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2017年12月07日 (木) | Edit |
11月19日(日)の日経新聞で、こんな記事がありました。
見出しはこうです。

“歴史の教科書 龍馬が去る?”
“ガリレオも…高校の用語半減案”
“暗記→流れ学ぶ教育重視”


記事の冒頭には、こうあります。

“高校の日本史、世界史で学ぶ用語を現在の半分弱の1600程度に減らすべきだとする提言案を高校、大学の教員団体がまとめた。暗記項目を絞り、社会の成り立ちを流れで学ぶ歴史教育を重視する……教科書会社の対応が注目される”

記事によれば、今のおもな日本史・世界史の教科書には3400~3800の用語がのっているのだそうです。これは10年前とくらべ1割増で、1950年代の3倍弱。これを思い切って整理しよう、というわけです。用語が多すぎて、先生も生徒もうんざりしているのです。

“この提言案をまとめたのは高校、大学で歴史教育に携わる教員らでつくる高大連携歴史教育研究会(高大連)”という組織だそうです。私(そういち)は存じあげないのですが、この新聞記事や団体のホームページをみると、私も見聞きしたことのある学者のお名前などがあります。一定の影響力があるのでしょう。

その「削減案」の中身については、記事はこうまとめています。

“高大連は、「教科書本文に必ず載せ、入試でも知識として問える用語」を目安に、約1年かけて用語を精選。特に人名や文化に関する用語は、知名度が高くても歴史上の役割を考慮して大幅に減らした。「上杉謙信」「坂本龍馬」「ガリレオ・ガリレイ」「マリー・アントワネット」などは(教科書に載せるべき用語から)外れた”

このような検討、私も意味があると思います。

しかし、ほんとうは「半減」「○割減」以上のことを考えるべきです。既存の体系を一度置いて、ゼロから「限られた時間でぜひとも教えるべきことは何か」について考えるのです。

それによって用語の数は、ヒトケタ少なくなったり、何十分の一になったりする可能性があります。

学問や教育が進歩すると、知識の蓄積は膨らんでいきます。こんなに増えていって、どうなるんだろうと不安になるかもしれません。

しかし、その進歩が一定の高いレベルまで達すると、知識は整理されていくはずです。

膨大な知識が高いレベルの視点からまとめられ、かつて大事だと思われていた多くのことが、枝葉として位置づけられ、大きな幹が浮かびあがる。その結果、教育の場で教えるべきことがらも大幅に整理される。「幹」をまず教えよう、となるわけです。学問や教育の体系が洗練される、ということ。

手前味噌ですが、拙著『一気にわかる世界史』(日本実業出版社)は、徹底的に「ゼロベースから、多くの人が知るに値する情報だけを伝えよう」という姿勢で書きました。この本に出てくる用語(事件名や人物名など)は、教科書の数十分の一です。

ところで、この歴史教育にかんする新聞記事のヨコには“生物は4分の1に削減 日本学術会議指針”という記事がありました。“高校の生物では、重要用語を現在の2千から4分の1に減らすべきだとする指針を日本学術会議の生物科学分科会がまとめた”とのこと。

日本学術会議は、高大連よりも有力な権威です。
おそらく、自然科学の世界の認識のほうが、歴史研究・教育よりも一歩先をいっているのでしょう。

「4分の1」に削減、というならヒトケタ減らすのも可能でしょう。この数十年の生物学の急速な進歩や洗練を反映した動きだといえる。

「学問・科学の進歩による知識の洗練」という観点は、重要です。

生物学でおこっていることは、その良い例です。歴史学者や先生は、自然科学やその歴史にもっと目を向けたらいいはずです。でも、そこらへんはやや弱いのでは。ガリレオを教科書から外すなどという見解をみると、そう思います。

この話題はテレビのワイドショーでもとりあげれられていて、解説の歴史研究家の方が「私の推測だが、ガリレオについてはこれといった発見をしていないから、と考えたのでは」と述べていました。

いずれにせよ、ガリレオはそれほど重要ではない、ということでしょう。実験を通じて力学や地動説を確立した、つまり近代科学の扉をひらいた人物をそんなふうに評価するのは、やはりどう考えても無知か、歪んだ見識です。

科学の歴史についてそんな理解では、「学問・科学の進歩による知識の洗練」ということも、とうていわからないのでは、と心配になります。科学はいうまでもなく、現代の社会に根底から影響をあたえています。科学の歴史を少しは知らなければ、世界史がわかるはずもありません。

(以上)
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