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2017年11月21日 (火) | Edit |
権力者の汚職や不正には、家族や親しい人のため便宜を図ったものが多いです。

最近では、我が国の首相が友人の学校法人のため、隣国の大統領が姉妹同然の親友のため、不正を行った疑惑が持ち上がりました。「加計学園」のことは、つい最近のニュースでも取りざたされています。

おそらく、権力者が汚職をしないためには、家族も友もいないほうがいいのです。故郷や地元のつながりも、絶つべきです。

数百年前のオスマン帝国では、その考え方をほんとうに実行しました。

オスマン帝国は1500~1600年代に最も繁栄したイスラムの国家です。今のトルコ共和国にあたるアナトリア地方を根拠地として発展し、エジプト、シリア・パレスチナ、イラクなどのアラブ世界の広い範囲を支配した大帝国でした。

オスマン帝国では、キリスト教圏のバルカン半島などから少年を一種の奴隷として強制的に連れてきて、イスラムに改宗させたうえでエリート教育を施し、軍人や官僚として重用したのです。

これらの軍人・官僚たちは、結婚して家族を持つことは原則禁じられていました。故郷との関係も絶たれています。家族や故郷の絆がなければ、私欲を持たず公務に忠実であり続けるはずだ、というわけです。

このような、少年たちを強制的に集める制度を、「デヴシルメ(“強制徴用”の意)」といいました。デヴシルメによって集められた人材は、君主に直属する軍団の中核となりました。「イェニチェリ(“新しい兵隊”の意)」と呼ばれた軍団です。また、高級官僚や宮廷の侍従として重要な役職に就く者もいました。

イェニチェリ軍団は、目論見どおりに見事な働きをして、オスマン帝国の発展を支えました。

しかし、この制度にはやはり無理がありました。人間本来の性質に反するところがあった。

後の時代になると、デヴシルメで集められた軍人や官僚たちは、禁止だったはずの結婚をして家族を持つようになりました。子供に自分の地位を継がせることも行われました。それとともに、イェニチェリは腐敗にまみれていったのです。

今の時代は、デヴシルメのような非人道的なことは、もちろん許されません。ただし現代でも、一部のテロリストは少年たちを誘拐して兵士に仕立てあげたりしています。人間的な絆を絶たれた戦争マシーンの養成。これはきわめて非道な現代のデヴシルメです。

でも、未来には人工知能によるロボット官僚が実現するでしょう。

彼らは汚職とは無縁です。結婚しないのだから不倫もしないでしょう。忖度(そんたく)も苦手です。彼らに任せれば、きっと清潔で信頼できる政治や行政が実現するはず。

なお、ロボット官僚よりも先に、ロボット兵士の軍団は一般的なものになるでしょう。こちらはもう実用化の段階に入ろうとしている。

ロボット官僚を、幼稚なマンガ的空想と笑うことはできないはずです。世界史上におけるオスマン帝国の実例があるからです。

デヴシルメ制度によるイェニチェリ軍団は、当時の近代以前の技術でも可能なやりかたで「ロボット官僚」をつくりだしたのだといえます。人間にとって、とくに権力にとって、「ロボット官僚」は普遍性のある一種の「理想」なのです。

しかし、人間的な絆を一切持たない者に権力を委ねるのは、どうなのでしょうか? ちょっと恐ろしい感じもします。天涯孤独のヒトラーは、汚職をしなかったといいますし……

自分ただ1人のほか、守るべきものが何もないエリートが道を外れた場合、それはもう手がつけられないことになるでしょう。節度や遠慮のない堕落・暴走になってしまうはずです。「世の中の人間と自分とは、もともとなんの関係もないんだから、何をしたって構うものか」という感情が働いてしまうのです。

***

世間のことを、こんなふうに「世界史」のフィルターを通して考えてみるのは、意味があると思います。世界史は、社会のいろいろなことを考える道具になります。

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(以上)
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