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2014年06月22日 (日) | Edit |
 前回の記事で,中沢弘基『生命誕生 地球史から読み解く新しい生命像』(講談社現代新書)という本を紹介しました。
 これにかかわる補足の話を。まだ,いい足りないことがあります。

 この本は,生命誕生についての新説を述べた本です。

 「最初の生命は,30数億年~40億年前の太古の海で生まれた」という通説に挑んでいます。「最初の生命は地下深くで生まれ,その後海底に出て,海の中で多種多様に分化していった」というのです。その内容については,前回の記事をご覧ください。

 「生命は地下で生まれた」というのは,一見いかにも突飛です。
 私も,この仮説の妥当性を具体的に論評する能力がありません。

 でも,突飛にみえても「トンデモ科学」とはちがいます。
 そこは私にもわかる。

 それは,この説が説明の根拠に用いているのが,あくまで物理・化学の一般的な自然現象だからです。
 そんな自然現象の積み重ねの末に,「生命誕生」という,一種の「奇跡」が起こったと述べているのです。

 この姿勢は,「生命誕生」についての,ある種のほかの「突飛」な説とはちがいます。
 たとえば,「最初の地球生命は,隕石にのって宇宙からやってきた」と主張する科学者がいます。そういうのとはちがうのです。

 世の中には,既存の科学で説明がむずかしい現象について,「宇宙からやってきた」と説明する人がいます。
 「宇宙から」というかわりに,「霊界」や「異次元」を持ち出す人もいる。

 たとえば,「最初の文明」について。
 「最初の文明」といわれるものは,今から5500年ほど前に,メソポタミアのシュメール人という人たちが築きました。この時期,何万人もの人間が暮らす巨大な都市が,乾燥地帯のなかにあらわれました。
 そのような都市の発展は,当時としてはきわめて急激なものでした。
 だから,「都市文明が,こつぜんとあらわれた」という印象があります。

 そこで,「シュメール人は宇宙からやってきたのだ」という人がいるのです。「そうでなければ説明がつかない」などという。これこそ「トンデモ科学」の世界です。

 都市が急激に巨大化するというのは,「説明のつかない」話などではないはずです。
 それは近代の文明の発展をみればわかります。西暦1800年ころ,世界最大の都市は,せいぜい人口100万人ほどでした(ロンドン,江戸など)。それが200年ほど経った現在,「最大の都市」というと「人口数千万人」になっている。

 説明しにくい現象に出くわしたとき,私たちは安易に「宇宙人のせい」にしないで,踏みとどまらないといけないのでしょう。「生命誕生」や「文明誕生」については,まさにそうです。

 ***

 その一方で,この本を読んでいて,「生命誕生」というのはまさに奇跡だ,とも感じました。

 有機分子が大量に形成されることが,いかに困難か。
 つまり,きわめて特殊な条件下でのみ起こる,ということ。
 それらの有機分子が結合に結合を重ね,生命のパーツとなる複雑・巨大な分子を形成することは,さらに困難。
 「母なる海」のなかで,なんとなく「自然に」形成される,などということはありえない。
 しかるべきときに,しかるべき現象が,幾度も積み重なってはじめて現実化すること。

 そういうイメージを,この本から受け取りました。

 ということは,地球に生命が誕生して,今私たちが存在しているというのは,やはり途方もないことだと思います。

 「この銀河系や宇宙全体には,無数の星があるのだから,地球外生命や地球外文明も,数多く存在するにちがいない」という考え方があります。
 私たちはそんな「地球外」の存在について,まだ知らないだけだ,というわけです。
 「さしあたり,火星に生命がみつかるかもしれない」という見解もあります。
 
 でも,ほんとうにそうなのか?

 「生命誕生」について,それが「きわめて困難なプロセスの末に実現する」というイメージを持つと,「宇宙にいるのは,私たちだけかもしれない」などとも思います。
 少なくとも銀河系では,生命が存在するのはこの地球だけかもしれない。

 著者の中沢さんは,こう述べています。

《・・・有機分子が出現して,高分子になり,さらに組織化して生命の発生にいたる,さまざまな化学反応が順序よく起こるためには,原料や触媒,あるいは反応の場の温度・圧力など,非常にたくさんの条件があります。しかもすべては都合の良い順番と時間でなければなりませんので,その星の歴史に大きく影響されます。歴史まで地球と同じことを条件に加えれば,そして恒星の数が天文学者の推定どおり2000億個であるなら,銀河系内の地球外天体に生命がある可能性は・・・おそらくゼロに近くなるのではないでしょうか》(84ページ)

 だとしたら,寂しい。
 どうなんだろうか……

 たまには, 「宇宙規模」のことを考えてみました(^^;)

(以上)  
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