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2014年04月26日 (土) | Edit |
 この1~2カ月,日経新聞を漫然と読んでいるだけでも,雇用環境や賃金の動きに,ここ数年とはちがう動きが出てきたのがわかります。

 日経の記事の見出しなどをいくつか紹介すると,

《小売り,建設費高騰で出店抑制 イオンは2~3割減 外食,サイゼリヤは2割減》(3月9日朝刊)

《建築資材の値上がりに建設技能者の不足が重なり,商業施設の建設費は5割近く上昇》
なんだとか。

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 牛丼の「すき家」が,人手不足で一部店舗が営業できなかったり,営業時間縮小となっていることは,テレビでも報じられてご存じの方も多いと思います。その件にかんする「すき家」を運営するゼンショーの対応についての記事も。組織改革を行い,採用や労務管理のあり方を変えていくのだそうです。

《「すき家」7地域に分社 ゼンショー 人出不足,採用柔軟に》(4月17日朝刊)

 この記事では小売・外食各社の《人材確保に知恵を絞る》いくつかの動きを一覧表で紹介しています。《ファーストリテイリング 国内の「ユニクロ」で働く1万6000人のパート・アルバイトを正社員に》《セブン―イレブン・ジャパン アルバイトの応募者向けコールセンターを本部が設置し,加盟店の求人を支援》《イオンリテール 有期雇用者の一部に正社員とほぼ同じ福利厚生制度を提供》……

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 同じ4月17日に,大手企業の労使交渉の記事も。

《賃上げ,16年ぶり7000円台 経団連集計 大手企業,ベアが寄与》(4月17日朝刊)

《大手企業の今春の労使交渉の賃上げが16年ぶりに高水準となった。経団連が16日に発表した労使交渉の1次集計によると,大手企業の定期昇給とベースアップ(ベア)などを合わせた月額の賃上げ額は平均7697円で1998年以来の7千円台となった》


 賃金の増加には,勤続年数が1年伸びるごとに増える「定期昇給」分と,全員の賃金を底上げする「ベースアップ(ベア)」分と,ボーナス(一時金)があります。

 このなかでベアは,その企業の賃金表(勤続年数や役職などに応じていくらの賃金を支払うかを定めた規定)を書きなおすことになるので,将来にわたっての人件費増につながります。そこで,昨年までの労使交渉では,企業は利益があがってもベアには踏み切らず,一時金で従業員に還元することが多かったのです。
 
 しかし,記事によると今春は《業績が好調な企業を中心にベアが相次いだことが(賃上げの)数字を押し上げた》とのこと。

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 来年春の大学卒業者の採用計画でも,採用増の傾向が出ています。

《大卒採用 来春16%増 6年ぶり10万人超 小売・建設伸び 本社最終集計》(4月20日朝刊)

《日本経済新聞社は19日,2015年春の採用計画調査(最終集計)をまとめた。大卒は全体で14年春の実績比16.8%増の11万1505人と6年ぶりに10万人を突破。旺盛な採用が続く小売や建設などの非製造業は18.5%と4年連続で2ケタ伸びた》


 私は,若年者の就職支援の仕事にかかわってるので,このあたりのことは「現場」の感覚としてもわかります。

 上記の記事は大企業にかんするものですが,その筋の関係者から聞く,東京地域の中小企業の来春の新卒採用の計画も,はっきりと増加傾向にあります。この4月に出された「来春の大卒者の求人」が,その件数・人数とも,昨年同期にくらべ大幅に増えているのです。それも,少なくとも「何十%増」といった増え方です。

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 地方の雇用の状況にかんする記事もありました。

《求人倍率,違う角度でみると… 地方の雇用 本当は元気》(4月21日朝刊)

 これは「厚労省の発表する有効求人倍率」を実態に即して補正することで地方雇用の実態をみる,という記事。

 「有効求人倍率」とは,「現在有効な,ハローワークの求人数÷ハローワークの求職者数」。職を探している人(求職者)1人あたりで,何人分の求人があるか。この「倍率」が高いほど,仕事はみつかりやすくなります。

《厚生労働省が公表するのは,本社所在地ごとの有効求人倍率。東京都に本社があるスーパーが青森県内の店の求人を出すと,原則として東京都の求人として掲載するため都市部が上昇しやすい。これを就業地別に青森県の求人として数え直すと,地域雇用の実態がみえてくる。
 2013年の実績を本社地別でみると東京都が1.33倍で首位。(しかし)就業地別で計算すると1.00倍と大きく下がり,15位まで転落する》


 東京は15位で,1位から14位は地方の各県になっています。1位福島,2位宮城,3位福井,4位愛知,5位富山,6位香川,7位岡山,8位三重,9位岐阜,10位島根……

 以上は2013年(昨年)の統計ですが,大規模なまとまった統計というのは,どうしてもそうなってしまうのです。
 ただし,「地方の雇用 本当は元気」は言い過ぎで,あくまで「地方のなかには,雇用にかんし,東京よりも元気なところがかなりある」ということです。

 また,この記事では,「地域格差」ということについて,つぎの指摘もあります。

《今回の景気回復局面は,都市と地方の雇用がバランスよく持ち直しているのが特徴だ》

 この点を,地域別の有効求人倍率のグラフ(2000~2014年)を示して述べています。

《かつては輸出産業が多い首都圏や中部圏に求人が集まり,地方は雇用回復の恩恵を受けられないケースもあった。今回は公共投資だけでなく医療・サービスなど内需が主導しており,回復の裾野は広がっている》

