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2014年04月10日 (木) | Edit |
 ワイドショーやニュースで,昨日行われた小保方さんの会見の一部をみました。

 残念ながら,「科学」の議論にはなってないと感じました。

 「悪意はない(私は悪い人じゃない,ウソはつきません)」
 「私は200回は成功した,だから信じてください」

 これは,科学の議論ではなくて,会議や根回しの論理です。

 あるいは「オカルトの人」の論理かもしれません。
 つまり,

 「私は200回金星人と会ったことがあるので,金星人は実在します。証拠となる映像もあるけど今は出せません。私以外に金星人と会った人はいませんが,私はウソはつきません。金星人をみなさんの前に呼ぶこともできます。でも今日はちょっと……」

と言っているようなものです。

 でも,この問題で第一に重要なことは,「追試(ほかの科学者による再現の実験)がどうなるか」ということ。その可能性はともかくとして,もしも「再現」がなされたら,状況は一変します。ということは,ほかのことは「枝葉」なのです。この点は3月2日の記事 科学ってそういうもの でも述べたとおりです。

 しかし,小保方さんにとって「自分の身を守る」という点からは「会議や根回しの論理で争う」ということが必要になってしまっている。
 そのあげくに,見方によっては「金星人に会った人」と同じようなことを言っているのです。
 ほんとうに残念なことです。

 ***

 以上「残念」だとは述べましたが,あまり批判めいたことは言いたくない,とも思います。「この件が今後の日本の科学や社会にとって,悪い影響を残さないか」と心配だからです。

 「悪い影響」というのは,この件が「若い連中は,やっぱりダメだ」という話になっていくこと。

 「今の日本は,若い世代に冷たい」と私は思っています。その根本の原因には,高齢化で中高年が社会の多数派や主流になったことがあるでしょう。もうこれ以上,若い人の足を引っ張る「材料」が増えてほしくないです。
 
 先日の国会答弁で山中教授が述べた「30代の研究者は実験は上手だが,ほかの点は未熟」という発言も,そこだけ取り出して若い世代へのバッシングの材料にならないように,と思います。

 あの答弁は「国会のオジさんたちが,山中教授にああいうことを言ってほしくてお呼びして,期待に応えてもらったもの」だと,私は捉えています。
 
 立派な人格者の,国家予算が必要な科学者なら,あんなふうに「オジさんの求める話」を言うでしょう。あまり影響されないことです。
(なお,ノーベル賞受賞者や,それに匹敵する科学者のなかには「何を言い出すかわからない」タイプもいますが,そういう人は国会には呼ばれない。でも,そんな人の話こそ,ホントは聞きたい)

 「30代の研究者が科学の実験以外は未熟」なら,たぶん50代や60代の科学者でもそういう面があるはずです。
 人によって違いはありますが,専門家というのは,そういうものではないでしょうか。科学者でなくても,私たちの多くは自分の専門や,住んでいる世界の外へ出れば「未熟」なものです。

 この件が,「すべて,ひとりの若い・未熟な研究者がやったこと」というトーンになっては,いけない。

 もちろん,問題を引き起こした人には,その人としての責任があります。
 でも,若い世代が問題を起こすときには,上にいる人間のマネジメントの落ち度や劣化ということが,あるものです。月並みな言葉でいえば「管理不行き届き」。そのことを忘れている発言には,ご用心。

(以上)
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コメント
この記事へのコメント
 30代の若い科学者は未熟なのはあたりまえなのではないでしょうか。それを経験豊かな年長者が育てていくことが組織にとって大切なことだと思います。若い人の研究意欲がそがれないでほしいと願います。うまく言えないのですが,無鉄砲さが大切なことも多いはず。しっかりと見守れる高齢者が増えないといけませんね。
2014/04/11(Fri) 23:00 | URL  | かずゆき #-[ 編集]
おはようございます。
今の日本が若い世代に冷たいことを見抜いていらっしゃってさすがです。僕たちはその世代ですが、まさにみんながそれを口ではあまり言いませんが、痛感しています。少し救われた気分になりました。

それにしても、歴史や私生活の知恵、時事に至るまで幅広く書いていらっしゃって素晴らしいブログになってらっしゃいますね。

参考にさせていただいています。
2014/04/12(Sat) 07:32 | URL  | hajime #-[ 編集]
おはようございます
そういちさん
おはようございます。
先日はコメントありがとうございました。
3/2の記事も拝見しました。
今回の記事、まさに僕も同感です。
若い人の将来になるような議論になっていってほしいですね。
2014/04/12(Sat) 08:30 | URL  | ST Rocker #GK7sQxxU[ 編集]
かずゆきさんへ
コメントありがとうございます。「若い人の研究意欲がそがれないでほしい」というのは,まさにそうですね。もちろん,本当に元気のある,創造的な研究者はこんなことに関係なく,高い意欲を持ち続けるでしょう。問題は,その周囲にいる「社会」「世間」が創造性を抑え込む傾向を強化しないか,ということです。

たとえば,ほんとうに優れたアイデアとそれを実現する資質をもった若い研究者がいたとして,その「アイデア」というのが「既存の発想とは異質な,画期的なナントカ細胞のつくりかた」みたいなものだとしたら,研究機関に雇用されたり予算をとったりするのが困難,という雰囲気にならないか,ということ。そして,日本でそんなふうにモタモタしているうち,外国で同じ発想の研究が成功したりするなんてことも。「不祥事」の悪影響というのは,そういうところにあらわれるのだと思います。

