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2013年03月23日 (土) | Edit |
「GDPでみる経済入門」のつづきです。

このシリーズで使っている「GDPとは総買い物額である」という言い方は,一般的なものではありません。私独自の表現です。一般の経済用語では「総買い物額」でなく「総支出」といいます。それを初心者に少しでもイメージしやすいように「総買い物額」と言い換えているのです。

何でもないことのようですが,こういうことは教育・啓蒙の文章ではだいじなところです。

「総買い物額(総支出)」ではなく,別の説明や言い方をしている著者も多いです。まず,「総付加価値」あるいは「総所得」としてGDPを説明するのです。しかし,私はやはり「総買い物額」ということをまず述べたほうが(初心者への説明としては)いいと思っています。

「総支出」とか「総付加価値」とか「総所得」とか,いきなり出てきて戸惑われたかもしれません。このあたりは,また別の回できちんと述べますので。

***

4.「総買い物額」の内訳

みんなの買い物の「みんな」とは?
これまでに「GDP(国内総生産)とはみんなの買い物の総額である」「日本の1人あたりのGDPは370万円(400万円弱)である」ということを述べました。

それに対しこんな疑問を抱く人もいます。

「1人あたり370万円ということは,4人家族だと1500万円弱。ほんとにそんなに買い物するの?」

じつは,まだ大事なことを説明していませんでした。それは,「みんなの買い物」というときの「みんな」というのは,私たち1人1人のような「個人」だけではない,ということです。経済において「買い物をする存在」は,大きく分けてつぎの3つがあります。

①個人(家計)  ②企業  ③政府(国や自治体)

この「買い物をする存在」のことを「経済(の)主体」といいます。「経済における行動の担い手」ということです。

企業というのは,製品やサービスをつくったり売ったりするのが仕事ですが,その仕事をするためにパソコンを買ったり,本社のビルを買ったり,工場を建てたり機械を買ったり,いろんな「買い物」をしています。

政府も同じことです。役所にある机もパソコンも,買ってきたものです。道路をつくったり,学校や病院を建てたりといった公共事業は,政府の大きな「買い物」といえるでしょう。

「個人」は経済学では「家計」といいますが,とっつきにくい言い方なので,この本では「個人」にします。また,ここで「企業」というのは,純粋な民間企業だけでなく,政府や自治体の経営する公営の企業もふくみます。

ここまでをまとめると,こういう「公式」になります。

日本の総買い物額
GDP = 個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物


「その国の経済は,個人と企業と政府の買い物が合わさってできている」といってもいいです。

「買い物額が1人平均年間370万円というのは多すぎるのでは?」と思った方は,たしかにそのとおりで,この「370万円」には,企業や政府の分もふくまれていたのです。だから,「個人の買い物の1人あたり平均」は,370万円よりは少ないです。

主体別の内訳
では,日本の総買い物額=GDPに占める「個人」「企業」「政府」のそれぞれの割合は,どうなのでしょうか?

【問題】
現在の日本のGDP(国内総生産)で,最も多くの割合を占めているのは,つぎのうちのどれだと思いますか? 

予想
ア.個人による買い物
イ.企業による買い物
ウ.政府による買い物

***

2010年度における日本のGDP=総買い物額の内訳はつぎのようになっています。

個人による買い物 60% 286兆円
企業による買い物 13%  64兆円
政府による買い物 24% 116兆円
その他(非営利団体による買い物1.4%,「純輸出」0.8%)

image002.png

個人による買い物がGDP全体の60%を占めています。
GDP(国内総生産)の最も多くの部分は,私たち個人の買い物が占めているのです。

ここでいう「個人の買い物」には,「個人消費」と「住宅の購入」があります。住宅の購入は,統計のうえでは,日常的な買い物である「消費」と区別するのです。ただ,住宅購入の額は,個人消費よりずっと少ない(20分の1ほど)ので,個人の買い物≒個人消費と言っていいです。

日本の1年間の個人消費(+住宅購入)の総額は,286兆円。
1人あたりだと,286兆円÷1億2800万人≒220万円。

これが「個人の年間の買い物額の平均」なら,多くの人の生活感覚ともそんなにズレていないのではないでしょうか。

なお,個人,企業,政府の買い物のほかに「非営利団体」による買い物もあります。「非営利団体」とは,病院,学校,宗教法人などです。

また,GDPには「純輸出」という項目もあります。年間の輸出額から輸入額を引いたものですが,これはまたあらためて説明します。

国の経済の内訳を知る
前にも述べたように,「景気がいい・悪い」というのは,「みんなの買い物額=GDPが増える傾向にあるか,減る傾向にあるか」ということです。そして,GDPの最も大きな部分は,個人の買い物(「個人消費」というのと,ほぼイコール)なのです。

だから,景気がよくなる・悪くなるということに対して,私たち個人の動きは,きわめて大きな影響をあたえるということです。

とにかく,この「公式」は重要です。

GDP = 個人の買い物+企業の買い物+政府の買い物

こういう内訳を知るのが重要なのは,国の経済がどういう要素で成り立っているかを知ることだからです。それは,景気低迷などの問題があるときに,どこに原因があるのか,どういう対策をとるべきか,といったことを考える入り口になります。

会社の経営でも,会社全体の数字だけでなく各部門別の売上などの数字をみて,どの部分に問題があるのかを把握しようとします。それと同じようなことです。

(以上)
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ジャンル:学問・文化・芸術
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