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2015年09月28日 (月) | Edit |
 先日,安倍首相が2020年に向けた経済政策の方針として「GDP600兆円を目標とする」と発言しました。
 GDPという数値を前面に出して,大きな政策目標を打ち出すのは,近年ではめずらしいのではないでしょうか。

 その意味で,目標の実現可能性はともかく,注目してよい発言だと思います。
 あらためて,GDPや経済のことについて考えてみるよい機会ではないかと。

 そこで,「そもそもGDPとは何か」という話をしたいです。
 以下は,これまでこのブログで以前にアップした記事を編集・改訂したものです。何回かのシリーズにするつもりです。

 再々放送になるのですが,何度も取りあげてよい内容だと思っています。
 それだけ,GDPの概念は私たちが社会を理解するうえで大事なものです。
 
 *** 

国内総生産・GDP

 あなたは,「GDPとは何か」と聞かれて,自信を持って「わかっている」と言えますか?

 別の言いかたをすれば,「〈GDPとは何か〉を中学生に説明できるか?」ということです。私の友人たちに聞いてみると,「だいたいのことはわかっている」という人でも,「子どもに説明するとなると,ちょっと自信がない」と言います。

 GDPというのは,英語の頭文字をとった言葉です。日本語では「国内総生産」。
 しかし,「コクナイソウセイサン」というのは長くて言いにくい。そこで英語の

 ross(グロス=英語で「全体の」「総」と言う意味)
 omestic(ドメスティック=国内の)
 roduct(プロダクト=生産)

の頭文字をとったGDPという方を,よく使います。


「総買い物額」のイメージ

 GDPとは,一言でいうと「国全体の,みんなの1年間の買い物の総額」のことです。

 つまり,みなさんがスーパーで食料品を買ったり,デパートで服や靴を買ったり,ローンを組んで自動車やマンションを買ったり,美容院に行ったり,旅行で電車に乗ったりホテルに泊まったり……そんなふうにして,日本じゅうで1年間に使った金額です。
 この「買い物額」の合計(総買い物額)がGDPです。

 「四半期(3ヶ月)」のGDPというのもありますが,より一般的なのは「1年間」でみた数字です(この記事では「GDP」というときは,とくに断らないかぎり1年間のGDPです)。

 「何を買うか」は,モノを買う場合とサービスを買う場合があります。食料品や洋服や自動車やマンションを買うのは,モノを買うこと。髪を切ってもらう,電車に乗る,ホテルに泊まる,というのはサービスを買っています。理容のサービス,輸送のサービス,宿泊場所の提供というサービスです。

 「GDPは総買い物額である」というのは,うんと単純化した説明です。補足すべき点もあります。しかし,最初に入るときのイメージとしては,とりあえずこれでいいのです。

(補足,ある程度の知識を前提にした説明です)
 この説明について,「一般的な説明とはちがう,と感じる人もいるかもしれません。よくある入門的な説明では「GDPとは生産された付加価値の総額」と述べることが多いです。もちろん「付加価値」という説明は正しいのですが,「付加価値」の概念は,まったくの初心者にはとっつきにくいと思います。
 GDPには,生産(付加価値)・支出・所得という3つの面があります。そのなかで初心者に最もイメージしやすいのは,支出つまり買い物ではないかと思っています。また,「GDPの最も多くを占める個人消費が・・・」「経済成長のためには,投資がもっと増える必要がある」などというときは,「支出」としてのGDPを論じています。経済の議論のなかでは,「支出としてのGDP」が論じられることが多いのです。



日本のGDPの額

ここで,問題です。

【問題】
現在(2010年代)の日本のGDPは,どれくらいだと思いますか?

予想
ア.50兆円 イ.100兆円 ウ.300兆円 エ.500兆円

***

 2012年度の日本のGDPは,約470兆円です(以下,「約」は略します。こういう議論では詳しい数字は不要です。最初の一ケタか二けたで十分)

 これは「名目値」(名目GDP)といって,物価変動を計算に入れないナマの数値。 「名目値」に対するのは,物価変動をもとに加工した「実質値」(実質GDP)というもの。たとえば,GDPの名目値が年間で1%増えたとしても,物価が1%上昇していれば,実質値でみればGDPの増加は0%となる。
 今回安倍首相が目標にかかげた「600兆円」は,名目値です。

 日本のGDP(名目値)のピークは、1997年の520兆円でした。
 それからみれば50兆円くらい減っているのです。
 
 「470兆円」というのは,「500兆円まではいかない,それをやや割り込んだ数字」と理解すればいいでしょう。

 日本のGDPは470兆円。
 
 これは,「日本の人口は1億2800万人(2012年現在)→1億3千万人」という数字とともに,ぜひ知っておいてほしい数字です。

日本経済を知る最重要の数字
 ・日本の人口 1億3千万人
 ・日本のGDP 470兆円



政府が算出する数字

 そもそも,GDPは,どうやってわかるのでしょうか?
 GDPは,政府が算出する統計数値です。しかし,政府が「すべての人の買い物を調べて合計している」わけではありません。

 そのかわり,政府はモノやサービスの売り手である企業に対して,売上などの状況を調査しています。各社の会計帳簿にもとづいたデータです。企業の売上は,結局はお客さんであるみなさんの買い物です。だから,そこからGDPがわかるのです。
 このほかにも,政府は国の経済や社会の様子をつかむため,つねにいろいろな統計調査を行っています。

 GDPは,企業の売上をはじめとするさまざまな調査のデータをもとに,政府の専門家がいろいろな計算をして出した数字です。これには,たいへんな手間がかかります。だから,信頼できる数字を出すには,しっかりした政府や企業の組織が,社会に存在していることが必要です。

 ***

1人あたりGDP

 GDPは,「国全体の,みんなの買い物額」です。これを国の人口で割った「1人あたりGDP」という数値があります。これも,社会や経済を知るうえで重要な数字です。
買い物の額というのは,実際には人によってまちまちですが,平均値を求めたのが,1人あたりGDPです。

 2010年度の日本の「1人あたりGDP」を計算してみます。

 GDP470 兆円÷1億3千万人=およそ360万円/人
 (465兆億円) (1億2750万人)

 「360万円」というのは,さらにドンブリで「300何十万円」でもいいです。
 この計算結果も,「最重要の数字」のリストに加えましょう。

日本経済についての最重要の数字(2012年)

 ・日本の人口 1億3千万人
 ・日本のGDP 470兆円
 ・日本の1人あたりGDP 360万円/人 


 1人あたりGDPは「その国の経済発展の度合い」を測るモノサシとして,使われています。これに対しGDPは,「その国の経済の大きさ」を示す数値です。

 日本の1人あたりGDPが「370万円」というのは,世界のなかで上位のほうに位置します。アメリカ,ドイツ,フランス,イギリスといった世界のおもな先進国の1人あたりGDPも,日本円に換算して300万~400万円台ですので,それと肩を並べる水準です。

 これらの先進国にくらべ,たとえば中国の1人あたりGDPは日本の8分の1ほどの水準です。お隣の韓国は日本の半分ほど。

 このように日本の1人あたりGDPは世界の中で高いほうです。とはいえ,一昔前より「順位が下がった」といわれるし,事実そうなのですが,ここでは立ち入りません。

 また,世界には1人あたりGDPが「数万円」という国もあります。アフリカやアジアで「最も貧しい」と言われる国は,その水準です。


数字の背後に,暮らしや社会がある

 「1人あたりGDPが大きい」ということは,その国では多くの人が活発な経済活動をしているということです。たくさんの高価な買い物をしたり,いろんな場所へ仕事や旅行で出かけたりする人が大勢いるのです。

 そしてそれは,そんな「人びとの活発な活動」を支えるさまざまな社会のしくみや設備が整っているということでもあります。
 無数の立派な工場やオフィス。国のすみずみまでいきわたった交通・通信網。いろいろ不満や問題はあるにせよ,まあまあまともに機能する政府と行政機関。さまざまなモノやサービスが並ぶショッピングセンターや繁華街。家庭にはモノがあふれている……

 そして,それだけの設備やモノを作り出せるだけの発達した産業があります。
 このような国が,一般に「先進国」といわれるのです。日本はそのひとつです。

 一方,1人あたりGDPがごく小さい国では,多くの人びとは,高価な買い物をすることも,自分の住む村や町を出ることも,あまりありません。人びとが活発に動きながら暮らすためのしくみや設備も不十分です。家財道具も,つつましい。

 このような国は,「発展途上国」といわれます。
 このように,「1人あたりGDP」という数字の背後には,その国の暮らしや,社会全体のあり方が存在しているのです。

 ***

 さきほど,「GDP÷人口=1人あたりGDP」である,と述べました。ここからちょっと踏みこんで,つぎのような式で,国の経済をイメージしてみましょう。

1人あたりGDP × 人口 = GDP(その国の経済)

 日本の1人あたりGDPは360万円。人口は1.3億人。
 これを,こう考えるのです。

「年間に1人あたり平均で360万円ほどの買い物をする国民が,1.3億人集まって,日本経済ができている」

 それだけの活発な経済活動をして暮らす人たちが1.3億人集まっている,ということです。その結果,GDPで400何十兆円という経済になっている。

 結局のところ,「1人あたりGDP×人口=GDP」という式は,「1人1人の暮らしが集まって,その国の経済ができている」といっているのです。

 1人1人の暮らしが集まって経済はできている。

 これは,すべての基本となる,だいじなイメージです。「経済なんて,むずかしく考えなくても,要するにそういうものなんだ」と思ってもらってもいいです。

 そのイメージを式であらわすと,「1人あたりGDP×人口=GDP」となるわけです。

 1人あたりGDP,人口,GDPの関係を図で表すと,こうなります。タテ軸に人口,ヨコ軸に1人あたりGDPを取ると,国のGDPは,つぎの図のような長方形の面積であらわすことができます。

1人あたりGDP×人口

 ふつうは,「GDP÷人口=1人あたりGDP」という説明だけなのですが,「1人あたりGDP×人口=GDP」というのは,私なりの独自な見方だと思っています。ほかではまずみかけません。「ある経済的な活動レベル(平均値)をもつ個人の集合体」として国の経済をみるわけです。

 その「経済的活動レベル」をあらわす代表的な数字が「1人あたりGDP」ということです。

(以上)
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