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2013年03月27日 (水) | Edit |
株価の上昇傾向が多くの人の目にもはっきりしてきて,マスコミでも最近はよくとりあげられます。でも,「どこかうさんくさい」という見方もつきまとうようです。

このあいだみたテレビのニュースでも,最近の株価の上昇や,個人投資家の動きが活発化してきた様子を報じていましたが,キャスターのコメントは「でも,こういう動きがまた,いろんな歪みをひきおこさないといいんですが……」といったトーンでした。

このキャスターにかぎらず,「金融というのは,いかがわしい」という人は少なくありません。

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たしかに金融の世界には,いろんな問題や不祥事があります。数年前のサブプライム問題や80年代の日本のバブル経済のように,金融のお金の流れが社会に混乱やマイナスをもたらすこともあります。

ただし,そういうことは実体経済(モノやサービスの生産の世界)にもあります。公害が発生したり,不良品が販売されたり,便利な機械やシステムが事故を起こしたり……。しかし,だからといってモノやサービスを生み出す産業じたいを否定する人はまずいません。「やはりそれは必要だ」と思っている。

金融も同じことではないでしょうか。

金融のお金の流れがなければ,実体経済は回りません。銀行や株式や国債がなければ,企業も政府も十分な活動資金が得られず,満足に動けません。新しい事業の発展もありません。「実体」と「金融」は,どちらも経済に欠かせない車の両輪です。

しかし,なぜ金融経済が実体経済を混乱させるようなことがおこるのでしょうか? 本来なら金融は,社会のお金の流れを活発にして,経済に役立つはずのものです。

じつは,この「お金の流れを活発にする」という金融の利点こそが,問題の根底にあります。この利点が同時に弊害にもなっている,ということです。

金融資産は,どんどん売買して動かすことができます。これが金融のお金の流れの利点です。会社の工場や機械を売るのは簡単ではありませんが(なかなか買い手がみつからない),会社の株式を売るのは比較的すぐできます。大きなビルも,「証券化」という,サブプライム問題にもかかわった手法によって短期間に現金化できます。

こういう,「お金の流れを活発にする」という性質から,金融の世界では「すぐに」「短期で」ということになりがちなのです。

この傾向が,実体経済とあわないときがあります。実体経済では,金融で求められるテンポよりも,ずっと時間のかかることが多いです。新しく立ち上げた企業が軌道に乗るまでには,ふつうは何年もかかるでしょう。新製品の開発,新規市場の開拓といったことも同様です。

ところが,金融のお金の動きは,たいていはもっとせっかちです。株式の売買だと,長くてもせいぜい数ヶ月で(ときには数日,あるいは数分,数秒で)結果を求めることが多いです。会社や事業が育つのに何年かかろうと,株式の売買は一瞬でできてしまうので,そうなってしまいがちです。

いつでも売って現金化できる条件があると,人は「すぐに結果を出したい」と思うのです。

そのような短期志向のお金が,バブルの発生・崩壊を生みます。「これがすぐに儲かりそうだ」というものがあると,たいした根拠もなくわーっとお金が集まる。ブームや熱狂がさめると,サーッとお金を引き上げていく。

こういう,不合理なお金の動きが生まれるのです。

もっと腰のすわった,長期志向の金融のお金の流れもないわけではありません。たとえば株式投資なら,短期で利ざやを得るのではなく,会社の成長をじっくり見守っていくというものです。そういう方針で運用をする,という資産運用の会社もあります。しかし,「短期志向」にくらべれば少数派で,目立ちません。
 
多くの人は,短期志向の金融のお金の動きの,とくに派手な部分をみて,「金融というのはいかがわしい」と思うのでしょう。

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では,この「短期志向」による弊害は,どうやっておさえればいいのでしょう?

「もっと長期志向になればいい」というのはもっともですが,だからといって,金融経済が実体経済と同じテンポで動いては意味がありません。すばやく活発にお金が動くという金融本来の利点を大きく損なわないようなかたちで,「弊害」を少なくしないといけません。

「金融経済の短期志向をおさえる規制が必要だ」という意見があります。たとえば,金融取引(証券の売買など)にもっと課税する,金融商品の「安全性」を,当局がもっと監督・規制する……こういうことも必要なのかもしれません。しかし,規制によって金融のお金の流れを沈滞化させないよう,注意が必要です。

このあたりのことは,議論が多いですが,とにかく,つぎのことは押さえてください。

・金融のいかがわしさの根底にはその「短期志向」の傾向がある。しかしそれは,お金の流れを活発にするという金融本来の性質に根ざしたもの。
・だがしかし,「お金の流れを活発にする」という金融の働きがなければ,現代の経済は成り立たない。

だから,金融についてやみくもに「あんなものは……」と否定してかかるのは,やめておきましょう。もちろん,冷静にみるのはいいのです。でも,「金融を否定するスタンス」が「文化人やインテリのたしなみ」みたいになってはいけないと思います。まずは,基本のところを勉強してみましょう……

(以上)

※今回は話をテンポよくすすめるために,基本用語の説明などは省略しました。そこで,まったくの初心者の人にはわかりにくいところがあったと思います。「そもそも証券とは何か」みたいな「基礎の基礎」については,また別の機会に。

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