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2014年11月04日 (火) | Edit |
 東京・多摩からターミナル駅まで,片道約50分の電車通勤。
 あえて,やや空いている各駅停車に乗ります。
 そこでの読書は,毎日のたのしみです。

 最近読んだ本を紹介します。

●カフカ著,頭木弘樹編訳『絶望名人カフカの人生論』新潮文庫,2014

絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)絶望名人カフカの人生論 (新潮文庫)
(2014/10/28)
フランツ カフカ

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 カフカ(1883~1924)は現代文学に大きな影響を与えた作家。その作品は「不条理」「疎外」「孤独」「不安」などの言葉であらわされることが多い。たとえば代表作「変身」は,主人公が朝起きるとなぜか大きな虫になっている,という書き出し。

 今でこそ「20世紀を代表する作家」といわれるカフカですが,生前はほとんど無名でした。
 作家としては生活できず,会社勤めをしながら作品を書き続け,多くの作品を発表できないまま,結核のため40歳で亡くなりました。しかし,友人が彼の遺稿を出版し,それが後世で高い評価を受けたのです。

 そんなカフカの「名言」を集めた本。
 たとえばこんな感じです。

 将来にむかって歩くことは,ぼくにはできません。
 将来にむかってつまづくこと,これはできます。
 いちばんうまくできるのは,倒れたままでいることです。


 もうひとつ。

 すべておしまいのように見えるときでも,
 まだまだ新しい力が湧き出てくる。
 それこそ,おまえが生きている証なのだ。

 もし,そういう力が湧いてこないなら,
 そのときは,すべておしまいだ。
 もうこれまで。

 
 うーん,ネガティブですね・・・
 しかし,編訳者の頭木さんが言うように,こういうネガティブな言葉が,かえって元気を与えてくれる,という面はあると思います。研ぎ澄まされた感覚から出てくる言葉だからこそ,でしょう。絶望の底を垣間見たあと,光がさしている上のほうも見上げたくなる。

 世の中にあふれている「ポジティブな言葉」にうんざりしている人には,おすすめ。

 ***

●呉智英『吉本隆明という「共同幻想」』筑摩書房,2014

吉本隆明という「共同幻想」吉本隆明という「共同幻想」
(2012/12/07)
呉 智英

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 2012年に亡くなった,「戦後最大の思想家」といわれる評論家・吉本隆明。

 しかし著者は「吉本隆明って,そんなに偉いんですか?」と問いかけます。
 そして,吉本思想はわけのわからない言葉で書かれた「神学」である,というのです。
 「難解」とされる吉本の著作の一節をわかりやすく書きなおして「わかってしまえば,いかにたいしたことがない内容か」を示そうとしたりする。
 そして,こんなものをありがたがるのは「信者」だけ。「すごい」というのは「幻想」であると。

 著者の呉さんは「王様はハダカだ」と言っているわけです。

 帯にあるように,吉本隆明を読んでいなくても,たのしめます。
 思想とは何か,思想家が評価されるとはどういうことか,を考えさせてくれる本。
 
 ***

●孫埼亨『戦後史の正体 1945-2012』(創元社,2012)
●倉山満『検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む』(光文社新書,2012)


戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)戦後史の正体 (「戦後再発見」双書)
(2012/07/24)
孫崎 享

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検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む (光文社新書)検証 財務省の近現代史 政治との闘い150年を読む (光文社新書)
(2012/03/16)
倉山 満

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 『戦後史の正体』は再読。当ブログの記事で「戦争と格差」のことなどを書くうち,「日本を支配している,動かしている力」について考えたくなって,家の書棚で眠っていた本を取り出した。

 『戦後史の正体』は,第二次大戦後,米国が日本の政治に与え続けた「圧力」がテーマ。元外交官の著者だけに,さまざまな文献にあたりつつ,裏話や実体験などもまじえ,豊富な材料をもとに論じています。「米国からの圧力」について,これだけまとまった著書がなかったためか,出版当時,話題になりました。