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 数か月前には「景気が動きはじめているのでは」という世間話をすると,「そんなのは一部の話で,我々には実感はない」といった反応が「相場」でした。
 今でも「世間話の受け答え」としては,そうなのかもしれません。
 80年代のバブルが終わって以降,世間話で「景気がいいですね(よくなってきましたね)」とは,めったに言いません。

 しかし,最近の状況をみると「経済が大きく動いている,潮目が変わってきた」というのが,かなりはっきりしているようです。

 「雇用状況が改善したといっても,私は就職で苦労している」という方も,もちろんいると思います。
 上記の記事で「明るい兆し」が多少ともあるのは,おもに若年者や大企業の社員です。
 この人たちは,「買い手が比較的多い」「労働者として恵まれている」等,日本の就職・労働市場における「強者」といえるのです。

 その「強者」以外の人たちには,「改善」が実感できないとしても,無理はありません。

 また,労働市場での需要が高まっている事例として,上記の記事が取りあげていたのは,建設,飲食,流通,介護といった分野。これは,職を求める若い人たちのあいだでは「人気」とはいえない領域です。その背景には賃金や仕事の面での「きびしさ・キツさ」がある。少なくとも,そのようなイメージがある。

 その他のいわゆる人気企業・人気業界をめざす人からみれば,「就職がたいへん」という状況は,変わらないことでしょう。

 それでも,経済で「何かが動いている」ことは確かです。
 とりあえず,この点は確認しておきましょう。

 「これでみんながハッピーだ」などとは言っていません。
 今の状態が「いい」のか「悪い」のか,「満足のいく状態か,そうでないか」といったことは,今はおいておきましょう。とにかく,この数年の日本経済でみられなかった何かが,今起こっている。

 「これはアベノミクスの成果だ」「いやそうではない,あんなものは…」といった議論や,「一部で景気回復があっても,それに取り残された人はどうなる?」といった意見もあるでしょう。
 「日経新聞なんて,政財界の提灯持ち。あんな新聞に載ったことを真に受けてはいけない」という意見も見聞きします。

 それらはもちろん,考えるに値する視点です。

 でも,世の中には,そのような「疑問の言葉」とともに,現状を認識することをやめてしまう人がいます。空模様が大きく変わってきたのに,それをみようとしない人がいる。

 まずは,「空模様」を,価値観のフィルターなしで,みてみましょう。そのうえで,それがいつまで続くのか,何をもたらすのか,自分はどうするのがよいか等について考えていきましょう。「空模様」の変化を無視して考えるのは,やめたほうがいいでしょう。

(以上)
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テーマ:思うこと
ジャンル:学問・文化・芸術
コメント
この記事へのコメント
まずは,「空模様」を,価値観のフィルターなしで,みてみましょう。そのうえで,それがいつまで続くのか,何をもたらすのか,自分はどうするのがよいか等について考えていきましょう。「空模様」の変化を無視して考えるのは,やめたほうがいいでしょう。

確かに,「空模様」の変化があるならば,その方向で何かが起こっている, とは思います。それは,理論的に行なった施策の,客観的な結果なのだろうとは,考えられなくはありません。でも,この結果は,都合良く,情報が強調されて流されているだけではないかと疑ってしまいます。それに自分が踊らされたくないと考えてしまいます。なんとなく手放しでは喜べない自分がいます。もしこの施策が失敗して,経済が落ち込んでいったらどうすればいいのかとか,また逆にうまく行って,こんどはそこに「心情」が入り動きの激しい展開をはじめたら,自分は一体どうすればいいのか,といろいろ考えてしまいます。無視するのではなく自分なりの対応をしようとはしてはいます。ただ,党派性なしに「『空模様』を,価値観のフィルターなしで,みてみましょう。」とはなかなかできない自分がいます。

2014/04/26(Sat) 21:30 | URL  | かずゆき #-[ 編集]
かずゆきさんへ
コメントありがとうございます。
とにかく,「何かが起こっている」ということが認識できていていれば,それでいいのではないでしょうか。今回述べた現象は,ある人たちにとって「都合よく強調されている」という面もある,と私も思います。日経新聞というのは,「株価が上がってほしい」というスタンスの明確な新聞です。でも,今報じられている現象は「根も葉もないことを不当に拡大している」という範囲は,超えているといえるでしょう。一定の意味のある動き・出来事が背景にあると思います。やはり,この数年間にはみられなかったことが,たとえ局所的であっても,実際に起きている。
それを「手放しで喜ぶ」必要もないと思います。私も別に「これでみんなハッピーだ」「喜びましょう」とは述べていません。「アベノミクスの成果かどうかも,わからない」ということでいいと思います。この点はまた,きちんと検討されるべきことです。とにかく,かずゆきさんも言うように,,まずは「無視」しなければいいのではないかと。「俺は躍らされないぞ」と思うあまり,「みれどもみえず」になってはいけない。そういう思いで,今回の記事を書きました。
2014/04/26(Sat) 22:12 | URL  | そういち #-[ 編集]
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