「経験豊かな年長者が若い人を育てていくのが重要」というのは,たしかにそうだとは思います。ただ一方で「若い人を育てる」だけの資格や資質をもった年長者・高齢者というのは,そんなに多くはない,ということも私は思うのです。とくに「先端的な科学研究」などの創造的な活動において「育てる役割」なんて,とくにそうです。今50歳手前になった自分も含め,「中高年って,そんなにも経験豊富なんですか? その豊富な経験って,これからの未来において,ほんとうに役に立つのですか?」と問いかけたくなる気持ちがどこかにある。
2014/04/12(Sat) 10:51 | URL  | そういち #-[ 編集]
hajimeさんへ
コメントありがとうございます。このブログ全体のことも評価していただき,たいへんうれしいです。

「今の日本は若い人に冷たい」という感じを,もう若くはない私が感じる理由としては,2つあるように思います。ひとつは,人生いろいろあって,今の私が50歳前後の人間としては「既得権」とか「過去の実績」とか「経済力」と縁のない立場だということ(自慢できることではないですが)。あとは,世の中が本当に高齢化してしまっていて,場所によっては50歳近い私でさえ「若い人」扱いされるケースがよくあるということ。仕事関係でも地域の集まりでも,文化的なサークルでも,「40,50は若い人」ということが,今の日本では満ち溢れています(そういう場所で,元来生意気な私は,素直に「若い人扱い」に甘んじる「かわいい」人間ではないです。「え,そういちさんて,まだ40代だったの?」とか言われることも)。

記事にも書きましたように,今の日本が,「若い人に冷たい社会」(中高年以上との比較において,ですが)になったことの根底には,高齢化があるでしょう。社会の多数派・主流派が中高年になった。人数だけでなく,資産の蓄積や組織での地位や権限も中高年に集中するのが一般的です。リタイア世代は有り余る時間も持っています。ですから,よほど何かの歯止めやしくみがない限り,中高年や高齢者の好む方向に,世の中が動いていくのは当然です。

そして,現在の民主主義は,そのへんの「歯止め」をつくることができないでいます。それはそうです。「多数派の既得権者を抑える必要性」なんて,従来の民主主義は想定していない。

また,おっしゃるように若い人が,今の状況に対してびっくりするくらいおとなしいのも,わかる気がします。社会の少数派で,使えるリソースの点でも圧倒的に不利であれば,おとなしくならざるを得ない。そして,「冷たく」されているとはいえ,昔とちがって生存に必要なものは十分に手に入るのだから,まあいいか,ということにもなるわけです。また,恵まれた環境で育っているから,昔の人よりも優しい・おとなしい傾向がある。

話が広がってしまったので,このへんでやめておきますが,このあたりはいずれまた。
2014/04/12(Sat) 12:32 | URL  | そういち #-[ 編集]
ST Rockerさんへ
コメントありがとうございます。3月2日の記事もお読みいただき,うれしい限りです。

STさんもこの件について,ご自身のブログ(「ビートルズの新しい解析のページ」:当ブログの「リンク」にあり)で何度か述べておられますが,本格的な「理系」の人であるSTさんと,科学研究の行われている実験室に足を踏み入れたことなど一度もない私では,本来書いていることの「厚み」はまったくちがうわけです。でも,その主張・結論に交わるところがあるのは,うれしく,心強いことだと感じています。

STさんのブログを拝見していて,「若い人,とくに理系の人たちのよき相談相手」というイメージが浮かんできます。実際,そのように日々仕事をなさっているのかもしれませんが,若い人の弱い部分を補う「頼りになるオジさん」としてぜひご活躍を,と思います(たいへん僭越ながら)。本日のかずゆきさんへのコメントでも述べましたが,そういうことができる人は,じつは少ないはずです。
2014/04/12(Sat) 12:57 | URL  | そういち #-[ 編集]
ありがとうございます。
そういちさんが「若い人」扱いされることがあるということは少し驚きでした!失礼に当ったらすみません。場所によってということがあるにしても十分な分別を持っておられるにもかかわらずそういうことがあるのですね。

「社会の多数派、主流が中高年になった」、その通りですね。そのために社会制度や私たちの生活も変わっていきますね。そしてしばらくするとそうした世代はいなくなり、また変わる……。常に変わりゆく時代の風潮というものを考えながら、どうあるべきか、どう生きるのかを問うていく必要がありそうです。

ちょっとやさしすぎる若者、発散すべきエネルギーを抱えてしまっている若者、僕たちはもっと活き活きとエネルギッシュにいかなければいけません!!

丁寧な返信ありがとうございます。違う立場での見方を知ることができ、非常に有益です。それと、生意気で申し訳ありません……
2014/04/14(Mon) 01:16 | URL  | hajime #-[ 編集]
Re: ありがとうございます。
hajimeさん,コメントへの返信ありがとうございます。
おっしゃるように,「超高齢化社会」の先の状態というのも,未来にはありますね。そのような遠い未来で「すっかり衰え,壊れてしまった社会」が残らないで欲しいものです。そういう「暗い未来」を防ぐうえで,抽象的な言い方ですが「民主主義が,高齢化をどう扱うか」は大事なところだと思います。

ところでもちろん,「今の若い人はおとなしくてもの足りない」みたいな,オジさんがよく言うような話をするつもりはありません。今の若い人は,基本的には昔の人よりも「高度な文明人」であり,その点で多くのすばらしさ(といくらかの弱点)を持っていると思います。ただ,今の高齢化社会の中で,社会の中での若い人の存在感が,かつてよりも薄くなっている,ということです。

しかし,若い人はそこで生きていくために,年長の人,中高年の人が運営している世界にうまく適応して居場所や役割を確保しないといけないわけです。その一方で「中高年や高齢者に邪魔されない世界」を自分なりにつくっていくのも大事なことかと思います。これも抽象的な話ですが(また,長々書いてしまいました)。
2014/04/14(Mon) 06:43 | URL  | そういち #-[ 編集]
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