシア)の狭間の地域」は,この数百年で何度も何度も「勢力図」が大きく塗り替わってきました。その経過は複雑で,ほんとにややこしい。

 これにくらべると,日本の歴史はシンプルに思えます。
 
 日本とは大きく異なる歴史の歩み。
 「狭間の国」としての苦しみは,今も続いている。

 具体的なことはアタマに残らなくても,そのような歴史の「イメージ」だけでも知っておくと,世界が広がる気がします。
 


●西内啓『統計学が最強の学問である』ダイヤモンド社,2013

統計学が最強の学問である統計学が最強の学問である
(2013/01/25)
西内 啓

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 ベストセラーになっている,統計学入門の本。

 冒頭に,1800年代のロンドンでコレラが大流行した際に,統計的分析を使ってその流行をおさえることに貢献したジョン・スノウの話が出てきます。
 こういう歴史的な「原点」をおさえているのは,好感がもてます。

 後半以降は「統計学の6つの分野」(統計学がフル活用されている6つの分野)をとりあげ,それぞれの「統計学」について論じています。「社会調査」「疫学・生物統計学」「計量経済学」等々の分野。

 こういう構成は,「現実のいろんな問題を解くために統計は使える,そのために統計学はある」という視点が明確だということです。だから,生き生きした新しい入門書になっている。

 また,最近流行の,多額の予算を投じた「ビッグデータ」の手法には懐疑的で,「データを活かすのにお金は要らない」と述べています。統計学の基本がわかっていれば,少ない費用で十分な統計的な分析や判断ができるというのです。これにも共感。

 でも,一か所気に入らないところがありました。

 「古い時代のダメな統計」のことを「ナイチンゲール的統計」と呼んで,けなしていること。
 「白衣の天使」ナイチンゲールは,1800年代に専門分野としての「看護」を確立した人。病院や軍隊での健康や衛生の状況を把握するために,統計的な手法も用いました。

 彼女は,現実の問題を解くために,熱意をもって統計的研究を行ったパイオニアでした。

 のちの統計学の水準からみれば限界があったとしても,「ダメ統計」の代名詞みたいに言うのはまちがいです。ナイチンゲールは,この本の著者が高く評価するジョン・スノウなどと同じ系列に属する仕事をしたのだと,私は思います。


●フランシス・フクヤマ『政治の起源 上・下』講談社,2013

政治の起源 上 人類以前からフランス革命まで政治の起源 上 人類以前からフランス革命まで
(2013/11/06)
フランシス・フクヤマ

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政治の起源 下 人類以前からフランス革命まで政治の起源 下 人類以前からフランス革命まで
(2013/12/25)
フランシス・フクヤマ

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 原始時代からフランス革命のころまで,世界史上のさまざまな国家や政治体制を比較・分析して,政治制度発展の理論を構築しようとした本。

 とりあげるのは,秦・漢の中国,マウリヤ朝のインド,イスラムのマムルークの制度,そしてスペイン・フランス・イギリス・ロシア・ハンガリーなどのヨーロッパの絶対王政……

 こういう大風呂敷な話は,「しろうと談義」「与太話」になってしまいがちです。

 しかし,この本はちがう。歴史学のさまざまな成果を引用しながら,一定の学的根拠に基づいた幅広い議論を展開しています。その主張に賛成しない人もいるでしょうが,やはり「学問」にはなっている。

 フクヤマは日系3世の米国の学者。1990年ころ,ソ連が崩壊した「冷戦終結」の際,その世界史的意味について論じた「歴史の終わり」論で世界的に有名になりました。

 こういう大風呂敷な本が,「ステイタスのある学者・知識人」によって書かれ,ある程度は売れている。
 これはアメリカのすごいところだと思います。

 この本については,あらためて論じたいと思います。この10日ほど,おもに電車のなかで読み続けて,今日読み終わったばかり。また読み返すでしょう。

  関連記事:世界史から謎を解く(『政治の起源』について)

(以上)
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テーマ:本の紹介
ジャンル:学問・文化・芸術
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