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2013年04月18日 (木) | Edit |
前回は,古代ギリシアの哲学者アリストテレスの「四百文字の偉人伝」でした。それがきっかけで,きのう今日とアリストテレスを読みかえしました。

といっても,岩波文庫を何冊かぱらぱら,といった程度。あとは,出隆『アリストテレス哲学入門』(岩波書店,1972)という,解説+アリストテレスの著作からのさまざまな抜粋(ミニ選集)の本。これは電車のなかでかなりじっくり読みました。ちゃんと読みとおしたのは二十代のとき以来。あのころも電車のなかでした。

それで,「やっぱりアリストテレスってすごい」と思いました。何がって,とにかく学問への執念がすごい。

全世界について,徹底的に「認識の網」をかけるような感じ。それも,さまざまな事実にくわしく分け入ったうえでのことです。「いろいろあって,ややこしい」と思えるような対象も,彼の手にかかればみごとに整理されます。

たとえば,こんなかんじです。

「何かを述べるときの述語には,どんなかたち・種類があるのか」を,アリストテレスが論じている一節。「〇〇は,△△である」というときの,「△△」には,つぎのようなパターンがあると。学問全般に通じる,概念とか説明のあり方についての議論です。

それを『アリストテレス哲学入門』から引用します。ただし,出隆による訳文を,読みやすいように若干変えています。読んでいてかったるい」と思ったら,軽く流してください。とにかく彼の「執念」だけ,少し感じてください。

 述語の諸形態(カテゴリー)にはつぎのものがある。
1.実体をさす,2.ものがどれほどあるか(量),3.ものがどのようにあるか(性質),4.それが他のものに対してどうあるか(関係),5.どこにあるか(場所),6.いつであるか(時),7.どう置かれているか(位置),8.何をつけているか(様態・状態),9.何をするか(能動),10.何をされるか(受動)

「実体」とは,おおまかにいうと,たとえば人間とか馬である。
「量」というのは,たとえば二尺とか三尺である。
「性質」というのは,たとえば白いとか文法的といったことである。
「関係」というのは,たとえば2倍とか半分とか,より大きいといったことである。
「場所」というのは,たとえば「学校に」とか「市場で」とかである。
「時」というのは,たとえば昨日とか昨年である。
「位置」というのは,たとえば横たわっているとか,座っているということである。
「様態」というのは,たとえば靴をはいているとか,鎧をつけているとかである。
「能動」というのは,たとえば切るとか焼くとかである。
「受動」というのは,たとえば切られるとか焼かれるとかである。


こういう議論は,対象としているものごとにたいし,整理の枠組みをつくっているわけです。
 
「ロジカル」なビジネス書で,「フレームワーク」などという世界。

その整理の枠組みについて,これもビジネス書に出てくる概念で「もれなくダブりなく(MECE,ミーシー)」というのがありますが,アリストテレスの議論はまさにそれです。
 
彼は,もれなくダブりなく,うまくものごとを整理していると思いませんか?

だって,彼が述べているカテゴリーのほかに,「述語」のパターンを思いつきますか?あるいは彼が述べているカテゴリーで,「ダブっている」と思えるものはありますか?

まあ,くわしく検討したら,アラをみつけられるかもしれません。でも,これは2300年前の人間の議論ですので。今の私たちからみて多少のアラがあってもおかしくないでしょう。

この「述語のカテゴリー」というのは,「アリストテレスの世界」のなかでは,かなり枝葉の部分です。

もう少し大きなテーマの一例として,たとえば「事物の運動とは何か,運動の諸形態にはどんなものがあるか」といったことがあります。ここで「運動」というのは,身体をうごかすスポーツではなく,「ものごとがAからBに転化すること」一般をさします。

そして,「運動」にはつぎのカテゴリーがある,とアリストテレスは述べます。さきほどの「述語のカテゴリー」とも関連する話です。

 1.性質にかんする運動は,これを「変化」と呼ぼう。…2.量にかんする運動は,…「増大」と「減少」がある。3.場所にかんする運動は,「移動」である。

とにかく,万事この調子。フレームワークや概念規定の「鬼」なのです。

そして,世界全体をカバーするような,大きな大きなフレームワークとして,「哲学史入門」の本にかならず出てくる「質料」と「形相」,「可能態」と「現実態」のような,アリストテレス独特の概念があります。

その内容は,ここではどうでもいいです。

とにかく,この世界にたいしていろんなレベルで,彼は独自のフレームワークをつくっていったのです。もれなくダブりなく,ち密に・正確に,それを行おうとしました。そして,何千ページもの論文を書いていった……

前回のくりかえしですが,2300年前に,そんな学者がいたのです。

(以上)
 
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