 「米国が日本の政治に圧力を加えている」というのは,ある程度は想像がつきます。でも,この本にあるように詳細に論じられると,「これほどまでに・・・」というおどろきはあります。
 批判はあるかもしれない。でも,重要な視点を提示していると思います。

 『検証 財務省の近現代史』は,「日本を動かす」とされる,財務省(旧大蔵省)について,いわゆる官僚批判からは距離を置いた立場で論じています。

 印象的だったのは,第二次大戦と大蔵省の関係についてです。
 「軍部が暴走して,あの戦争に突入していった」というのが,私たちの常識でしょう。
 たしかにそれはまちがいではない。

 しかし,「軍部の力の前に,官僚機構の頂点である大蔵省もたちまち屈服し,大蔵省は『陸軍の財布』になってしまった」というイメージは,一方的である。
 昭和戦前期の日本は一定の法治国家であり,予算編成にかんする法的権限を握っている大蔵省の力は,戦争前夜であっても絶大だった,というのです。

 ただ,そのような「法治」を突き崩した力があった。
 戦争やその勝利を望む世論の力です。
 そのような「世論」を意識した政治家が力を持ち始めたところから,風向きが変わった。戦争を遂行する軍部の力もより大きくなっていった。官僚や軍人にも,戦争に懐疑的な人たちがいたが,戦争推進派が有力になっていった・・・

 私なりに要約すると,そのようなことが述べられています。
 「とにかく軍部が横暴で」という話は,戦争に突入した責任をすべて軍部に押しつけているのかもしれません。
 ほんとうは,国民も含め,社会のいろんな「力」が働いているのに,そのことを無視した見方ではないか・・・

 著者の倉山さんもいうように,戦後の日本の国を動かしてきた権力は,3つ。
 財務省(大蔵省)と自民党と,そして米国です。
 そして,その「権力」は,国民や大衆に大きく影響をうけている。
 読みながら,そんなことを考えました。

 ***

●広瀬洋一『西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事』(本の雑誌社,2013)

西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事西荻窪の古本屋さん 音羽館の日々と仕事
(2013/09/19)
広瀬 洋一

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 東京・西荻窪の古本屋「音羽館」は,住宅街と商店街の境目あたりにある,こじんまりしたお店。2000年にオープンして,今年で15年。本屋好きのあいだでは知られたお店です。
 このお店のご主人が書いた,開店までの道のり,日々の商売のこと。
 
 私も先日,妻と音羽館に行ってきました。
 この本の帯にある,穂村弘さん(歌人)の言葉どおり「誰が行ってもあそこには,必ず好きな棚がある」のを実感しました。

 音楽,美術,映画・演劇,サブカル,文芸,旅行,建築,歴史,人文,料理,マンガ,絵本・・・広くはないお店にいろんなジャンルの本がならなんでいます。
 「特徴がない」といえばそうかも。特別珍しい本があるわけでもない。でも,「手にとってみたい」と思える本があちこちにみつかります。値段もかなり安い。

 床がフローリングだったり,インテリア的にも,古典的な古本屋とはちがいます。心地よい空間。でも「いかにもおしゃれ」という感じではなく,そこが好きです。音楽好きの店主が選んだBGMも心地いい。

 私も妻も,それぞれ自分の好きな棚をながめながら,30分ほどお店で過ごしました。
 私は5冊ほど買って帰りました(安い本ばかりですが)。
 上記の『吉本隆明という「共同幻想」』も,その1冊。

 それから,この本『西荻窪の古本屋さん』も。
 さすがにこの本は古本ではなく,新刊として店頭に並んでいました。

 本書を読むと,「商いのよろこび」が伝わってきます。
 店主は,「本が好き」というより,「本を商うことが好き」なのだと。
 それが,商売にとって大事なのでしょう。
 古本屋をめざす人,小さなお店を開きたい人にも,参考になる。

 西荻窪は,音羽館のほかにもステキな新刊書店,古本屋があることで知られています。
 私も何軒かハシゴして,「たしかにそうだ」と思いました。
 また西荻に行ってみたいと思います。

(以上)
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