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2013年03月07日 (木) | Edit |
「1人あたりGDP」というものを知るうえで,つぎの本は,おすすめです。「経済発展による暮らしの変化を視覚的に体験できる本」なのです。

マテリアルワールド・プロジェクト著『地球家族 世界30か国のふつうの暮らし』(TOTO出版,1994年,1893円+税)

地球家族表紙

この本は,世界の国ぐにの暮らしを撮った写真集です。ただし,特別な趣向をこらしています。最貧国から先進国までさまざまな経済発展レベルの30か国を訪ね,その国の「中流家庭」の家財道具を,可能なかぎり家の前に並べ,家族とともに記念撮影――そんなことをしているのです。

この本は,それぞれの国の1人あたりGDPを参照しながらみると,いっそう興味深いです。

撮影が行われたのは1993~1994年。そこでGDPなどの数字は,近い時期で切りのいい1995年のデータを使います。(1995年のドル換算の1人あたりGDP×同年の対ドルレート102.9円で円に換算)


30か国の中で最も貧しい,アフリカのエチオピア(1人あたりGDP1万円)の家財道具はつつましい。ヤギ,牛の毛皮,ラジオ,うすときねとかご……。家は寄せ集めの材木でできた「小屋」という感じ。あとでもくりかえしますが,これはあくまで1993~94年時点のものです。

エチオピア


インド(1人あたりGDP4万円)になると,家は土壁に瓦屋根と,だいぶ立派になります。金属製の食器・容器。自転車もある。でも,ほかに目立ったものはない……。

インド


タイ(29万円)だと,家電製品がかなりあります。テレビ,冷蔵庫,ラジカセ,扇風機。それから,スクーター。

タイ


アメリカ(290万円)をみると,その住居や家財のボリュームに圧倒されます。4人家族でクルマは3台。たくさんの家具や家電製品のほかに,写真に写っていない大型冷蔵庫,各種の電動工具やレジャー用品等々……

アメリカ
 
日本(390万円)の写真もあります。「日本の1人あたりGDPが(アメリカとくらべて)ずいぶん高い」と思われるかもしれませんが,1990年代後半から2000年ころの日本の1人あたりGDPは,世界のトップクラスだったのです(このことはまたあらためて)。

日本

東京郊外の一戸建てに住む4人家族。2階建て130平米に詰まっていた,ぼう大な家財道具。30か国のなかで,一番ごちゃごちゃしている。

うーん,たしかにこんな感じだなあ……。「経済の勉強会」で講師役をしたとき,この本をみせたことがありますが,日本の写真には,苦笑いやため息がおきます。

単に情景を撮るのでなく,「家財道具を家の前に並べる」という縛りを設けたのが,この本のポイントです。そのことで,各国の比較が可能になりました。

この本をながめていると,それぞれの「お国がら」など,いろいろ発見があるでしょう。でも一方で,「1人あたりGDPに応じた共通性」ということにも注目してみてください。たとえば家電製品。1人あたりGDPが同じくらいだと,似たようなものがそろっています。

このようにすばらしい本なのですが,残念なのは,1993年の撮影時点からもう20年も経った,ということです。この20年で世界は変わりました。

そこに写っているのは,今の人びとの暮らしではありません。変わらない部分もありますが,ちがう点がたくさんあります。

たとえば,貧しい国の人びとの服装は,今はかなり「近代化」しました。かつてのいかにも質素な,というのではなく,カラフルなTシャツだったりします(とくに子ども)。家電製品も,普及が進むとともに,グレードアップしました。発展途上国でも,ケータイ,スマホが相当普及しました。家や街も立派になった……そういう変化は,先進国よりも発展途上国のほうがずっと大きいです。

子どもにこの本をみせると「アフリカの子どもは,こういう服装なんだ」といった,誤解をする恐れが大きいです。だから,教材としては使いにくいです。

今となってはこの本は,「今日の世界がどうなっているか」ではなく,「1人あたりGDPの変化が何をもたらすか」という,理論的な視点で読む本なのです。だから,多少古くなっても読む価値があります。

でも,それでは楽しみが半分以下です。子どもや初心者には,入りにくい。ぜひ,この本のアップデート版(2010年代バージョン)をつくって欲しいものです。ただ,相当な予算や労力が必要なので,むずかしいとは思いますが。

(以上)
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