2017年01月09日 (月) | Edit |
私が昨年出版した『となり・となりの世界史』(日本実業出版社)では、「5000年余りの世界史において、世界の繁栄の中心(覇権国)といえる大国・強国の移り変わり」を追いかけることで、世界史を「ひと続きの物語」として述べることをめざしました。

具体的には、西アジア(メポソタミア・エジプトなど)→ギリシア→ローマ→イスラムの国ぐに→西ヨーロッパ(詳しくみるとスペイン・イタリア→オランダ→イギリス)→アメリカと、世界の繁栄の中心は移り変わってきました。
今の世界は、1900年代前半から続くアメリカの時代です。

アメリカの時代はいつまで続くのか?

アメリカが総合的にみて世界最強の大国である、という状態ならば、これからも何十年かは続くでしょう。もっと続く可能性も高いと思います。

しかし、その圧倒的な力で世界を仕切るという状態(それが「覇権」)は、これからますます明らかに後退していく。あと20年もすると、かつてのようなアメリカの覇権は過去のものになる。少なくともすっかり様子が変わっている。

あいまいでおおざっぱな予想ですが、ひとつの視点としては意味があるでしょう。私たちのほとんどが生きているうちに、大きな変化が一区切りついているのでは?という問いかけでものごとをみてはどうか。

アメリカの覇権の後退ということは、1970~80年代にはすでに言われてはいました。
たしかにその頃、アメリカの勢いは1950~60年代よりは後退していました。その一方で「アメリカの後退」という見解には、圧倒的な大国に反発する感情もあったように思います。「こんな国、衰退してしまえ」という願望が混じっている面もあった。

だから、本当に後退するまでには、まだ時間がかかりました。1990年代には、ライバルだったソヴィエト連邦の崩壊によって、唯一の超大国となったアメリカがまさに世界を制覇したような状況になりました。

しかし、そのようなアメリカの「世界制覇」は、10年ほど続いただけでした。

2000年代(ゼロ年代)初頭の、9.11テロへの対抗・報復として行ったアフガニスタン侵攻やその後のイラク戦争は、大きな転換点でした。このとき、アメリカはいろいろな誤りを犯した。その後、1990年代にひとつのピークに達したアメリカの覇権がさまざまな面で崩れていきます。

一方で、中国を筆頭とする新興国の発展がすすみ、GDPなどでみた世界経済でのアメリカのシェアが小さくなる、という流れも2000年ころから明確になりました。
今現在の世界の、アラブ・中東の混乱した状態や、中国が新たな超大国として自己主張を強めていることの直接の出発点は、2000年代初頭にあります。

そして、2000年代初頭のアメリカは、勇ましくアフガニスタンやイラクを攻めたのですが、今のアメリカはシリアなどの中東の情勢に対してかつてのような積極的な行動はとれないでいます。中東で積極的に動いているのは、ソ連崩壊後の混乱から一応は復活してきたロシアだったりする。

トランプのいう「アメリカ優先」は、「覇権国として世界を仕切るスタンスを見直す」ということです。近年は米国民のあいだで「世界でのリーダーシップよりも自国の問題に専念すべきだ」という世論が高まってはいました。トランプの当選も、そのような流れが生んだといえます。やはり、こういう大統領が出てきたことは、大きな転換点でしょう。

たしかに、昔のアメリカも自国優先の孤立主義をとっていました(「モンロー主義」という)。しかしそのような内向き志向が優勢だったのは1900年代前半までのことで、それ以前のアメリカは世界の中心=覇権国ではありませんでした。

「アメリカ優先」は、1900年代半ばの「偉大なアメリカ」の復活ではなく、「覇権国となる以前のアメリカへの回帰」を意味するのです。つまり「世界トップの経済力や軍事力を持つ大国には違いないが、世界を仕切るような“中心”ではない」ということ。それがこれからのアメリカのポジションなんだと。

現実の流れとしてそうなりつつあったことを、トランプの主張は、基本方針として確認していることになります。そのような方針は、現実の流れを後押しするはずです。つまり、世界の「中心=覇権国」としてのアメリカの役割の大幅な後退という流れです。

ほんとうは「再びアメリカを偉大な国にする」ではなく、「(100年以上前の)“ふつうの大国”のアメリカに回帰する」というべきです。でも、それではあまり輝かしい感じがしないので、選挙に勝てませんね。

(以上、つづく)
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