FC2ブログ
2015年09月30日 (水) | Edit |
 前回の「GDPとは何か」の続きです。
 安倍総理の「GDP600兆円をめざす」という発言をきっかけに,GDPについて考えてみよう,基本的なことをについて知ろう,という企画です。前回の記事はすぐ下にあります。

 ***

みんなの買い物の「みんな」とは?

 これまでに「GDPとはみんなの買い物の総額である」「日本の1人あたりのGDPは360万円である(2012年度)」ということを述べました。

 それに対しこんな疑問を抱く人もいます。「1人あたり360万円ということは,4人家族だと1400万円。ほんとにそんなに買い物するの?」

 じつは,まだ大事なことを説明していませんでした。それは,「みんなの買い物」というときの「みんな」というのは,私たち1人1人のような「個人」だけではない,ということです。

 経済において「買い物をする存在」は,大きく分けてつぎの3つがあります。

 ①個人(家計)  ②企業  ③政府(国や自治体)

 この「買い物をする存在」のことを「経済(の)主体」といいます。「経済における行動の担い手」ということです。

 企業というのは,製品やサービスをつくったり売ったりするのが仕事ですが,その仕事をするためにパソコンを買ったり,本社のビルを買ったり,工場を建てたり機械を買ったり,いろんな「買い物」をしています。工場の建設のような企業が事業を拡大するための大きな買い物を「設備投資(または単に投資)」といいます。

 政府も同じことです。役所にある机もパソコンも,買ってきたものです。道路をつくったり,学校や病院を建てたりといった公共事業は,政府の大きな「買い物」といえるでしょう。何かの公共サービスの活動を生み出したときは,そのサービスを行う人たちに政府が支払った報酬や賃金も,GDPの世界では「政府の買い物」としてカウントします。

 「個人」は経済学では「家計」といいますが,とっつきにくい言い方なので,この本では「個人」にします。
また,ここで「企業」というのは,純粋な民間企業だけでなく,政府や自治体の経営する公営の企業もふくみます。

 ここまでをまとめると,こういう「公式」になります。

日本の総買い物額
 GDP = 個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物


 「その国の経済は,個人と企業と政府の買い物が合わさってできている」といってもいいです。
「買い物額が1人平均年間360万円というのは多すぎるのでは?」と思った方は,たしかにそのとおりで,この「360万円」には,企業や政府の分もふくまれていたのです。だから,「個人の買い物の1人あたり平均」は,360万円よりは少ないです。


主体別の内訳

 では,日本の総買い物額=GDPに占める「個人」「企業」「政府」のそれぞれの割合は,どうなのでしょうか?

【問題】
現在の日本のGDPで,最も多くの割合を占めているのは,つぎのうちのどれだと思いますか? 

予想
ア.個人による買い物
イ.企業による買い物
ウ.政府による買い物


***


 つぎの帯グラフは,今の日本のGDP=総買い物額の内訳です。個人による買い物がGDP全体の60%を占めています。GDPの最も多くの部分は,私たち個人の買い物が占めているのです(2010年度のデータですが,最近もこの割合は大きく変わりません)。

GDP内訳

 ここでいう「個人の買い物」には,「個人消費」と「住宅の購入」があります。住宅の購入は,統計のうえでは,日常的な買い物である「消費」と区別するのです。ただ,住宅購入の額は,個人消費よりずっと少ない(20分の1ほど)ので,個人の買い物≒個人消費と言っていいです。

 日本の1年間の個人消費(+住宅購入)の総額は,286兆円。1人あたりだと,286兆円÷1億2800万人≒220万円。
 これが「個人の年間の買い物額の平均」なら,多くの人の生活感覚ともそんなにズレていないのではないでしょうか。

 なお,個人,企業,政府の買い物のほかに「非営利団体」による買い物もあります。「非営利団体」とは,病院,学校,宗教法人などです。

 また,GDPには「純輸出」という項目もあります。年間の輸出額から輸入額を引いたものです。外国の人(個人,企業,政府)が日本でつくりだしたモノやサービスなどを「買い物」してくれた額,とイメージすればいいでしょう。純輸出じたいが日本のGDPに占める割合は今は高くありませんが,輸出の動向は経済に大きな影響をあたえます。多くの企業の設備投資などに関わってくるからです。

 そこで,GDPの内訳の式をつぎのように改訂します。

GDP=個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物+純輸出(外国からの買い物)


国の経済の内訳を知る

 「景気がいい・悪い」というのは,「みんなの買い物額=GDPが増える傾向にあるか,減る傾向にあるか」ということです。

 そして,GDPの最も大きな部分は,個人の買い物(「個人消費」というのと,ほぼイコール)なのです。だから,景気がよくなる・悪くなるということに対して,私たち個人の動きは,きわめて大きな影響をあたえるということです。

とにかく,この「公式」は重要です。

GDP=個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物+純輸出(外国からの買い物)

 こういう内訳を知るのが重要なのは,国の経済がどういう要素で成り立っているかを知ることだからです。それは,景気低迷などの問題があるときに,どこに原因があるのか,どういう対策をとるべきか,といったことを考える入り口になります。

 会社の経営でも,会社全体の数字だけでなく各部門別の売上などの数字をみて,どの部分に問題があるのかを把握しようとします。それと同じようなことです。

(以上)
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック