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2019年10月23日 (水) | Edit |
デヴィッド・グレーバーという文化人類学者がうち出した「どうでもいい仕事」という概念がある。bullshit jobsという英語の訳だが、「要らない仕事」と言ってもいいかもしれない。

彼によれば、今のホワイトカラーの仕事の多くが「どうでもいい仕事」である。たとえば管理職、人事・広報・コンプライアンス(法令順守)の部署、コンサルタント、金融関係のプロたち……これらの多くはそれにあたる。

そして、こうした仕事に就く人たちは本音では「自分は人の役に立っていない」と感じている。それを示すアンケート結果もある。にもかかわらず、高給をもらっていたりする。

現代社会では「どうでもいい仕事」は増えているのだという。グレーバーは、美術の世界はひとつの典型だという。昔はアーティストと画廊のオーナーがいただけだったが、今はキュレーターなどのやいろんな専門家が美術作品の取引に関わっている。

たしかにそうだ。昔はコンプライアンス部なんて会社にはなかった。人事や広報のスタッフはもっと少なかった。こんなにさまざまな分野のコンサルタントはいなかった。

今の社会は「どうでもいい仕事」「要らない仕事」が蔓延しているのだ。

そして、自分の仕事をむなしいと感じる高給取りが多くいる一方、社会に必要な、ニーズの高い仕事をする人たちが不遇な目にあったりしているのではないか。

グレーバーも言うように、生産現場などのブルーカラーの仕事は、この何十年かで効率化がすすんで「どうでもいい仕事」はあまり存在しなくなった。しかしその現場では多くの非正規社員が働いている。

医療や介護の現場は、いつも人手不足。本来なら「どうでもいい仕事」が存在する余地はないはずだが、いろんな記録や打ち合わせなどの業務負担が大きく、本来の業務にしわ寄せが生じることもあるという。記録も打ち合わせもたしかに必要な仕事だが、やりすぎると「どうでもいい仕事」の側面が生じてしまう。

なんだかまずい状況だ。

なお、グレーバーの「どうでもいい仕事」に関する著書は、まだ日本語版が出ていない。私は、大野和基によるインタビュー集『未完の資本主義 テクノロジーが変える経済の形と未来』PHP新書(グレーバーへのインタビューが収録されている)で、この概念について知った。

(以上)
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