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2013年03月16日 (土) | Edit |
日本経済新聞の本日3月16日朝刊のトップは,「TPP交渉参加 表明」。
 
TPPとは「環太平洋経済連携協定」の英語の略。日経新聞の「きょうのことば」の説明を借りれば,《太平洋を取り囲む国々で,モノやサービスをやりとりする際の関税や規制などの障壁をできるだけ無くし,経済の規模をお互いに膨らませようとする枠組み》。この「枠組み」を,アメリカ主導でつくろうとしているわけです。そこに日本も参加する。

では,問題です。

去年12月のあるアンケート調査で,いろんな世代の人に「日本のTPP参加」についての意見をききました。選択肢は「反対」「何ともいえない」「わからない」「賛成」。

このアンケート結果は,世代別に傾向が分かれました。では,「TPP参加に反対」の意見が多かったのは,つぎのどちらだったと思いますか?

ア.20代以下の若年者世代  イ.30代以上の大人世代

***
 
今朝の日経1面の特集記事「日本を変えるTPP」には,つぎのようにありました。

《TPPへの世代別の評価は微妙に違う。一橋大学の青木玲子教授らが昨年12月の衆院選の直前に実施したアンケートによると,30歳以上はほぼTPP賛成論が反対論を上回った。逆に12~19歳,20~24歳の若者層は反対が賛成を大きく上回り,抵抗感が強い。》

アンケート調査の「原典」がみたいと思ってネットを検索したところ,つぎの記事をみつけました(青木玲子・上杉道徳・西條辰羲「若者と有権者の政党政策選択・ドメイン投票方式・将来省  第46回総選挙前々日の有権者と若者のアンケートから」2013年1月16日,こちらを検索)

このアンケートはつぎの5つのグループから成る3000人余りから回答を得たものです。アンケートとしてはまずまず使用にたえると思います。

1.未成年の子供がいる有権者 回答1030件 平均年齢40.2歳
2.子供が成人している有権者  515件 61.4歳
3.子供がいない有権者  515件 37.6歳
4.16~17歳  515件 16.6歳  
5.18~19歳  515件 18.6歳

おおむね,1.2.は中高年以上の大人世代,4.5.が若者(若年)世代,3.はその中間といえるでしょう。

そして,TPP参加について,「反対」「何とも言えない」「わからない」のどれか?という質問に対してはこうでした(数字は%。「賛成」はレポートには結果の表示がないが,筆者そういちが計算)。

全体の合計  反対23.0 何とも41.9 わからない10.4 賛成24.7 合計100.0(以下同じ)

(以下,カッコ内は平均年齢)
1.グループ(40.2歳) 反対19.2 何とも45.4 わからない9.8  賛成25.6    
2.グループ(61.4歳) 反対13.2 何とも40.0 わからない5.0  賛成41.8
3.グループ(37.6歳) 反対24.7 何とも42.5 わからない8.7  賛成24.1
4.グループ(16.6歳) 反対29.3 何とも40.2 わからない16.1  賛成14.4 
5.グループ(18.6歳) 反対32.4 何とも37.9 わからない13.0  賛成16.7

どうでしょうか。若者世代での「TPPに反対」の割合は,中高年以上の大人世代よりも,高くなっています。わずかな違いではなく,かなり明確な差があります。日経新聞の記述にたいし,年齢層の切り方がちがうのが気になるのですが,とにかく「TPPにたいする世代間のギャップ」はみられるわけです(私がみつけた以外に,もっと詳細なレポートがあるのでしょうか?)。

このアンケートには,消費税や原発問題など,ほかのことがらにかんする質問もあり,そこにも一定の世代間のちがいがみられます。そのなかでもっとも明確な世代ギャップがみられるのが,このTPPにかんするところでした。

***

この数字をどう解釈するか。日経新聞の同記事では《長引くデフレで好景気の記憶がない若年層は,TPPに雇用機会が奪われると不安視している。》と述べています。

これは,アンケート結果からみた「仮説」的な解釈です。この解釈が正しいかどうかは,また別の調べが必要です。でも,私も十分ありうる話だとは思います。

もし,「TPPで自分たちの雇用が奪われるかも」と考える若者がかなりいるのだとしたら,それはどうしてなのでしょう?
 
彼らは,「TPP⇒ 国全体の経済活性化⇒ 雇用拡大」という図式は連想はしないわけです。この「図式」は,経済について一定の知識がある人のあいだでは,かなり明らかなことです。少なくとも「多数派」の意見ではある。私も,基本的には正しいと思います。

もちろん,「全体」でよくなる,といっても部分的には不利益を受ける人たちはいます。その立場から反対するのは,わかります。

でも,若者のほとんどは,そんな「利害」とは直接は関係ありません。それでも,「TPPに反対」の人が大人世代よりも多くいるのです。国全体の経済が少しでも活性化するなら,それは若い人の雇用拡大にもつながるはずなのに,そうは思っていない。

「TPPで,大企業とか,一部の連中がもうかっても,自分たちには関係ない」ということでしょうか?

でも,その一部の企業や人びとがもうかって,より多くの投資や買い物をするようになれば,それが社会のより広い範囲に波及していくこともある……そんなイメージはないのでしょうか?

イメージがないとしたら,経済にたいする基本的な知識が欠けているのかもしれません。
 
具体的な材料もないまま「若者のアタマの中」をいろいろ推測してもしかたないので,このへんでやめておきます。

この数字についての解釈は,ほかにも考えられます。「リタイアした人が多い高齢者は自由貿易によってモノの値段が下がることを高く評価するが,若い世代はそうでもない」ということもあるかもしれません(これは青木教授らのレポートにもあります)。

***

とにかく感じるのは,私たちには「経済の基礎」についての勉強が必要だ,ということです。

学校教育では,これはほとんどわれていません。テレビや新聞は,毎日のニュースを追いかけるのに忙しく,系統だった基礎については教えてくれません。

だから,若者だけでなく,大人だって,ふつうは経済のことなんてわかりません。それでも,大人のほうが,社会経験や独自の勉強によって,いくらか経済を知っています。

大人と若者では,経済や社会にたいするイメージにかなりの格差があります。若者は,かなり勉強のできる人(たとえば有名大学の学生)でも,政治経済のことだと,多くの大人があたりまえに知っていることを知らないのです。たとえば「バブル経済はいつのことだったか」「田中角栄は自民党の政治家」ということを知らなかったりする。

このあたりは,私は若い人と話す機会が多い(若い人向けの職業相談の仕事をしている)ので,実感があります。

「TPPへの反対が若者のあいだで多い」ということについて,今日の日経新聞は「若者は好景気のころを知らないからだ」と解釈していました。しかし,そもそも「若者は大人以上に経済を知らない」ということも大きいのではないかと,私は感じています。

(以上)

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